【合意分割の手続について】情報通知書、按分割合の定め方、調停・審判手続について解説!

前回の記事では、離婚時年金分割制度の概要についてお話しました。年金分割の方法には、合意分割というものと3号分割というものがありました。

【離婚時の年金分割とは】合意分割・3号分割など難しい制度についてできるだけ丁寧に解説!

今回の記事では、合意分割の手続や合意ができなかった場合の家庭裁判所での手続について説明します。

年金分割のほか、離婚時に話し合うべきことについては次の記事を参考にして下さい。

協議離婚の進め方~何を話し合えばいいのか

1 合意分割とは

合意分割とは、大雑把にいうと、離婚した夫婦の合意によって、婚姻期間中に支払った保険料の総額を夫婦で分割するものです。

正確に言うと、夫婦の婚姻期間中の標準報酬額(厚生年金算定の基礎となるもの)の総額(対象期間標準報酬総額)を夫婦で分割する割合を定めます。

離婚した夫婦は、日本年金機構の年金事務所に対し、合意した按分割合に基づいて対象期間標準報酬総額を分割するように請求できます。このことを標準報酬改定といいます。

標準報酬改定がされたら、離婚した夫婦のそれぞれは、分割された対象期間標準報酬総額に基づいて、老後に厚生年金を受給することができます。

分割されるのは、厚生年金そのものではなく、その算定の基礎となる標準報酬額ですから、離婚した夫婦のうち、分割を受けた方は、分割した方が年金受給開始年齢に達したとか、亡くなったとかの事情に関係なく、自分が年金受給開始年齢に達したら、厚生年金を受給することができます。

離婚した夫婦のどちらかが受給する厚生年金そのものを他方に分割するのではありません。
分割するのは、厚生年金支給額を算定する基礎となる標準報酬額です。
標準報酬額
厚生年金保険料や年金支給額の算定の基礎となるもの。標準報酬月額と標準賞与額からなる。標準報酬月額は、各従業員につき、原則的に年1回、4月から6月の給与額の平均に基づいて、仮の給与として設定する。標準賞与額は、実際の税引き前の賞与額から千円未満の端数を切り捨てたもの。

対象期間標準報酬総額
夫婦それぞれの婚姻期間中の標準報酬額を総計したもの。

標準報酬改定
日本年金機構理事長に対する請求により、離婚した夫婦で合意した按分割合に基いて標準報酬額を分割すること。

2 3号分割との違いは

夫婦の一方が他方の被扶養者となっていた期間がある場合(第3号被保険者といいます。)、被扶養者であった夫婦の一方は、日本年金機構の年金事務所に請求することにより、被扶養者となっていた期間について、当然に0.5(2分の1)の割合で年金分割を受けることができます。これを3号分割といいます。ただし、平成20年4月1日以降、第3号被保険者であった期間に限られます。

合意分割は、3号分割とは違って夫婦の合意が必要ですが、対象期間は婚姻期間全体となりますし、按分割合も0.5に限定されるものではありません。

3 合意分割の手続の流れ

3-1 情報通知書を取得する

夫婦が年金分割について話し合うにあたっては、年金分割の対象となる婚姻期間中の標準報酬額の総額が分からなければ、按分割合をどうするのか判断することができません。

そこで、夫婦の一方は、年金事務所に対し、婚姻期間中の標準報酬額(対象期間標準報酬総額)の情報提供(情報通知書)を請求することができます。

情報提供請求にあたっては、情報提供請求書に次の書類の添付することが求められます。情報提供請求書の書式は日本年金機構のホームページからダウンロードすることができます。必要書類については、最寄りの年金事務所に問い合わせてください。

年金分割のための情報提供請求書

最寄りの年金事務所

情報提供請求書に添付する必要がある書類
  1. 請求者の年金手帳または基礎年金番号通知書
  2. 婚姻期間等を明らかにできる書類(戸籍謄本、それぞれの戸籍抄本、戸籍の全部事項証明書またはそれぞれの戸籍の個人事項証明書のいずれかの書類)
  3. 事実婚関係にある期間の情報通知書を請求する場合は、その事実を明らかにできる書類(住民票等)

3-2 対象となる年金

年金分割の対象となるのは、厚生年金、国家公務員共済年金、地方公務員共済年金、私立学校教職員共済年金です。ただし、国家公務員共済年金、地方公務員共済年金、私立学校教職員共済年金は、平成27年10月1日、厚生年金に統合されましたので、現在は厚生年金に一本化されています。

下の図のうち、赤線で囲まれた部分が年金分割の対象となります。

厚生労働省ホームページ資料を加工

3-3 対象期間

年金分割の対象となるのは、夫婦の婚姻期間中に納付された保険料の算定の基礎となる標準報酬額の総額(対象期間標準報酬総額)です。

日本年金機構ホームページ資料

3-4 按分割合の定め方

年金事務所から提供を受けた情報通知書に基づいて、夫婦で年金分割の按分割合を定めます。

  1. 夫婦の対象期間標準報酬総額を合計します。
  2. 対象期間標準報酬総額の合計額に対する按分割合を定めます。

按分割合は夫婦の合意によって任意に定めることができますが、一定の範囲内に制限されます。例えば、下のケースでは、分割後、妻の按分割合が元々の30%を下回ったり、夫の按分割合が50%を下回ることはできません。以下のケースでは、分割を受ける妻の按分割合は、30%を超え50%以下の範囲内で定める必要があります。

年金分割は、夫婦であった者の離婚後の生活保障を目的とするものですから、どちらか一方に過度の負担を与える年金分割は制度の趣旨に反すると考えられるからです。

夫婦間で合意ができたら、合意書を作成します。夫婦間で年金分割請求をすること及び按分割合について合意したことを記載します。夫婦それぞれが自ら署名しなければなりません。その他、公正証書や公証人の認証を受けた私署証書を作成することもできます。

通常は、次のような文言が記載されます。

記載例

甲(第1号改定者)と乙(第2号改定者)は、本日、日本年金機構理事長に対し対象期間に係る被保険者期間の標準報酬の改定又は決定の請求をすること及び請求すべき按分割合を0.5とする旨合意した。

第1号改定者
離婚した夫婦のうち、年金を分割する方

第2号改定者
離婚した夫婦のうち、年金の分割を受ける方

按分割合
離婚した夫婦の対象期間標準報酬総額の合計のうち、第2号改定者(年金の分割を受ける方)の取得する割合

3-5 年金事務所への請求

合意書を作成したら、日本年金機構の年金事務所に対し、年金分割を請求することができます。これを標準報酬改定請求といいます。

標準報酬が改定されると標準報酬改定通知書が送付されます。

請求にあたっては、標準報酬改定請求書とあわせて、次の書類を提出する必要があります。詳しくは、最寄りの年金事務所に問い合わせて下さい。

標準報酬改定請求に添付する必要がある書類
  1. 請求書にマイナンバーを記入したとき:マイナンバーカード等
    請求書に基礎年金番号を記入したとき:年金手帳または基礎年金番号通知書
  2. 婚姻期間等を明らかにできる書類(戸籍謄本、それぞれの戸籍抄本、戸籍の全部事項証明書またはそれぞれの戸籍の個人事項証明書のいずれかの書類)
  3. 請求日前1ヶ月以内に作成された、夫婦二人の生存を証明できる書類(戸籍謄本、それぞれの戸籍抄本、戸籍の全部事項証明書、それぞれの戸籍の個人事項証明書または住民票のいずれかの書類)(請求書にマイナンバーを記入することで省略できる。)
  4. 事実婚関係にある期間の合意分割を請求する場合は、その事実を明らかにできる書類(住民票等)
  5. 年金分割することおよび按分割合について合意している旨を記入し、自らが署名した書類、公正証書の謄本もしくは抄録謄本、公証人の認証を受けた私署証書
  6. 請求者(代理人を含む)の本人確認ができる書類(運転免許証、パスポート、顔写真付きの住民基本台帳カード、印鑑およびその印鑑にかかる印鑑登録証明書のいずれかの書類)

4 年金分割の期限は2年

日本年金機構の年金事務所への年金分割の請求は、離婚をした日の翌日から起算して2年以内に行わなければなりません。期限を過ぎると、年金分割を請求する権利を喪失することになりますから注意が必要です。

5 夫婦で合意ができなかったら家庭裁判所へ

以上のとおり、合意分割は、夫婦の話し合いによることが原則ですが、夫婦で話し合っても合意に至らない場合、家庭裁判所に調停又は審判の申立てをすることができます。

調停では、調停委員のあっせんのもと夫婦で話し合い、年金分割の按分割合について合意に至れば調停成立となります。審判では、裁判所が年金分割の按分割合を決定します。

審判では、対象期間における保険料納付に対する当事者の寄与の程度その他一切の事情を考慮して割合を定めることとされていますが、実務上、特段の事情がない限り、夫婦の寄与度は等しいとして、按分割合は0.5(1/2)とされています。

調停又は審判によって年金分割の按分割合が決定した場合、日本年金機構の年金事務所に対して、夫婦間の合意書の代わりに、調停調書又は審判書を提出して、年金分割を請求します。