遺言がある場合の相続・遺留分との関係

今回は被相続人の遺言がある場合の相続についてお話します。

遺言とは

これまでの記事で、遺産をだれにどれくらい承継させるかは、遺言が第1順位、民法の規定が第2順位だと何度か説明してきました。

遺産はもともとは被相続人のものです。被相続人が自由に遺産をどう処分するかを決められるべきであるというのが民法の基本的な考え方です。

ですから、被相続人の最後の意思表示である遺言を最大限尊重しようというのは、ごく自然な考え方と言えるでしょう。

ここで遺言について基本的なことを説明しておきましょう。

遺言とは、一般的な意味では死者の最後の意思といえます。臨終の際の言い残しの場合もあれば、ひそかに書面に残している場合もあるでしょう。

法律上の遺言といえば、法律の定めにしたがった死者の最後の意思表示と言えると思います。

遺言では、民法に定める相続人以外の人に遺産を承継させることも当然にできます。このように民法に定めた相続人以外の人に遺産を与えること遺贈といいます。そして、遺贈を受ける人・団体受贈者といいます。法定相続人は人だけですが、受贈者は人に限られず、会社などの団体も可能です。

遺言
法律の定めにしたがった死者の最後の意思表示
遺贈
相続人以外の人に遺産を与えること
受贈者
遺贈を受ける人・団体

特定遺贈と包括遺贈

遺言には、大きく分けて2通りの記載の方法があります。特定遺贈と包括遺贈といういものです。

まず、Aに〇〇の土地を与える、Bに××株式会社の株式を与えるというように、個別具体的な財産の分配を指定する方法です。これを特定遺贈といいます。

次に、Cに遺産の△分の1を与えるというように、相続分に相当する割合を指定する方法です。これを包括遺贈といいます。

ひとつの遺言で、特定遺贈と包括遺贈を組み合わせて記載することも可能です。例えば、Aに〇〇の土地を与える、Bに××株式会社の株式を与える、その他の遺産については、Aに△分の1、Bに□分の1を与えるという記載の方法です。

特定遺贈
個別具体的な財産の分配を指定する方法
包括遺贈
相続分に相当する割合を指定する方法

指定相続分と遺産分割方法の指定

また、遺言では、相続人に対して、法定相続分と異なる相続分を指定することもできます。民法に定められた相続分を法定相続分というのに対し、遺言で指定された相続分として指定相続分といいいます。

例えば、配偶者と子が相続人となる場合、法定相続分は配偶者が1/2、子が1/2です。

これに対し、遺言では、例えば配偶者を3/4、子を1/4など異なる相続分を指定することができます。

さらに、相続分という割合の形ではなく、〇〇に△△の土地を与える、□□に××株式会社の株式を与えるというように、相続人に対して、個別具体的な財産の分配を指定することももちろん可能です。これを遺産分割方法の指定といいます。

指定相続分
法定相続分と異なる相続分を指定すること
遺産分割方法の指定
相続人に対して、個別具体的な財産の分配を指定すること

遺留分

ところで、遺言で、相続人以外の人に全ての遺産が遺贈されてしまったらどうなるでしょうか。

確かに遺産は被相続人のものです。ですから、被相続人が遺産をだれに承継させるのかは被相続人の意思によって決められるのが原則ではあります。

しかし、被相続人の遺産は、必ずしもすべて自分一人の力で築き上げたものではないはずです。遺産のなかには、先祖代々受け継がれてきた土地建物などがあるかもしれません。また、先代から引き継いだ会社があるかもしれません。預貯金についても先代から相続で承継したものがあるかもしれません。

そういった先の世代から引き継いだ遺産を、その時点では自分のものであるからとって、後の世代の利益を考えずに相続人以外の人に与えることが無制限に許されてよいのでしょうか。

また、被相続人の配偶者や子などは、被相続人の扶養を受けて生活してきたという事情もあるでしょう。これまで被相続人の扶養を受けていた人は、被相続人の死後も生活していかなければなりません。

それなのに、そういった、被相続人と配偶者や子との間の経緯に配慮しないまま、遺産を第三者に与えてしまい、生活に困る事態となってもよいのでしょうか。

さらに言えば、例えば、3人の相続人がいて、法定相続分では均等に相続できるはずなのに、遺言によって、そのうちの一人に全ての遺産を相続させることは不公平ではないのでしょうか。

民法では、このように相続人の生活を保障することや、相続人間の公平を保つことを重視しています。とはいえ、被相続人が遺産をだれに承継させるのかは被相続人の意思によって決められるのが原則ではあります。

そこで、民法では、両者の調整を図り、被相続人の遺言の内容にかかわらず相続人に一定の割合の相続を保障する制度を設けています。

これが遺留分の制度です。

基本的には、遺産全体の1/2は、遺留分として法定相続人に保障されます。複数の相続人がいる場合は、その範囲内で法定相続分にしたがい、遺留分が分配されます。例えば、相続人が配偶者と子の場合、遺留分が1/2で、相続分が、配偶者1/2、子1/2ですから、配偶者と子の遺留分1/2に対する各自の相続分1/2を掛けて各1/4となります。

ただし、例外があります。これはとても重要です。

まず、相続人が直系尊属のみの場合は、遺留分は遺産の1/3となります。したがって、父母が一人ずついる場合は、遺留分は、1/3×1/2で1/6となります。また、兄弟姉妹については遺留分はありません。

ほら、最近の話題では、紀州のドンファンのお話がありましたね。あの場合は、相続人は、配偶者と兄弟姉妹です。報道によりますと、ドンファンは、すべての遺産を市に寄付することとしていたみたいです。仮にこれが真実だとしますと、兄弟姉妹に遺留分がないですから、配偶者は遺産の1/2を取得することになります。

それで、遺言による相続分が上記の遺留分よりも少なかったら、その差額を遺言による受贈者に請求することができます。これを遺留分減殺請求といいます。

なお、遺留分減殺請求は、自分がこの請求ができることを知ってから1年以内にすることが求められます。

遺留分
相続人に最低限保障されている遺産の相続割合です。
遺留分減殺請求
遺言による相続分が上記の遺留分よりも少ない場合にその差額を遺言による受贈者に請求すること