遺言執行者の指定・選任方法について|遺言者の意思を確実に実現するために

先日叔父が亡くなりました。叔父は遺言で私に不動産を遺贈してくれましたが、叔父の子供が反対していて、所有権移転登記に協力してくれません。そのため、遺言執行者を選任したいと思うのですが、甥である私も選任の申立てができるでしょうか。

遺言で相続人以外の第三者に不動産を遺贈した場合、登記義務者(相続人)と登記権利者(受遺者)が共同により不動産登記申請することになります。
そのため、登記義務者である相続人が登記に協力してくれないと、いつまでも登記ができず、最悪の場合、訴訟を提起せざるを得ないことになります。

これに対し、遺言執行者を遺言で指定しておくか、家庭裁判所への請求により選任しておくと、相続人ではなく遺言執行者が登記義務者になりますから、速やかに登記手続が行われます。
遺言執行者の職務は遺言の内容の実現であるため、遺言執行者が協力しないことは通常は考えられないのです。

冒頭の設例では、遺言では遺言執行者の指定がなく、遺言者の死後に家庭裁判所に遺言執行者の選任の請求をするケースになります。

それでは、甥の立場でも遺言執行者選任の請求ができるのでしょうか。
今回は、遺言執行者の指定・選任について説明します。

遺言執行者全般については、こちらの記事を参考にしてください。

1 遺言執行者になれる資格

遺言執行者は誰でもなれます。自然人(人間)だけでなく、法人もなれます。
相続人の誰かがなっても構いません。
ただし、未成年者と破産者は遺言執行者にはなれません(民法1009条)。

一方、成年被後見人、被保佐人、被補助人であっても、それだけの理由では遺言執行者となることを否定されません。
しかし、遺言執行の職責を果たすことが困難と認められる場合には解任事由にはなり得ます(民法1019条1項)。

2 遺言執行者は複数でもよい

遺言執行者は複数でも構いません。

遺言執行者が複数いる場合、任務の執行は過半数で決定します(1017条1項)。
ただし、保存行為(財産の価値を保存し、現状を維持する行為)は一人でもできます。

3 遺言執行者の指定

3-1 遺言による遺言執行者の指定

遺言者は、遺言で遺言執行者を指定することができます(民法1006条前段)。

遺言執行者の指定のみを定めた遺言を作成することもできますし、遺贈など他の項目とともに遺言を定めることもできます。

なお、遺言執行者に指定された者には諾否の自由があります(民法1007条1項)。

相続人その他の利害関係人は、遺言執行者に対し、相当の期間を定めて就職を承諾するかどうか回答するように求めることができます。
遺言執行者が、その期間内に回答をしない場合、就職を承諾したものとみなされます(民法1008条)。

3-2 遺言による遺言執行者の指定委託

遺言で遺言執行者を指定するのではなく、遺言で遺言執行者の指定を第三者に委託することもできます(民法1006条後段)。

遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遺言者の遅滞なく遺言執行者を指定をして、相続人に通知しなければなりません(民法1006条2項)。

4 遺言執行者の選任

4-1 家庭裁判所への申立て

遺言により遺言執行者が指定されていない場合、利害関係人は、遺言者の死後、家庭裁判所に遺言執行者の選任の申立てができます(民法1010条)。

遺言で遺言執行者を指定していても、指定された人が就任を拒否したり、既に亡くなっている場合があります。この場合も、遺言執行者を選任するには家庭裁判所に申立てをすることになります。

なお、家庭裁判所により選任された遺言執行者にも、就職について許諾の自由があります(1007条)。

4-2 申立手続

①申立てできる人

法律上の利害関係を有する者です。
相続人、遺言者の債権者、遺贈を受けた者(受遺者)などが含まれます。

②申立てをする家庭裁判所

遺言者の最後の住所地を管轄している家庭裁判所です。
家庭裁判所の管轄はこちらからご確認ください。

③手数料

遺言1通につき収入印紙800円が必要です。
また、連絡用の郵便切手が必要です。詳しくは管轄の家庭裁判所に問い合わせてください。

④添付書類

申立書の他に次のものが必要になります。詳しくは管轄の家庭裁判所に問い合わせてください。

  • 遺言書の写し又は遺言書の検認調書謄本の写し
    申立先の家庭裁判所に遺言書の検認事件の事件記録が保存されている場合(検認から5年間保存)は添付不要とされます。遺言書の検認と遺言執行者の選任は同じ家庭裁判所ですから、通常は添付不要となるでしょう。
  • 遺言者の死亡の記載のある戸籍謄本
  • 遺言執行者候補者の住民票又は戸籍附票
  • 利害関係を証明する資料
  • 遺言書または遺言検認調書謄本の写し

5 遺言執行者の就任後

5-1 任務開始義務

遺言執行者は、就任を承諾したときは、直ちに任務を開始しなければなりません(1007条1項)。

5-2 相続人に対する通知義務

遺言執行者は、遅滞なく、就任・遺言の内容を相続人に通知しなければなりません(民法1012条3項・644条、1007条2項)。

5-3 相続人による遺言の執行の妨害行為の禁止

遺言執行者が就任した後、相続人が、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をしても無効となります(民法1013条1、2項)。

ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができません(民法1013条2項)。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。


上の計算式の答えを入力してください

seventeen − 15 =

ABOUT US
弁護士 佐々木康友
さいたま未来法律事務所 代表弁護士|埼玉弁護士会所属|〒330-0063 埼玉県さいたま市浦和区高砂3-10-4 埼玉建設会館2階|TEL 048-829-9512|FAX 048-829-9513