遺贈とは|特定遺贈・包括遺贈・相続・死因贈与の違いを中心に

遺贈には特定遺贈と包括遺贈があるそうですが、違いを教えて下さい。

遺贈とは、遺言者が遺言によって、他人に自分の財産を与える行為をいいます。

遺贈には、特定遺贈包括遺贈の二種類があります。

同じ遺贈でも法的効果がかなり違います。
その違いを理解して、特定遺贈と包括遺贈のどちらであるか明確に分かるように遺言を作成しておきましょう。

そうしないと、被相続人が亡くなった後、相続人間で揉める原因になりますし、被相続人の本来の意思通りに相続が行われないことにもなりかねません。

今回は、特定遺贈と包括遺贈はどのような遺贈なのか、その違いに着目しながら説明します。

この記事からわかること

✓遺贈とはなにか
✓特定遺贈とはなにか
✓包括遺贈とはなにか
✓特定遺贈と包括遺贈の違い

遺言全般については、こちらの記事を参考にしてください。

1 遺贈とは

1-1 遺贈とは

そもそも遺贈とは何でしょうか。

遺贈とは、遺言者が遺言によって、他人に自分の財産を与える行為をいいます。
遺言者が死亡した時、遺言が有効となり、遺言に書かれたとおりに財産が移転します。
例えば、遺言者Aの遺言に

Xに甲土地を譲る。

と書いてあれば、Aの死亡時に甲土地はXの所有になります。
また、遺言に

Xに全財産の1/3を譲る。

と書いてあれば、Aの死亡時にXはAの遺産の1/3を取得します。

遺言者の死後、一定の条件が成就した場合や一定期間が経過した後、財産が承継されるといった内容の遺贈とすることもできます(条件付遺贈・期限付遺贈)。

条件付遺贈・負担付遺贈については次の記事を参考にしてください。

被相続人の死亡によって財産が移転するものとして、相続や死因贈与があります。
これらとの違いを意識すると遺贈の意味がより理解できるでしょう。

相続との違い

相続は、民法に定められた相続人であるとを理由として、被相続人の権利義務を承継するものです(民法896条)。つまり、相続とは、法律に定められた身分関係に基づく権利義務の承継です。

これに対し、遺贈は、遺言に定めることによって初めて効力を生じます。つまり、遺贈とは、遺贈者の意思表示による権利義務の承継です。

法律の規定により承継するのか遺言者の意思表示により承継するのかが大きな違いです。

また、遺贈では、相続人以外の第三者(法人も可能)も財産を承継できるところも相続との違いです。

死因贈与との違い

死因贈与とは、被相続人の生前に贈与契約を締結しておいて、被相続人の死亡時に効力が発生する贈与です。

死亡によって効力が生じる点では、死因贈与も遺贈も同じです。

しかし、死因贈与は財産を贈る人(贈与者)と財産を受け取る人(受贈者)の契約であるのに対し、遺贈は遺言者の一方的な意思表示(単独行為)である点が大きく違います。つまり、遺贈は、遺贈を受ける人(受遺者)の承諾の必要はないのです。

ただし、受遺者の中には遺言者の財産を受け継くことを望まない人もいるでしょう。この場合は、受遺者が遺贈を放棄できる制度があります。

死因贈与と遺贈の違いはこちらにも詳しく説明しています。

1-2 遺留分の侵害に注意

特定の相続人や第三者に財産を遺贈すると、その分他の相続人の取り分が少なくなります。各相続人には、最低限の取り分が保障されています。これを遺留分といいます。

遺贈により、相続できる財産が遺留分に満たないこととなった場合は、その相続人は、受遺者に対して、遺留分侵害額請求ができます(民法1046条1項)。

そうなると、相続人・受遺者間で紛争となってしまいます。そこで、遺贈する場合は、各相続人の遺留分を侵害しないようにする配慮が必要です。

遺留分侵害額請求についてはこちらの記事で詳しく解説していますから参考にしてください。

1-3 後継ぎ遺贈はできないのが支配的見解

自分が死んだ後の財産の行き先を次の世代だけでなく、その先の世代まで決めておきたいという要望は多くあります。
先祖代々の土地や建物がある場合や、一族で会社を経営している場合などです。

例えば、自分の死亡時には全ての土地を長男に遺贈しますが、長男の死亡後は、長男に対する遺贈の効力が失われると同時に長男の子に対する遺贈が効力を発生するという遺贈ができれば、財産の承継先を自分で決めたいという遺言者の目的は達成されます。

こういった遺贈を後継ぎ遺贈といいます。
しかし、現行制度上は後継ぎ遺贈は許されないというのが支配的な見解ですので注意が必要です。

後継ぎ遺贈と同様の効果があるものとして、受益者連続信託というものがあります。

後継ぎ遺贈と受益者連続信託について詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。

2 特定遺贈

それでは、特定遺贈と包括遺贈について、それぞれ説明していきましょう。
まず特定遺贈です。

2-1 特定遺贈とは目的物を特定した遺贈

特定遺贈とは、その名のとおり遺贈の目的物を特定した遺贈です。

特定の物や権利を遺贈するというのが分かりやすいと思います。
例えば次のようなものです。

Xに甲不動産を譲る。
Xに現金1,000万円を譲る。
Xに乙銀行預普通預金債権を譲る。
Xに株式会社丙の株式1,000株を譲る。

その他、何かを譲るのではなく、新たに権利を設定することも遺贈に含まれます。
例えば次のようなものです。

甲土地上に、Xのために地上権を設定する。
乙建物に、Xのために抵当権を設定する。

さらには、受遺者の負担していた債務を免除するというのも財産的な利益を与えるものなので遺贈と考えられます。
例えば次のようなものです。

XのAに対する1,000万円の債務を免除する。

いずれにせよ、遺贈の目的となるものが特定されていることが必要です。

2-2 特定遺贈の目的物はプラスの財産だけ

特定遺贈の目的物はプラスの財産だけです。
特定の債務を負担させるということはできません。

特定の債務を負担させた上でプラスの財産を遺贈するということはあり得ます(負担付遺贈)。

負担付遺贈について次の記事を参考にしてください。

2-3 遺贈の放棄

遺言で財産を譲り受ける人(受遺者)とされた人のなかには、遺贈を望まない人もいるでしょう。
そういった人の利益を守るため、特定遺贈の受遺者は、いつでも権利を放棄できます(民法986条1項)。

放棄は受遺者の単独の意思表示でできます。遺贈義務者(相続人)の承諾は不要です。
意思表示の方式も特に決まっていません。遺贈義務者(相続人)にその意思が伝われば大丈夫です。ただし、後でトラブルとならないように内容証明郵便で行うのが通常でしょう。

複数の財産を遺贈されている場合は、可分であれば、その一部の財産だけを特定して遺贈を放棄するということも可能です。
特定遺贈が放棄されると、その目的物は遺贈義務者(相続人)のものになるのが原則です。

ところで、受遺者がいつまでも放棄するかしないかを決めないと、遺贈義務者(相続人)や他の利害関係人は困ってしまいますよね。
そこで、これらの人は、受遺者に対して、相当の期間を定めて放棄するかどうかを催告することができます。催告期間に回答がないと遺贈を承認したものとみなされます(民法987条)。

遺贈の内容が債務免除である場合は、放棄はできないと考えられています。債務免除は、債権者の一方的な意思表示により行うことができるので、債務者である受遺者の承諾は必要ないからです。

3 包括遺贈

3-1 包括遺贈とは一定割合で示した遺贈

包括遺贈とは、遺言者が財産の全部または一定割合を遺贈するものです。
例えば次のようなものです。

私の財産を全部Xに譲る。
私の財産の2/3をXに譲る。
私の財産50%をXに譲る

つまり、遺贈の目的物を特定せずに、割合で示す遺贈ということですね。

遺言者の全財産を遺贈する場合は全部包括遺贈、一定割合の場合は割合的包括遺贈といいます。

遺言者の財産の全部に対する一定割合を譲るのが包括遺贈であるのが原則ですが、遺言者の財産から特定の財産を除いたものの一定割合を譲るものも包括遺贈と考えられると判断した裁判例があります(東京池判平成10年6月26日)。

3-2 包括遺贈はマイナスの財産も受け継ぐ

遺言者の財産の全部または一定割合を受け継ぐのが包括遺贈ですから、遺言者にマイナスの財産がある場合は、その一定割合も受け継ぐことになります。

3-3 相続人と同一の権利義務

包括受遺者(包括遺贈を受けた人)は、被相続人の財産の全部または一定割合を受け継ぐものなので、相続人による相続と似ています。

そこで、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有することとされています(民法990条)。

民法990条(包括受遺者の権利義務)
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。

ただし、これは、包括受遺者が相続人と全く同じという意味ではありません。
とはいえ、どこが同じでどこが違うのかは民法には明確な規定がありません。遺贈と相続の違いから個別的に解釈していくしかありません。

以下に、相続人と同じ扱いになるものとならないものを例示します。

3-4 相続人と同じ扱いになるもの

遺贈の単純承認・限定承認・放棄

包括遺贈の放棄は相続人と同じ扱いとされます。
つまり、遺贈の単純承認(民法920条)・限定承認(民法922条)・放棄(民法938条)ができます。

重要なのは3ヶ月の熟慮期間です(民法915条1項)。
遺言者の死亡と自分が包括受遺者であることを知った時から3ヶ月以内に限定承認か放棄をしないと、遺贈を単純承認したものとみなされてしまいます(民法921条2号)。

遺贈の限定承認・放棄は家庭裁判所への申述が必要です(民法924条、938条)。遺贈義務者(相続人)に内容証明郵便などで意思表示しても効力を発生しませんから注意が必要です。

遺産分割協議

例えば、土地や建物が遺産に含まれている場合、包括遺贈では、受遺者は、遺言で定められた割合により、相続人とともに土地や建物を共有している状態になります(民法898条)。

そのため、最終的な遺産の帰属を定めるため、相続人とともに遺産分割協議に参加することになります(民法907条1項)。

3-5 相続人と異なる扱いになるもの

法人の包括受遺者

法人は相続人にはなれませんが、包括遺贈者にはなれます。

代襲制度

相続人が死亡している場合は代襲相続の制度がありますが(民法887条~889条)、包括遺贈では代襲の制度はありません。
遺言者の死亡前に包括受遺者が死亡したときは、包括遺贈は効力を生じませんから(994条1項)、包括受遺者の子が代襲することはできません。

遺留分権

包括受遺者に遺留分権はありません。

相続・遺贈放棄

複数の相続人がいる場合、共同相続人の一人が相続放棄すると、他の相続人の相続分はその分増加します。包括受遺者が遺贈を放棄した場合も同じです。

これに対し、包括受遺者が承継する財産の割合(受遺分)は、遺言により承継の割合は固定されていますので、他の共同相続人や包括受遺者が相続放棄や遺贈放棄をしても、受遺分が増えることはありません。

不動産所有権移転の対抗要件

相続は、民法に定められた相続人であるとを理由として、被相続人の権利義務を承継するものです。したがって、相続により不動産を取得した場合、登記をしないでも第三者に権利を主張できます。登記をする場合は、相続人が単独でできます。

これに対し、遺贈はあくまでも遺言者の意思表示に基づく権利義務の承継です。遺贈があったことは遺言者の死後、遺言を確認できる限られた範囲の人に限られます。そこで、取引の安全の観点から、遺贈により不動産を取得した場合、登記をしないと第三者に権利を主張することはできません。登記をする場合は、通常の取引と同様、受遺者と遺贈義務者の共同申請となります。

ただし、不動産登記法の改正により、相続人に対する遺贈については、登記権利者の単独申請が可能になります(不動産登記法63条3項。令和3年4月28日公布。施行日は公布から3年を超えない日を予定。)。

4 特定遺贈と包括遺贈の違いのまとめ

特定遺贈と包括遺贈の違いをまとめておきましょう。重要な違いは、放棄の期間と方法です。包括遺贈は3ヶ月の機嫌がありますから注意しましょう。

項目特定遺贈包括遺贈
内容目的物を特定して遺言者の財産を譲るもの。プラスの財産のみが対象。遺言者の財産の全部または一定割合を譲るもの。マイナスの財産も対象となる。
放棄期間いつでもできる(遺贈義務者からの催告制度あり) 遺言者の死亡と自分が包括受遺者であることを知った時から3ヶ月以内
放棄方法家庭裁判所への申述意思表示(口頭・書面でも構わない)
遺産分割協議不要必要

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弁護士 佐々木康友
さいたま未来法律事務所 代表弁護士|埼玉弁護士会所属|〒330-0063 埼玉県さいたま市浦和区高砂3-10-4 埼玉建設会館2階|TEL 048-829-9512|FAX 048-829-9513