寄与分とはなにか|計算方法、どのような場合に認められるかを説明します

父が亡くなりました。我が家は代々商売をしているのですが、近所に住んでいた私は長年にわたりお給料ももらわないで店の手伝いをしてきました。他の兄弟姉妹は遠くに住んでいるため、手伝うことは全くありませんでした。私がいなければ、店を続けることはできなかったと思います。それでもき兄弟姉妹の相続分は同じになるのでしょうか。

上のようなケースの場合、相続人の一人が店を無報酬で手伝ったことにより、被相続人は店を継続することができて、資産を蓄えることができたと考えられます。
それにもかかわらず、手伝いをしなかった他の兄弟姉妹と同じ分の遺産しか相続できないとすると、やはり不公平だと思うでしょう。

そこで、民法では、相続人のなかに、被相続人の生前、被相続人の財産の維持・増加に貢献した人がいる場合は、その貢献分については優先的に遺産を取得できる仕組みを設けています。

これを寄与分といいます。

また、2021年4月28日に「民法の一部を改正する法律」及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が公布され、遺産分割について10年の期間制限が設けられました。
これにより、例外を除き、相続開始から10年経過後に遺産分割が行われた場合、寄与分の請求ができないことになりました。

今回は寄与分について説明します。

この記事で分かること

✓寄与分とは何か
✓寄与分として認められるのはどういった場合か
✓寄与分は遺産分割でどのように考慮されるのか
✓民法改正による寄与分への影響

民法904条の2(寄与分)
1 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第九百条から第九百二条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。
2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項に規定する寄与をした者の請求により、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、寄与分を定める。
3 寄与分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。
4 第二項の請求は、第九百七条第二項の規定による請求があった場合又は第九百十条に規定する場合にすることができる。

相続人ではない親族であっても、被相続人に対し、無償で療養監護その他の労務を提供したことにより、被相続人の財産の維持・増加に貢献した場合、相続開始後、相続人に対し、その貢献に応じた金銭の支払を請求することができます。これを特別寄与者の特別寄与料の請求といいます。
特別寄与者の特別寄与料の請求について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

1 寄与分とは

寄与分とは、共同相続人のなかに、被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与(貢献)をした者がいる場合、この特別の寄与に相当する金額を法定相続分に加えて相続財産を取得することを認める制度です(民法904条の2)。

共同相続人のなかに、被相続人に対して特別の寄与をした相続人がいる場合、遺産分割にあたり、この特別の寄与を考慮しなければ、共同相続人間の公平を害することから認められているものです。

★共同相続とは、遺産分割が終了するまで複数の遺産を共有している状態のことです。
共同相続人とは、共同相続している相続人のことをいいます。

2 寄与の主体

2-1 相続人の寄与行為であること

寄与分として評価されるのは、相続人の寄与行為のみです。
相続人の配偶者や子が寄与行為をしたとしても、基本的には寄与分とは評価されません。

ただし、相続人の配偶者や子の寄与行為が、相続人の寄与行為と同視できる場合には、相続人の寄与行為と評価されます。
例えば、相続人とその配偶者・子が協力して、相続人の父である被相続人の介護のために療養看護に尽くした場合などです。

2-2 代襲相続の場合

代襲者の寄与行為

代襲者のした寄与行為は寄与分として考慮されます。
代襲原因発生の前後は問いません。
代襲者となる前でも、代襲者となった後でも寄与行為をすれば寄与分として考慮されます。

★寄与分とは違い、特別受益については、代襲原因発生前の贈与を考慮しません。

被代襲者の寄与行為

被代襲者のした寄与行為も寄与分として考慮されます。

2-3 包括受遺者の場合

包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有するとされますが(民法990条)、包括受遺者のした寄与行為は寄与分として考慮されません。

3 寄与分が認められる要件

相続人のした寄与行為であれば、何であっても寄与分として考慮されるわけではありません。
民法が寄与分を認めているのは、共同相続人のなかに、被相続人に対して特別の寄与をした者がいる場合、遺産分割にあたりこの特別の寄与を考慮しなければ、共同相続人間の公平を害することとなるからです。
したがって、寄与分が認められるためには、相続人が特別の寄与をしたと評価される場合に限られます。

実務では、寄与分の主張をしても認められない場合が多く、認められても少額に留まっています。
寄与分が認められるのは以下のすべてに該当する場合です。

  • 特別の寄与であること
  • 相続開始前までの行為であること
  • 対価を得ていないこと
  • 被相続人の財産を維持・増加したこと

以下では、寄与分が認められるための要件を説明します。

3-1 特別の寄与であること

寄与分として考慮されるためには、相続人のした寄与行為が特別の寄与と評価されなければなりません。
それでは、特別の寄与とは何なのでしょうか。

一般的には、特別の寄与とは、被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を超える特別の貢献とされます。

夫婦間には扶助義務(民法752条)、親族間には扶助義務(民法730条)・扶養義務(民法877条)があります。
これらの義務に基づいて通常期待される程度を超える貢献があった場合には、特別の寄与があったと評価されます。

ただし、夫婦間や親族間の義務の範囲は明確に定まっているわけではありません。
そのため、夫婦間や親族間の義務に基づいて通常どの程度の貢献が期待されるかも、被相続人と寄与分を主張する相続人との間の身分関係や生活状況に応じて変わってくるのが実情です。

3-2 相続開始前までの行為であること

寄与分として考慮されるのは相続開始前の寄与行為です。
相続開始後に行われた行為は、遺産の維持・増加に役立ったとしても寄与分の考慮の対象外になります。

3-3 対価・報酬を受けていないこと

寄与分として考慮されるには、寄与行為に対する対価・報酬を受けていないことが必要です。
寄与行為に対する直接的な対価・報酬とはいえなくても、

・被相続人の収入で生活している
・被相続人の不動産を無償で使用している

場合などは、実質的には寄与行為に対する対価・報酬を受けていると評価される場合があります。

また、寄与行為をした相続人が被相続人から生前贈与を受けており、この生前贈与が実質的には寄与行為に対する対価・報酬と評価される場合もあり得ます。

この場合、寄与行為の評価額と生前贈与の評価額を比較し、

(寄与行為の評価額) > (生前贈与の評価額)

であれば、寄与分として考慮されるのは、

(寄与行為の評価額)-(生前贈与の評価額)

の限度となるものと考えられます。

つまり、寄与行為の評価額のうち、生前贈与の評価額相当分については、生前贈与によって清算されたと考えるのです。

なお、この場合、生前贈与については、特別受益の持戻しの免除があったものと考えるべきです。
そうしないと、相続人のした寄与行為が全く評価されないこととなってしまうからです。

特別受益について知りたい方は次の記事を参考にして下さい。

3-4 被相続人の財産を維持・増加したこと

寄与行為により、被相続人の財産が維持・増加しなければ、寄与分として考慮されません。
夫婦間の扶助義務(民法752条)や親族間の扶助義務(民法730条)・扶養義務(民法877条)を超える貢献があったとしても、被相続人の財産が維持・増加していなければ寄与分としては考慮されません。

また、あくまでも財産の維持・増加が対象となるため、精神的な支えになっただけでは寄与分として考慮されません。

4 寄与行為の類型

寄与行為の内容には様々なものが考えられるのですが、いくつかの類型に分けると次のようなものが考えられます。

4-1 家事従事型

相続人が、被相続人の経営する事業(農業、商工業、士業等)に従事していた場合です。
寄与分について定めた民法904条の2第1項の「被相続人の事業に関する労務の提供」がこれにあたります。

寄与分として考慮されるためには次の点がポイントとなるでしょう。

無償であること

相続人が被相続人から正当な報酬を受けていた場合には対象にはなりません。
また、報酬を受けていなくても、被相続人の収入や資産によって生活を維持していた事情がある場合には、無報酬でも寄与分が認められなかったり、減額されたりすることがあります。

継続的に従事していたこと

短期間手伝っていたという程度の場合では認められにくいです。
ある程度の長期間、継続的に従事していたことが必要とされます。

専従していたこと

専従性も必要とされます。
長期間であっても、専従ではなく時々手伝っていただけの場合も認められにくいです。

4-2 金銭出資型

相続人が、被相続人の経営する事業を支援するため、金銭や財産を拠出した場合です。
寄与分について定めた民法904条の2第1項の「被相続人の事業に関する財産上の給付」がこれにあたります。

被相続人が相続人から借金をした形になっている場合、あくまでも債権債務関係が残るだけですから、寄与分の対象とはなりません。

4-3 療養看護型

相続人が、長期間にわたり療養中の被相続人を看護・介護した場合です。
相続人が長年にわたり被相続人を看護・介護をしたことによって、看護・介護に要する費用の支出を免れて、被相続人の財産の維持に貢献した場合に対象となります。

相続人の配偶者や子が、被相続人を看護・介護した場合、相続人による看護・介護と同視できる場合には、相続人の寄与行為と評価されます。

現在、介護保険サービスを利用することができる場合が多いです。
そのため、介護保険サービスを利用しなかったとしても、看護・介護に要する費用の全額が寄与分として認められるのは難しい場合が多いでしょう。

4-4 扶養型

相続人が被相続人を扶養したことによって、被相続人が生活費等の出費を免れて、被相続人の財産の維持に貢献した場合に対象となります。

4-5 財産管理型

相続人が被相続人の所有する不動産を無償で管理して、通常必要となる管理費の支出を免れることができた場合です。

5 寄与分の算定方法

5-1 算定方法

寄与分の算定方法は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮するものとされています(民法904条の2第2項)。

5-2 遺贈との関係

被相続人が遺言により遺贈した場合、寄与分は、相続開始時の財産の価額から遺贈の額を控除した残額を超えることはできません(民法904条の2第3項)。

寄与分を考慮した共同相続人間の公平の確保は相続分の修正によって対処すべきであり、遺贈には影響を及ぼすべきではないからです。

5-3 遺留分との関係

寄与分により、他の共同相続人の遺留分を侵害するべきではないとされています。

遺留分とは、相続人が被相続人の財産から取得できることを保障している最低限の取り分です。
そのため、寄与分によっても、最低限の保障である遺留分を侵害することは妥当ではないと考えられているのです。

6 寄与分算定の手続

寄与分は、①協議、②調停、③審判の手続で算定されます。

まず、寄与分は、寄与行為をした相続人の申出に基づき、遺産分割終了までに相続人間で①協議されます。

相続人間の協議によっても合意に至らない場合、寄与分を主張する相続人は、家庭裁判所に対し、②調停・③審判の申立てをすることができます。

審判を申し立てても、家庭裁判所は、職権でまずは調停を行わせる決定をすることができます(家事事件手続274条1項)。
これを、調停に付するという意味で、付調停といいます。

家庭裁判所は、寄与分についての調停・審判の申立てがないにもかかわらず、遺産分割調停・審判において、寄与分について判断することはできません。
つまり、遺産分割調停・審判の申立てがされていたとしても、遺産分割において寄与分を考慮させたいのであれば、別途、寄与分についての調停・審判の申立てが必要となります。

7 寄与分がある場合の具体的相続分の算定方法

寄与分がある場合、具体的相続分は以下の手順により算定されます。

①【相続開始時の遺産総額】+【特別受益となる贈与の額】-【寄与分の額】=【みなし相続財産】
②【みなし相続財産】×【各相続人の法定相続分※】=【一応の相続分】
※遺言による指定相続分がある場合はそれによる。
③【一応の相続分】-【特別受益となる遺贈・贈与の額】+【寄与分の額】=【具体的相続分】

具体的相続分が定まるまでのイメージ
ケース

Aが死亡した。Aの相続人は、妻B、子C、D、Eである。Aの死亡時の遺産総額は1億7000万円である。Aは、子Cに対し、3000万円の生前贈与をしていた。また、妻Bには2000万円の寄与分が認められる。さらに、遺言で子Dに2000万円遺贈されていた。

Aが死亡した。Aの相続人は、妻B、子C、D、Eである。Aの死亡時の遺産総額は1億7000万円である。Aは、子Cに対し、3000万円の生前贈与をしていた。また、妻Bには2000万円の寄与分が認められる。さらに、遺言で子Dに2000万円遺贈されていた。

【相続開始時の遺産総額】= 170,000,000円
【特別受益となる贈与の額】 = 30,000,000円
【寄与分の額】= 20,000,000円
【みなし相続財産】 = 170,000,000円 + 30,000,000円 - 20,000,000円 = 180,000,000円
【一応の相続分】
 妻B: 180,000,000円 × 1/2 = 90,000,000円
 子C、D、E:180,000,000円 × 1/2 × 1/3 = 30,000,000円
【具体的相続分】
 妻B: 90,000,000円 + 20,000,000円 = 110,000,000円
 子C: 30,000,000円 - 30,000,000円 = 0円
 子D: 30,000,000円 - 20,000,000円 = 10,000,000円
 子E: 30,000,000円

①みなし相続財産の算定

被相続人の遺産総額に、各相続人が受けた特別受益のうち贈与(生前贈与)の額を加算し、寄与分の額を控除することにより、実質的な遺産総額(みなし相続財産)が求められます。

相続開始時の遺産総額は、プラスの財産の金額のみを意味します。遺産にマイナスの財産が含まれていたとしても、プラスの財産からマイナスの財産を控除した金額とはしません。

②一応の相続分の算定

みなし相続財産に、各相続人の法定相続分(遺言で相続分が指定されている場合は指定相続分)を掛けることにより、各相続人の一応の相続分が求められます。

③具体的相続分の算定

相続人が特別受益を受けている場合、計算で求められた一応の相続分には、特別受益となる遺贈・贈与の額が含まれているため、一応の相続分から、特別受益となる遺贈・贈与の額を差し引きます。
これに寄与分を加算することにより、各相続人が実際に取得する相続分(具体的相続分)が求められます。

8 相続開始から10年経過すると寄与分を主張できない

2021年4月28日に「民法の一部を改正する法律」及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が公布され、遺産分割について10年の期間制限が設けられました。
改正法の施行日は、2023年4月1日です。

改正法では、相続開始(被相続人の死亡)時から10年経過した後に遺産分割が行われる場合、具体的相続分ではなく、法定相続分・指定相続分(被相続人が遺言で定める相続分)で行われることになりました(新民法904の3)。

これにより、例外を除き、相続開始から10年経過後に遺産分割が行われた場合、寄与分の請求ができないことになりました。

例外的に寄与分の請求ができる例外は次の二つの場合です。

  • 10年経過前に、相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をしたとき。
  • 10年の期間満了前6ヶ月以内に、遺産分割請求をすることができないやむを得ない事由が相続人にあった場合【※】において、当該事由の消滅時から6ヶ月経過前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産分割請求をしたとき。
    【※】 被相続人が遭難して死亡していたが、その事実が確認できず、遺産分割請求をすることができなかったなど。

もちろん、共同相続人全員が合意している場合には寄与分の請求はできます。

なお、改正法は、改正法の施行日(2023年4月1日)前に被相続人が死亡した場合の遺産分割についても適用されるので注意が必要です(改正法附則3)。
ただし、経過措置により、少なくとも改正法の施行日から5年の猶予期間が与えられています。
つまり、相続開始から10年が経過しても、改正法の施行日から5年以内に遺産分割を行えば、 寄与分の請求ができることになります。

民法904条の3(期間経過後の遺産の分割における相続分)
前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
 一 相続開始の時から十年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。
 二 相続開始の時から始まる十年の期間の満了前六箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から六箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき。

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弁護士 佐々木康友
さいたま未来法律事務所 代表弁護士|埼玉弁護士会所属|〒330-0063 埼玉県さいたま市浦和区高砂3-10-4 埼玉建設会館2階|TEL 048-829-9512|FAX 048-829-9513