協議離婚の進め方~何を話し合えばいいのか

今回は、協議離婚の進め方、何を話し合って、何を合意すればいいのかについて説明します。

協議離婚とは、夫婦で離婚することに合意ができたら、夫婦が署名押印した離婚届を市区町村役場に提出するという方法です。離婚届が市区町村役場に受理されると離婚が成立します。協議離婚については、次の記事でも説明していますので参考にして下さい。

離婚方法は3つある|状況に応じてとるべき方法を解説

1 協議離婚で合意すべきこと

協議離婚では、離婚するかどうかを合意するだけではありません。財産の問題、子供の問題、これからの生活の問題など多岐に渡ってどうするか合意する必要があります。もちろん、夫婦によって合意すべきことは異なってくると思いますが、概ね次の①~⑦のことが多いのでないかと思います。

①婚姻費用分担
②財産分与
③慰謝料
④年金分割
⑤親権者
⑥面会交流
⑦養育費

以下では、①~⑦についてざっくりと説明します。各項目については、別の機会に詳しく説明する予定です。

1-1 婚姻費用分担

婚姻費用とは、夫婦が共同生活を営むための費用です。

衣食住の費用、医療費、娯楽費、交際費、老後の準備、子供の養育費、教育費等・・・大雑把に言えば、生活費ということになると思います。

夫婦は各自の収入に応じて婚姻費用を分担する義務があります。婚姻費用は、相手が自分と同程度の生活を保持できる金額を分担する必要があります。これを生活保持義務と言います。

民法760条
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

これは、夫婦が別居することになっても変わりません。

例えば、夫がフルタイムで働き、妻が専業主婦やパート勤務の場合、離婚していない以上、収入の多い夫は妻に生活費を渡す必要があります。

しかし、現実には、別居をすると夫が妻にお金を支払わないケースが多いです。

離婚の協議を始めても、離婚について最終合意に至るまでには時間が掛かります。その間、生活費が確保できていなければ困ってしまいます。協議離婚どころではなくなってしまうでしょう。不利な立場に置かれ、望まない条件での離婚に合意せざるを得ないこともあります。

ですので、離婚の協議を始めるにあたって、まずは、生活費の確保のため、婚姻費用の分担について合意をしておくべきです。なお、後述する養育費は、婚姻中は、婚姻費用に含まれているものと考えます。

婚姻費用分担は、離婚前の問題ですから、相手方が生活費の支払いを拒否した場合は、本人同士の離婚の協議は続けつつ、家庭裁判所に婚姻費用分担調停・審判を申し立てることもできます。

1-2 財産分与

財産分与についてより詳しく知りたい方は次の記事を参考にして下さい。

離婚時の財産分与とは~相続財産や車は共有財産となるか

1-2-1 清算的財産分与

財産分与の主な目的は、離婚時に夫婦の共有財産を分けて清算することです。これを清算的財産分与といいます。

ではどういったものが清算的財産分与の対象である夫婦の共有財産となるのでしょうか。

この点については、家庭裁判所の考え方はハッキリしています。家庭裁判所は、共同生活をしている夫婦が婚姻中に形成した財産は、原則として夫婦が協力して形成したものであり、財産形成に対する寄与度は夫婦平等だから、実質的には夫婦の共有財産であると考えています。

例えば、夫が外で働き、妻が専業主婦であったとします。この場合、夫の給与で購入した夫名義の不動産であっても、共同生活をしている夫婦が婚姻中に形成した財産ですから、夫婦の共有財産となります。同様に、夫名義の自動車、預貯金、生命保険、株式、有価証券なども夫婦の共有財産になります。

また、長年にわたって共同生活を送っていると、財産が夫婦のどちらに属するのかが分からなくなることがあります。こういった場合には、夫婦の共有財産と推定されます(民法762条2号)。

例えば、婚姻前後で同じ預金口座を使用していたため、婚姻前の預金額の残高が分からなくなくなってしまう場合などです。

では、反対にどういったものは夫婦の共有財産にならないのでしょうか。夫婦の共有財産でないものを特有財産といいます(民法762条2項)。

まず、共同生活をしている夫婦が婚姻中に形成した財産でなければ、夫婦の共有財産になりません。

例えば、夫婦の一方が婚姻前に取得した財産は、共有財産ではありません。婚姻中でも別居後に夫婦の一方が取得した財産も、共有財産ではありません。

また、共同生活をしている夫婦が婚姻中に形成した財産でも、明らかに夫婦が協力して形成したものではない場合は、共有財産にはなりません。

例えば、婚姻中に夫婦の一方が親からの相続や贈与により取得した財産などは、明らかに夫婦が協力して形成したものではありませんから、共有財産とはなりません。

このように、清算的財産分与については、協議離婚では次の手順で進める必要があります。

①夫婦の財産を共有財産と特有財産に分ける。
②共有財産の夫婦間での分配割合・方法について合意する。

1-2-2 扶養的財産分与

離婚が成立すると、夫婦の婚姻費用分担義務はなくなります。そのため、例えば、夫がフルタイムで働き、妻が専業主婦やパート勤務の場合など、夫婦の一方が他方の収入により生活している場合、妻は離婚後は経済的に自立しなければなりません。

しかし、婚姻後、長年にわたって専業主婦やパート勤務であった場合、離婚後、すぐに経済的に自立できる程度の就職先を探すのは簡単ではありません。妻は子育てや家事のため、婚姻後、仕事を辞めて、専業主婦やパート勤務をしていたのに、離婚後、直ちに経済的に自立することを求めるのは不公平と考えられます。

そこで、夫婦の一方が、離婚後、経済的に自立できるまでの当面の間、夫婦の他方に対し、生活費を財産分与として請求できる場合があります。これを扶養的財産分与といいます。

扶養的財産分与が認められるかは、清算的財産分与や次に説明する慰謝料により、当面の生活費を確保できるかなどによります。

1-3 慰謝料

わざと又は不注意で他人の権利・利益を侵害した場合は、この行為によって生じた損害を賠償する責任があります。わざと又は不注意で他人の権利・利益を侵害する行為を不法行為といいます。

通常は財産的な損害に対する賠償ということが多いでしょう。しかし、民法では、不法行為によって精神的苦痛を受けた場合にも、賠償をする必要がります。これを慰謝料といいます。

民法709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法710条
他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

夫婦の一方が離婚原因を作って離婚する場合、その離婚原因がなければ離婚せずにすんだはずです。離婚原因を作った夫婦の一方は、離婚原因を作るという不法行為によって他方に対して精神的苦痛を与えています。

ですので、被害を受けた夫婦の一方は、離婚原因を作った他方に対して慰謝料請求することができます。

離婚原因はざまざまですが、一般には、不貞行為(浮気・不倫)、悪意の遺棄(生活費の不払い)、暴言、暴力等があります。

では、慰謝料はどれくらいの金額を支払えばいいのかということですが、一般には不法行為を受けた被害者の精神的苦痛が癒される程度の金額と説明されます。つまり、精神的苦痛が大きい分慰謝料も大きくなります。

しかし、精神的苦痛の大きさは受ける人によって異なります。ですので、慰謝料算定の客観的な基準があるわけではないのですが、一般には、離婚原因を作ったことに対する慰謝料の金額は、次のような傾向があると高くなるといわれています。

①被害の程度が大きい
②婚姻期間が長い、年齢が高い
③未成年の子供がいる
④離婚原因を作った夫婦の一方の収入、社会的地位が高い
⑤被害を受けた夫婦の一方の収入が低い
⑥財産分与が少ない

慰謝料の金額は事案によってさまざまですが、50万円から300万円の範囲のどこかで収まる場合が大半です。

慰謝料は不法行為に基づく損賠賠償ですから、財産分与とは性質を異にするものですが、実務上は、慰謝料を考慮した上で財産分与を決める場合が多いです。

離婚原因を作ったことに対する慰謝料は、不法行為に基づく損害賠償ですから、損害および加害者を知った時から3年間請求しないと、請求する権利が時効で消滅します(民法724条)。

夫婦の一方が離婚原因を作ったことにより離婚する場合、離婚が損害および加害者を知った時になりますから、離婚後、3年以内に慰謝料請求をしないと請求する権利が時効で消滅します。

1-4 年金分割

日本の公的年金は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が加入する国民年金(基礎年金)と、会社や役所に勤務している人が加入する厚生年金の2階建てになっています。

国民年金は、すべての人が加入していますので夫婦それぞれに支給されます。しかし、厚生年金は、会社や役所に勤務している人にしか支給されません。夫が会社員で、妻が専業主婦の場合、夫の会社の厚生年金は被保険者である夫にしか支給されません。

そのため、離婚すると厚生年金は夫にすべて支給されることとなり、夫婦間で年金支給額に大きな格差が生じてしまいます。

夫が会社員を続けることができたのは、妻が専業主婦として家事労働に従事していたからです。それにもかかわらず、妻が厚生年金を受給できないのは不公平です。

そこで、離婚時年金分割制度があります。同制度には次のふたつがあります。いずれにせよ、厚生労働大臣等への請求が必要になりますので、協議離婚での話し合いが必要となります。

合意分割
夫婦間で厚生年金の取り分について合意ができた場合に、厚生労働大臣等が合意どおりに夫婦間の厚生年金の取り分を決定する制度です。

3号分割
夫婦の一方が厚生年金に加入し、他方がその被扶養者であった場合に、厚生労働大臣等が厚生年金の取り分を当然に1/2にする制度です。
この場合、合意分割のような夫婦間の合意は必要ありません。

離婚時年金分割制度について詳しくは次の記事を参考にして下さい。

【離婚時の年金分割とは】合意分割・3号分割など難しい制度についてできるだけ丁寧に解説!

【合意分割の手続について】情報通知書、按分割合の定め方、調停・審判手続について解説!

1-5 親権者

未成年の子供がいる夫婦が協議離婚する場合、父母の一方を親権者と定めなければなりません。これを単独親権の原則といいます。

親権者を定めることは協議離婚の要件ですから、父母のどちらを親権者とするかの合意がないと離婚届が受理されません。

民法819条1項
父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。

協議離婚では、父母のうち親権者とならなかった一方を監護者と定めることもできます。監護者とは、子供の身体上の監督保護をする者を言います。

つまり、監護者とは子供を引き取って育てる者です。本来、親権にも子供の身体上の監督保護が含まれますが、協議離婚においては、財産管理を行う親権者と子供の身体上の監督保護をする監護者を分けることができるのです。

民法766条1項
父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。

家庭裁判所が親権者・監護者を決める場合、子供の利益を最優先して判断しています。

判断にあたっては、家庭環境、監護能力、子供の意思などが総合的に考慮されます。父母どちらを親権者・監護者とした方が、子供にとって幸せかという観点から決定するのです。

協議離婚の際、父母の一方を親権者・監護者と決定したとしても、その後、子供にとって不利益であることを理由として、家庭裁判所に親権者・監護者の変更を申し立てることができます(民法819条6項、766条3項)。また、子供が15歳以上の場合、家庭裁判所は、親権者、監護者の決定にあたり、子供の意見を聞きます(人事訴訟法32条4項、家事事件手続法152条2項、169条)。

ですのて、離婚協議においても、夫婦の一方が強引に親権者・監護者を決めるのではなく、子供の意見もよく聞いて合意する必要があります。

1-6 面会交流

離婚すると、通常、子供は父母のどちらかと同居することになります。同居していない親が、子供と直接会ったり、電話をしたり、手紙をやり取りしたり、メールをやり取りしたりすることを面会交流といいます。

家庭裁判所が面会交流をさせるかどうか決める場合、子供の利益を最優先して判断しています。通常、子供の利益を害する行為をするおそれがない限り、面会交流は認められています。

1-7 養育費

未成年の子供が生活するために必要な費用を養育費といいます。離婚して親権者でなくなっても、親は直系血族である子供の養育費を負担する義務があります。

民法877条
1 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。

一方、親権者となった親は、子供を監護教育する義務を負います。

民法820条
親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。

監護教育するには当然お金が必要ですから、親権者となった親は、親権者とならなかった親に対して養育費の分担を請求することができます。

協議離婚において、子の監護に要する費用の分担について協議で定めることとされているのは、親権者とならなかった親にも養育費の分担義務があるからです。

民法766条
1 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。

この養育費の分担義務は、婚姻費用についてと同じ生活保持義務といわれます。

したがって、親権者とならなかった親は、子供が自分と同程度の生活ができる金額を分担する必要があります。

2 できるだけ離婚時に合意した方がよい

それでは、これまで説明した協議離婚で合意すべきことは、すべて合意しないと協議離婚できないのでしょうか。そんなことはありません。

例外として、夫婦に未成年の子供がいる場合、親権者を決めることは必要です。親権者を決めないと、市区町村役場は離婚届を受理しません。

民法819条1項
父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。

しかし、それ以外については合意がなくても協議離婚はできます。とりあえず、親権者だけ決めたうえで協議離婚して、その他のことは後で話し合って決めることも可能ではあります。

しかし、離婚時に合意しておくことをお勧めします。

まず、離婚してしまうと、夫婦は他人になります。残念なことですが、他人となってしまうと、元夫、元妻でも配慮することが難しくなります。お金も払いたくない、子供にも会わせたくない・・・となってしまいます。

離婚はしたけど、財産を分けてもらえない、養育費を支払ってもらえない、子供に会わせてもらえないといったことはよく聞く話です。

離婚後、話し合い自体できない、話し合っても意見が相違して合意できない場合は、家庭裁判所に調停・審判を申し立てることもできますが、申立てに期限がある場合があります。例えば、財産分与については、離婚から2年以内に申し立てる必要があります(民法768条2項)。

また、離婚とあわせて話し合いをした方が有利に話を進めることができる場合もあります。

ですので、できるだけ離婚時に合意してしまうことをお勧めします。

話し合っても意見が相違して離婚の合意ができない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることをお勧めします。離婚調停では、夫婦の間に調停委員が仲介して話し合いが進められますので、夫婦同士直接よりも速やかに話し合いが進む場合が多いです。

3 離婚時に合意したことを確実に実行するには

夫婦で協議離婚時に様々なことに合意しても、相手方が合意どおりに実行しなければ意味がありません。

口頭で合意するだけでは、相手方が「そんなこと合意していない」と手のひらを返してしまうことも珍しくありません。

協議離婚時に合意したことが確実に実行されるためには、最低限、夫婦が署名押印した合意書を作成しておくべきです。

それでも、様々な理由を並べて、合意書どおりに実行されないこともあります。その場合、裁判所に訴訟を提起するしかないのですが、そうすると解決までに時間が掛かります。

そこで、協議離婚時の合意内容を公正証書にすることが考えられます。一般に離婚給付契約公正証書と言ったりします。

公正証書は、公証役場に勤める公証人が作成する文書です。

公正証書に、財産分与、慰謝料、養育費など金銭支払いについて定めるとともに、約束どおり支払われない場合、直ちに強制執行されることを定めておくことができます。強制執行の対象は、金銭の支払いや有価証券の給付に限られることには注意が必要です。

こうしておくことで、約束どおりに支払われない場合は強制執行できますし、そうでなくても約束どおりに支払わなければすぐに強制執行されるという心理的強制が働きますので、任意の支払いを期待できる効果があります。

4 まとめ

今回は協議離婚の進め方についてお話をしました。

協議離婚の進め方は、夫婦によって異なりますが、概ね次の①~⑦のことが多いです。各項目については、別途詳しく説明する予定です。

①婚姻費用分担
②財産分与
③慰謝料
④年金分割
⑤親権者
⑥面会交流
⑦養育費

⑤親権者については合意がないと協議離婚できませんが、それ以外は合意がなくても離婚はできます。

しかし、協議離婚後の話し合いは上手くいかないことが多いです。できれば、協議離婚時にまとめて合意してしまうことをお勧めします。

本人同士の話し合いによる合意が難しい場合は、家庭裁判所の離婚調停を利用することができます。

また、本人同士の話し合いにより合意ができた場合、合意内容の実行を確保するため、公正証書を作成することをお勧めします。