内縁の妻は相続人になれない?|内縁のに財産を残すにはどうすればよいか

私と夫とは夫婦として生活していますが、婚姻届は提出しておらず、いわゆる内縁の夫婦です。夫が死んだ場合、私は内縁の妻として、夫の遺産を相続することはできるのでしょうか。

結論から言いますと、内縁の妻が、亡くなった内縁の夫の遺産を相続することは認められません。

内縁の夫が亡くなると、内縁関係は終了することから、離婚の場合と同様に、財産分与として、内縁の夫の遺産の承継が認められるべきとの意見もありますが、これも認められていません。

とはいえ、長年、法律上の婚姻関係(法律婚)の夫婦と同様の生活をしてきたのに、内縁の夫の遺産を承継できないこととなると、残される内縁の妻のその後の生活が脅かされることにもなりかねません。

最近は、あえて婚姻届は選択せずに内縁夫婦を選ぶケースも増えていますから、内縁の夫(妻)の死後、残された妻(夫)の生活が困窮しないように、

  • 生前贈与
  • 遺言

などの対策をあらかじめ講じておくことが必要です。

今回は、内縁の妻(夫)は、亡くなった内縁の夫(妻)の相続人になれるかについて説明します。

こんな人に読んでほしい
  • 内縁の妻(夫)の相続権は認められるのか知りたい
  • 内縁の妻(夫)に対してどのような保護が図られるのか知りたい
  • 内縁の妻(夫)に財産を残す方法にはどのようなものがあるか知りたい

相続人(法定相続人)全般については次の記事を参考にしてください。

1 内縁とは

法律婚以外のパートナーがすべて内縁となるものではありません。

まずは内縁の意味について確認しましょう。

内縁とは、婚姻届は出されていないが、社会通念上、夫婦同様の生活をしている関係をいいます。

つまり、

  1. 内縁を成立させる意思
  2. 内縁事実(同居している、二人の子がいる、日常的にも経済的にも協力して生活している)

が必要とされます。

2 内縁の妻(夫)には相続権はない

内縁の妻(夫)は、亡くなった夫(妻)の遺産を相続する権利は認められません。

実務上、内縁は、法律婚に準じたものとの考えられ(準婚理論)、民法が婚姻に与えている効果の多くのものは内縁にも認められています。

例えば、内縁が破綻した場合、離婚に準じて財産分与の規定(民法768条)が類推適用されます。

法律婚のみに認められるのは、

  • 夫婦間及び一方配偶者と他方配偶者の血族との間に親族関係が発生(民法725条)
  • 夫婦は同一の氏を称する(民法750条)
  • 婚姻した未成年を成年と擬制すること(民法753条)
  • 婚姻中に懐胎された子は夫の嫡出子と推定されること(民法772条)
  • 夫婦は相互に相続権を持つこと(民法890条)

などに過ぎません。

しかし、この数少ない法律婚のみに認められるなかに相続権もに入っています。

相続権が認められない理由としては、

  • 相続権の帰属は明確にするべきであること
  • 内縁関係の立証が困難であること
  • 相続は形式的・画一的な処理が求められること

などが挙げられています。

また、内縁の夫(妻)が亡くなることで、内縁関係は終了するのですから、内縁関係の解消の場合と同様、夫婦の離婚の際の財産分与の規定(民法768条)を類推適用して、残された内縁の妻(夫)に遺産の承継を認めるべきとの主張もあります。

しかしこ、最高裁判所は、「死別による内縁解消のときに、財産分与の法理で遺産解消の途を開くことは、相続による財産承継の構造の中に異質の契機をもちこむことになり、また、死亡した内縁配偶者の扶養義務が遺産の負担となって相続人に承継される余地もない」として、これを否定しています。

3 内縁の妻(夫)の居住が認められることはある

内縁の妻(夫)の相続権は認められませんが、個別の事案において、内縁の妻(夫)の保護が図られたことはあります。

特に、内縁の妻(夫)が、亡くなった夫(妻)の相続人より、長年にわたり住み続けていた家を明け渡すように迫られた場合などです。

3-1 内縁の妻(夫)が、内縁の夫(妻)の所有する家に住んでいた場合

  1. 内縁の夫が所有していた家に夫婦で住んでいた
  2. 内縁の夫が亡くなり、家を内縁の夫の子が相続した(内縁の妻と子の間には親族関係なし)
  3. 内縁の夫の子が、内縁の妻に対し、家の明け渡し請求をした

この場合、内縁の妻が、長年住み慣れた家を追い出されるとすれば、あまりにも酷と言わざるを得ません。

この場合、相続人である子が居住する差し迫った必要がない限り、明け渡し請求は権利の濫用である(請求できない)とされました(最判S39.10.13民集18巻8号1578頁)。

3-2 内縁の夫婦が共有する家に住んでいた

  1. 内縁の夫婦が共有する家に住んでいた
  2. 内縁の夫が亡くなり、内縁の夫の共有持ち分を子が相続した(内縁の妻と子の間には親族関係なし)
  3. 内縁の夫の子が、内縁の妻に対し、賃料相当分の不当利得返還請求をした

この場合について、最高裁判所は、「内縁の夫婦が共有する不動産を居住又は共同事業のために共同で使用してきたときは、特段の事情のない限り、両者の間において、その一方が死亡した後は他方が右不動産を単独で使用する旨の合意が成立していたものと推認される」されました(最判H10.2.26民集52巻1号255頁)。

4 相続人がいない場合は特別縁故者への相続財産分与の請求が可能

相続人がいないと、被相続人の遺産は国庫に帰属することになります。

しかし、たとえ被相続人に相続人がいなかったとしても、遺産が国に吸い上げられるくらいなら、身の回りで特に世話になった人など(特別縁故者といいます)に遺産を譲りたいと考えるのは普通だと思います。

それなのに、遺産が、特別縁故者にも承継されることなく、国庫に帰属することとなるのは、被相続人の意思にも反することになり得ますし、国民の一般的な感情にも反します。

そこで、被相続人に相続人がいない場合、被相続人の特別縁故者に相続財産(遺産)の一部又は全部を分与する制度があります。

特別縁故者への相続財産分与は、家庭裁判所が申立てに基づいて審判で決定します。

だれが特別縁故者となるかといえば、民法では、

  • 被相続人と生計を同じくしていた者
  • 被相続人の療養監護に努めた者
  • その他被相続人と特別の縁故のあった者

とされています。

具体的にどのような者が特別縁故者となるかは、家庭裁判所の個別具体的な判断に委ねられますが、亡くなった内縁の夫(妻)との関係において、内縁の妻(夫)は通常は特別縁故者に該当するものと考えられます。

5 財産を残す方法①:生前贈与

以上のとおり、現行法上、内縁の妻(夫)には相続権が認められませんが、内縁の妻(夫)について居住が認められたり、相続人がいない場合は特別縁故者として相続財産分与の請求が認められることもあります。

しかし、それだけで保護が図られるとは限りません。

そこで、内縁の夫(妻)は、生前、自分の死後残される内縁妻(夫)に遺産を承継させる手続を講じておくことが重要です。

まず考えらえれるのは、生前贈与をすることです。

生前贈与をすると贈与税が課税され、贈与税の税率は相続税よりも高く設定されていますが、基礎控除が年間110万円ありますので、年間110万円以内の贈与であれば、無税で生前贈与できるなどメリットがあります。

6 財産を残す方法②:遺言

また、内縁の妻(夫)に遺産を承継させるのであれば、遺言を残すのが王道といえます。

遺産を相続できるのは、民法に定められた相続人(法定相続人)のみですが(民法887~890条)、遺言をすれば相続人以外の人に遺産を残すことができます。

これを、相続人が遺産を相続する場合と区別して遺贈といいます。また、遺贈される人を受遺者といいます。

前述の生前贈与や後述の死因贈与との違いは、これらは当事者双方の合意である契約であるのに対し、遺言は遺言者の一方的な意思表示であることです。

内縁の妻(夫)は相続人ではありませんが、遺言に内縁の妻(夫)に遺贈すると記載すれば、遺産を承継させることができます。

全財産を内縁の妻(夫)に遺贈するとの内容の遺言も可能ですが、これですべての遺産が、実際に内縁の妻(夫)に承継されるとは限らないことに注意が必要です。

民法に定められた相続人(法定相続人)には、遺言の内容にかかわらず、最低限の取り分が保証されているからです。

これを遺留分といいます。

遺留分は遺産全体の1/2です。

つまり、全財産を内縁の配偶者に遺贈する内容の遺言があっても、その半分は相続人の取り分となります。

ちなみに遺産の1/2を各相続人の法定相続分で分けます。

なお、相続人が直系尊属のみの場合、遺留分は遺産全体の1/3となります。

さらに、兄弟姉妹は相続人にはなりますが、遺留分は認められていません。

死因贈与

内縁の夫(妻)の一方が死んだら、妻(夫)に財産を贈与する契約を締結することができます。これを死因贈与といいます。
内縁の夫(妻)の死亡により効力が発生する点では遺贈と同じです。
一方、遺贈は遺贈者の一方的な意思表示であるのに対し、死因贈与は、双方の合意による契約です。

7 まとめ

今回は、内縁の妻(夫)は、亡くなった内縁の夫(妻)の相続人になれるかについて説明しました。

  • 内縁とは、婚姻届は出されていないが、社会通念上、夫婦同様の生活をしている関係をいう
  • 内縁の妻(夫)は、亡くなった内縁の夫(妻)の相続人になれない
  • 内縁の妻(夫)について、亡くなった内縁の夫(妻)の所有する家の居住が認められることはある
  • 亡くなった内縁の夫(妻)に相続人がいない場合、内縁の妻(夫)は特別縁故者として相続財産分与を請求できる可能性がある
  • 生前贈与・遺贈によって、内縁の妻(夫)に亡くなった内縁の夫(妻)の財産を残すことができる
  • 全財産を内縁の妻(夫)に遺贈するとの内容の遺言も可能であるが、相続人の遺留分のため、すべての遺産が、実際に内縁の妻(夫)に承継されるとは限らない。