【離婚時の年金分割とは】合意分割・3号分割など難しい制度についてできるだけ丁寧に解説!

離婚時年金分割制度には、合意分割3号分割がありますが、離婚時年金分割制度の考え方そのものがわかりにくいものだったりします。

そこで、今回は離婚時年金分割制度のおおまかな考え方について説明します。

年金分割のほか、離婚時に話し合うべきことについては次の記事を参考にして下さい。

協議離婚の進め方~何を話し合えばいいのか

1 日本の公的年金制度は2階建て

日本の公的年金制度は2階建てになっています。

日本国内に住む20歳以上の人が全員加入する国民年金(基礎年金)(1階)、会社員、国家公務員、地方公務員、私立学校教職員が加入する厚生年金(2階)からなります。

なお、その上に、さらに任意加入の厚生年金基金などもありますから、3階建てと言われることもあります。

また、国家公務員、地方公務員、私立学校教職員については、以前はそれぞれ共済年金というものに加入していましたが、平成27年10月、共済年金と厚生年金は統合されたので、現在は2階部分は厚生年金に一本化されています。

1階部分の国民年金は、20歳以上の人が全員加入しますから、支給開始年齢になればだれでも定額が支給されます(ただし、支給開始年齢を早めたり遅らせたりすると金額が変動します。また、保険料の未納がある場合も金額が少なくなりますし、制度が改正されて金額が変動することもあります。)。

2階部分である厚生年金は、会社員、国家公務員、地方公務員、私立学校教職員といった加入者だけに支給されます。なお、厚生年金は、毎月の給与が多いほど保険料も多くなり、その分受給額も多くなります。

例えば、夫が会社員で、妻が専業主婦の場合、厚生年金が支給されるのは加入者の夫だけで、加入者でない妻には支給されません。

厚生労働省ホームページ資料を加工

2 離婚すると年金格差が生まれてしまう

夫婦が婚姻中であれば、厚生年金が夫にだけに支給されても問題はないでしょう。夫が受給した厚生年金を夫婦の生活費として使えばよいからです。

たとえ夫婦仲が悪くなって、別居することとなっても、妻は夫に対して、婚姻費用として厚生年金受給額の一部を請求することができます。

しかし、夫婦が離婚した場合は大きな問題となります。

離婚してしまうと、妻は夫に対して婚姻費用の請求ができません。会社員であった夫は国民年金と厚生年金を受給できるのに対し、専業主婦であった妻は、国民年金しか受給できません。

厚生年金は、支払った保険料が多いほど受給額が多くなりますから、夫婦の収入額の格差はその分大きくなります。

3 妻が厚生年金を受給できないのは不公平

夫婦は婚姻中、相互に助け合いながら生活しています(民法752条)。

ですので、夫婦が婚姻中に形成した財産は、原則として夫婦が協力して形成したものとされ、夫婦の共有財産となります。名義が夫婦のどちらか一方だったとして、夫婦が協力して形成したものであれば、離婚時には夫婦間の財産分与で清算されることになります。

このような考え方は厚生年金を受給する権利にもあてはまります。

例えば、夫が会社員で、妻が専業主婦の場合、厚生年金の加入者は夫ですから、名義上、厚生年金を受給する権利があるのは夫であり、妻には受給する権利はありません。

しかし、夫が外で会社員として働けるのは、妻が専業主婦として家事労働や子育てを担ってきたからこそです。つまり、夫の厚生年金を受給する権利は、夫婦が協力して形成した財産と考えられます。

それなのに、名義上、受給する権利があるのが夫だからといって、離婚後は、妻が厚生年金を全く受給することができないのは不公平ですよね。

少なくとも、婚姻中に夫が支払った保険料に対応して受給する厚生年金については、夫婦が平等に受給できるようにすべきと考えられます。

4 離婚時年金分割制度

こういった不公平を是正するために導入されたのが離婚時年金分割制度です。

イメージを掴んでもらうため、あえて正確さを無視して説明すると、老後の厚生年金の受給額は、現役時代に支払った保険料の総額によって変わってきます。現役時代に支払った保険料が多ければ多いほど、老後の厚生年金の受給額も多くなります。

離婚時年金分割制度というのは、現役時代に支払った保険料のうち、夫婦の婚姻期間中に支払った分について、離婚した夫婦が分け合うというものです。

夫婦間でどのような割合で分けるかについては夫婦の協議で決まりますが、協議がまとまらない場合は家庭裁判所に調停や審判を申し立てることもできます。

これまで説明してきたように、夫が会社員で、妻が専業主婦の場合は、夫が妻に婚姻期間中に支払った保険料を分けるということになりますね。

夫婦共働きの場合は、夫婦がそれぞれ婚姻期間中に支払った保険料を合計したものを分けるということになります。

夫が会社員で、妻が専業主婦の場合に話を戻すと、妻は、受け取った保険料については自分のものにできますから、これに基づいて厚生年金を受給することができます。

ここで、少し正確に説明すると、夫が妻に分けるのは、保険料そのものではなく、保険料を算定する基礎となる標準報酬額(標準報酬月額と標準賞与額)というものです。特に婚姻期間中に支払った保険料を算定する基礎となる標準報酬額を対象期間標準報酬額といいます。標準報酬額については後ほど説明しますが、保険料と同じものと考えた方がイメージしやすいと思います。

実際の分け方は金額ではなく按分割合で決めます。つまり、婚姻期間中の標準報酬額の○%という形です。

は、日本年金機構の年金事務所に対して、「これだけの割合の保険料(標準報酬額)をもらいました」と請求することで、老後は、分けてもらった保険料(標準報酬額)に基づいて算定した厚生年金を受給することができるのです。これを標準報酬額の改定といいます。

ここで注意しておきたいのは、離婚した夫婦で年金受給額を分けるのではないということです。あくまでも年金受給額の算定の根拠となる保険料(標準報酬額)です。

そうすることによって、妻は、受け取った保険料(標準報酬額)は自分のものにできますから、夫が亡くなっても関係なく、自分の支給開始年齢になれば厚生年金を受給することができるのです。

日本年金機構のホームページ資料

5 標準報酬月額と標準賞与額

ここで簡単に標準報酬額について説明しておきます。標準報酬額は、標準報酬月額と標準賞与額からなります。

5-1 標準報酬月額

厚生年金の保険料は、毎月の給与に保険料率を掛けて算定するのが基本的な考え方です。

しかし、給与というのは毎月変動するものなんですよね。毎月の給与の変動をすべての従業員について把握して、一つ一つ保険料を計算していたら、時間がいくらあっても足りずに、制度そのものが立ち行かなくなってしまいます。

そこで、各従業員につき、原則的に年1回、4月から6月の給与額の平均に基づいて、仮の給与というものを設定します。この仮の給与のことを標準報酬月額といいます。この標準報酬月額に保険料率を掛けて、毎月の保険料を算定します。

標準報酬月額の定め方は少しややこしいです。給与額を一定の幅で区分して、区分ごとに標準報酬月額を定めた表がありまして、4月から6月の給与額の平均がどこの区分に当てはまるかによって標準報酬月額が決まることになります。

こちらの日本年金機構のHPを参考にしてください。

日本年金機構HP

5-2 標準賞与額

標準賞与額はややこしくないです。実際の税引き前の賞与額から千円未満の端数を切り捨てたものが標準賞与額です。これに保険料率を掛けて、賞与に対する保険料を算定します。

6 合意分割と3号分割

6-1 合意分割

合意分割とは、離婚した夫婦の一方が、日本年金機構の年金事務所に対して、一定の按分割合に基づいて標準報酬額を改定することを求める制度です。按分割合は、夫婦の協議によって定めるのが原則ですが、夫婦の協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に調停又は審判の申立てをすることができます(家事事件手続き法233、244条)。

合意分割について詳しくはこちらを参考にして下さい。

【合意分割の手続について】情報通知書、按分割合の定め方、調停・審判手続について解説!

6-2 3号分割

夫婦の一方が厚生年金に加入して、他方が被扶養者として国民年金第3号被保険者となっていた期間がある場合、その期間について、被扶養者から日本年金機構の年金事務所に対して年金分割請求をすると、自動的に2分の1の割合で標準報酬額を分割してくれる制度です。

ただし、この制度の対象となるのは、平成20年4月1日以降、被扶養者であった期間に限られます。