年金分割についてよく分かる|年金分割のための情報通知書や必要書類についても解説

夫は会社員で、妻の私は専業主婦です。離婚後、私は厚生年金を受給できるのでしょうか。

今回は、離婚時の年金分割について説明します。

年金分割というと、単純にもらえる年金を二人で分けることをイメージしますが、そう簡単なものではありません。

あくまでも分割の対象は婚姻期間に対応した部分に限られます。また、分割するのは年金額そのものではなく、年金額の算定の基礎となる金額(標準報酬)であったりするなど仕組みは分かりにくいです。

また、離婚すれば自動的に年金分割されると考えている方がいますが、日本年金機構や共済組合への請求が必要となります。

しかも、離婚した日の翌日から数えて2年以内に請求しないと時効により請求できなくなります。

今回は、ややこしい年金分割制度について、できるだけ簡単に説明します。年金分割において必ず必要となる年金分割のための情報通知書、年金分割請求の手続や必要書類についても説明します。

離婚を考えるときに留意すべきことについては、こちらの記事で全般的に説明しています。

離婚したい方に読んでほしい|離婚で後悔しないために押さえておくべき15のこと

1 日本の公的年金制度

  • 年金保険料が会社の給与から天引きされている
  • 会社に勤めている夫の扶養に入っている

といった場合、自分で年金保険料を支払わないため、公的年金の仕組みが分からないということは多いです。

そこで、年金分割について説明をする前に、まず日本の公的年金制度について簡単に説明します。

日本の公的年金は2階建てです。

1-1 日本の公的年金制度は2階建

日本の公的年金制度は2階建てといわれます。

上の図は、厚生労働省の資料に加工したものですが、

  • 1階部分が国民年金
  • 2階部分が厚生年金

となっています。

1階部分の国民年金は、日本に住む20歳以上60歳未満の人が全員加入する年金です。

公的年金制度の基礎となるものなので、基礎年金ともいわれます。毎月定額の保険料を支払わなければなりません。支給開始年齢(原則65歳)になると年金を受給できます。

支給開始年齢を早めたり遅らせたりすると金額が変動します。保険料の未納があると金額が少なくなります。今後、制度改正されて金額が変動することもあります。

2階部分は厚生年金です(上の図の赤線で囲んだ部分)。

会社員、国家公務員、地方公務員、私立学校教職員が厚生年金に加入しなければなりません。

厚生年金は、国民年金とは異なり、保険料は定額ではありません。給与・賞与が多いほど保険料も多くなりますが、その分、年金受給額も多くなります。支給開始年齢(生まれた年代により異なる)になると年金を受給できます。

これまで、国家公務員、地方公務員、私立学校教職員が加入するのは、それぞれ、国家公務員共済年金、地方公務員共済年金、私立学校教職員共済年金でしたが、これらは、平成27年10月1日、厚生年金に統合され、現在は厚生年金に一本化されています。

なお、厚生年金の上に、さらに、

  • 厚生年金基金 等

の年金制度もありますが、こちらは任意加入となりますので、通常、公的年金には含まれません。

1-2 国民年金の被保険者は1号から3号まで

1階部分の国民年金の加入者(被保険者)は1号から3号に分けられます。

1号被保険者会社などに雇われていない自営業者、学生、無職者
2号被保険者厚生年金の被保険者
3号被保険者2号被保険者の配偶者で扶養されている人

1号被保険者は、毎月、国民年金保険料を支払う必要があります。

2号被保険者は、毎月、厚生年金保険料を支払いますが、その一部が国民年金保険料に充当されることになります。また、厚生年金保険料は、会社等と折半しますので、被保険者は半額だけ支払えば済みます。

3号被保険者は、国民年金保険料を支払う必要はありません。配偶者である2号被保険者が支払った厚生年金保険料の一部が3号被保険者の国民年金保険料に充当されるからです。

2 年金分割とは

2-1 厚生年金は被保険者だけが受給できる

厚生年金は、会社、役所、学校等に雇われている人が被保険者ですから、厚生年金を受給できるのも被保険者です。

夫が夫が会社員で、妻が専業主婦の場合、厚生年金の被保険者は夫ですから、名義上、厚生年金を受給する権利があるのは夫であり、妻には受給する権利がないのが原則です。

それでも、夫婦が婚姻中であれば問題はありません。夫が受給した厚生年金を夫婦で使えばよいからです。

しかし、夫婦が離婚した場合は大きな問題となります。

離婚後は、会社員であった夫は国民年金と厚生年金を受給できるのに、専業主婦であった妻は、国民年金しか受給できないことになります。

また、妻もパートで働いていて厚生年金の被保険者となっており、いくらか受給できるとしても、厚生年金は、給与・賞与が多いほど受給額も多くなりますから、夫婦の年金収入額の格差はその分大きくなるでしょう。

2-2 厚生年金の受給額に格差がるのは不公平

夫婦は婚姻中、相互に助け合いながら生活します(民法752条)。

夫婦が婚姻中に形成した財産は、原則として夫婦が協力して形成したものであり、夫婦の共有財産となります。名義が夫婦のどちらか一方であっても、夫婦が協力して形成したものであれば、離婚時には夫婦間で清算されます。

これが離婚時の財産分与(民法768条)の基本的な考え方です。

このような考え方は厚生年金を受給する権利にもあてはまります。

夫が会社員で、妻が専業主婦の場合、夫が会社員として働けるのは、妻が専業主婦として家事労働や子育てを担ってきたからです。

夫の厚生年金を受給する権利は、夫婦が協力して形成した財産と考えられます。

それなのに、名義上、受給する権利があるのが夫だからといって、離婚後、妻が厚生年金を全く受給できないのは不公平となります。

少なくとも、婚姻中に夫が支払った保険料に対応して受給する厚生年金については、夫婦が平等に受給できるようにすべきと考えられます。

3 年金分割制度

3-1 年金分割制度とは

上記の不公平を是正するために導入されたのが年金分割制度です。

厚生年金の保険料を支払うと、被保険者の年金記録に納付実績が記録されます。

夫が会社員、妻が専業主婦とすると、夫の年金記録には厚生年金保険料の納付実績が記録されていくことになります。

夫の毎月の厚生年金の受給額は、この年金記録に基づいて計算されることになります。

年金分割とは、夫婦の離婚の際、夫婦間で不公平とならないように、この年金記録を夫婦で分割するというイメージです。

年金分割されると、専業主婦だった妻の年金記録にも、夫の年金記録から分割された厚生年金保険料の納付実績が記録されますから、これに基づいて、妻も厚生年金を受給することができることになります。

分割された年金記録は自分のものですから、元夫が亡くなっても関係なく、妻は、自分の支給開始年齢になれば厚生年金を受給できます。

3-2 標準報酬月額と標準賞与額

毎月の厚生年金の受給額は、年金記録に基づいて計算されると説明しましたが、正確には、年金記録に記録されている標準報酬月額標準賞与額の総額(標準報酬額)です。

年金分割では、年金記録に記載されている標準報酬総額のうち、婚姻期間中のもの(対象期間標準報酬総額が分割の対象となります。

年金分割されると、按分された対象期間標準報酬総額が、年金分割を受けた方の年金記録に記載され、標準報酬額に加算されます。

これを標準報酬改定といいます。

そして、加算後の標準報酬額に基づいて計算された毎月の厚生年金を受給することができるのです。

標準報酬月額と標準賞与額の算定方法は次のとおりです。

標準報酬月額

厚生年金の保険料は、毎月の給与に保険料率を掛けて算定するのが基本的な考え方です。

しかし、給与というものは毎月変動するものです。給与の変動をすべての従業員について把握して、一つ一つ保険料を計算していたら、膨大な時間が掛かってしまいます。

そこで、各従業員につき、年1回、4月から6月の給与額の平均を算出し、この平均給与額に基づいて標準報酬月額というものを設定しています。

この標準報酬月額の設定方法は少しややこしいです。給与額を一定の幅で区分して、区分ごとに標準報酬月額を定めた表(保険料額表)があり、平均給与額がどこの区分に当てはまるかによって標準報酬月額が設定されます。

標準報酬月額に保険料率を掛けて、毎月の保険料を算定します。

標準報酬月額の区分は定期的に見直しされています。日本年金機構HPを参考にしてください。

標準賞与額

賞与が支払われた場合、賞与に対しても厚生年金の保険料の支払いが必要となります。

賞与に対する保険料の算定方法は簡単です。

税引き前の賞与額から1000円未満の端数を切り捨てたものが標準賞与額です。これに保険料率を掛けて、賞与に対する保険料を算定します。

4 年金分割の方法は2つ

年金分割の方法は、

  • 合意分割
  • 3号分割

の2つあります。

4-1 合意分割

合意分割では、婚姻期間中の標準報酬月額と標準賞与額の総額(対象期間標準報酬総額)をどのように分けるのかを夫婦で協議します。

夫婦の協議がまとまらない場合、家庭裁判所に調停・審判の申立てができます(家事事件手続き法233、244条)。
ここでは金額ではなく、対象期間標準報酬総額の○%を按分するといったように按分割合を決めます。

離婚した夫婦の一方又は双方が厚生労働大臣に対し、決められた按分割合に基づいて年金分割することを求めることができます。

合意分割については、5で詳しく説明します。

4-2 3号分割

3号分割は、夫婦の一方が他方の被扶養配偶者(3号被保険者)であった期間がある場合に適用されます。

被扶養配偶者が厚生労働大臣に対し年金分割請求をすると、被扶養配偶者であった期間について自動的に0.5(2分の1)の割合で標準報酬額が改定されます。

夫婦の協議は不要です。夫婦の一方は単独で請求をすることができます。

ただし、この制度の対象となるのは、平成20年4月1日以降、被扶養配偶者であった期間に限られます。

4-3 どちらの方法によるべきか

合意分割・3号分割のどちらによるべきかは、次のとおりに整理できます。

なお、合意分割・3号分割どちらもできる場合に、合意分割を請求すると、3号分割の請求もしたものとみなされますから、改めて3号分割の請求をする必要はありません(厚生年金法78条の20)

婚姻時期分割方法
平成20年3月31日以前合意分割
平成20年4月1日以後【婚姻から離婚までずっと被扶養配偶者(3号被保険者)の場合】3号分割
【それ以外の場合】合意分割

5 合意分割の手続の流れ

年金分割の方法には、合意分割・3号分割とありますが、主に問題となるのは合意分割でしょう。以下では、合意分割の手続の流れについて詳しく説明します。

5-1 まずは年金分割のための情報通知書を取得する

婚姻期間中の標準報酬月額と標準賞与額の総額(対象期間標準報酬総額)が分からなければ、協議を始めようがありません。

そこで、まずは、年金事務所等の年金制度実施機関(厚生年金保険法2条の5)に対し、年金分割のための情報通知書の提供を請求します。

これを標準報酬改定請求といいます。

通常、請求書には次の書類の添付が必要となります(厚生年金法施行規則78条の6第2項)。実施機関によりその他の書類を求められる場合もあり得ますので、所管の年金事務所等に問い合わせてください。

年金分割のための情報提供請求書添付書類
  • 請求者の年金手帳または基礎年金番号通知書
  • 婚姻期間等を明らかにできる書類(戸籍謄本、それぞれの戸籍抄本、戸籍の全部事項証明書またはそれぞれの戸籍の個人事項証明書のいずれかの書類)
  • 事実婚関係にある期間の情報通知書を請求する場合は、その事実を明らかにできる書類(住民票等) 等

3-2 対象となる年金

年金分割の対象となるのは厚生年金です。

3-3 対象期間

年金分割の対象となるのは、夫婦の婚姻期間中の標準報酬月額と標準賞与額の総額(対象期間標準報酬総額)です。

3-4 按分割合の定め方

年金事務所等から提供を受けた年金分割のための情報通知書に基づいて、夫婦で年金分割の按分割合を協議します。

  1. 夫婦それぞれの対象期間標準報酬総額を合計する
  2. 対象期間標準報酬総額の合計額に対する按分割合を定める

夫が会社員で、妻が専業主婦の場合、厚生年金の被保険者となっているのは夫だけですから、夫の対象期間標準報酬総額を妻に分割するということになります。
これに対し、妻も会社員である場合、妻も厚生年金の被保険者ですから、夫婦それぞれの対象期間標準報酬総額を合計し、これに対して按分割合を決め、その按分割合に基づいて、対象期間標準報酬総額の多い方から少ない方へと分割するということになります。

按分割合は夫婦の合意によって任意に定めることができますが、一定の範囲内に制限されます。

例えば、次の【共働き】のケースでは、分割後、妻の按分割合が元々の30%を下回ったり、夫の按分割合が50%を下回ることはできません。分割を受ける妻の按分割合は、30%を超え50%以下の範囲内で定める必要があります。

年金分割の按分割合は一定の範囲に制限されます。
【共働き】のケース


また、下の【片働き】ケースでも、夫の按分割合が50%を下回ることはできません。

年金分割で許される場合と許されない場合をグラフで説明しています。



年金分割は、夫婦であった者の離婚後の生活保障を目的とするものですから、どちらか一方に過度の負担を与える年金分割は制度の趣旨に反すると考えられるからです。

夫婦で合意ができたら、合意書を作成します。合意書には、

  • 当事者が標準報酬改定請求をすることに合意していること
  • 請求すべき按分割合に合意していること
  • 第1号改定者の氏名・生年月日・基礎年金番号
  • 第2号改定者の氏名・生年月日・基礎年金番号

について合意したことを記載します(厚生年金保険法施行規則78条の4)。

通常は、次のような文言が記載されます。

合意書記載例

甲(第1号改定者)と乙(第2号改定者)は、厚生年金保険法第78条の2第1項の規定に基づき、標準報酬の改定又は決定の請求をすること、及び請求すべき按分割合を0.5とすることに合意した。

第1号改定者は年金分割をする人、第2号改定者は年金分割を受ける人です。

3-5 年金事務所等への請求

合意書が作成できたら標準報酬改定請求をすることができます。

夫婦で作成した合意書に基づいて標準報酬改定請求をする場合、年金事務所等に夫婦がともに合意書を持参する必要があります(厚生年金保険法施行規則78条の4第1項2号)。

公正証書、合意書に公証人の認証(私署証書認証)を受けたものであれば、持参は不要です。

標準報酬改定されると標準報酬改定通知書が送付されます。

請求にあたっては、標準報酬改定請求書とあわせて、次の書類を提出する必要があります(厚生年金保険法施行規則78条の11第2項)。実施機関によりその他の書類を求められる場合もあり得ますので、所管の年金事務所等に問い合わせてください。

標準報酬改定請求添付書類
  • 請求書にマイナンバーを記入したとき:マイナンバーカード等
  • 請求書に基礎年金番号を記入したとき:年金手帳または基礎年金番号通知書
  • 婚姻期間等を明らかにできる書類(戸籍謄本、それぞれの戸籍抄本、戸籍の全部事項証明書またはそれぞれの戸籍の個人事項証明書のいずれかの書類)
  • 請求日前1ヶ月以内に作成された、夫婦二人の生存を証明できる書類(戸籍謄本、それぞれの戸籍抄本、戸籍の全部事項証明書、それぞれの戸籍の個人事項証明書または住民票のいずれかの書類)(請求書にマイナンバーを記入することで省略できる。)
  • 事実婚関係にある期間の合意分割を請求する場合は、その事実を明らかにできる書類(住民票等)
  • 年金分割することおよび按分割合について合意している旨を記入し、自らが署名した書類、公正証書の謄本もしくは抄録謄本、公証人の認証を受けた私署証書
  • 請求者(代理人を含む)の本人確認ができる書類(運転免許証、パスポート、顔写真付きの住民基本台帳カード、印鑑およびその印鑑にかかる印鑑登録証明書のいずれかの書類) 等

4-6 夫婦で合意ができなかったら家庭裁判所へ

夫婦で協議しても合意に至らない場合、家庭裁判所に調停又は審判の申立てをすることができます。

調停では、調停委員のあっせんのもと夫婦で話し合い、年金分割の按分割合について合意に至れば調停成立となります。審判では、裁判所が年金分割の按分割合を決定します。

審判では、対象期間における保険料納付に対する当事者の寄与の程度その他一切の事情を考慮して割合を定めることとされていますが、実務上、特段の事情がない限り、夫婦の寄与度は等しいとして、按分割合は0.5(1/2)とされています。

調停又は審判によって年金分割の按分割合が決定した場合、年金事務所等に対して、夫婦間の合意書の代わりに、調停調書又は審判書を提出して、標準報酬改定請求をします。

6 年金分割の期限は2年

標準報酬改定請求は、離婚をした日の翌日から起算して2年以内に行わなければなりません(厚生年金保険法78条の2第1項ただし書)。

期限を過ぎると、年金分割を請求する権利を喪失することになりますから注意が必要です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です