遺留分の割合について一番丁寧に説明します|兄弟は遺留分をもらえるのか

父が亡くなりました。母は父より先に他界しています。父の子は兄、姉、妹の私の三人です。父は兄夫婦と実家で同居していました。

父の葬儀が終わってしばらくたった頃、兄から、父の遺言書があるから話をしたいと電話がありました。姉と私は、実家で兄から父の遺言書を見せられました。内容は、姉と私が父の遺産の1/10ずつを相続し、残り8/10は兄が相続するというものでした。

姉と私はびっくりしてしまいました。法定相続分であれば、姉と私は1/3ずつ相続できるはずです。1/10ですと、1/3には遠く及びません。

姉と私は、結婚して父とは別に暮らしていましたが、ずっと仲良しでしたから、父がこのような遺言書を作成したことが信じられません。また、姉と私は、父の生前、実家から金銭的な援助を受けたことはありませんでしたが、父と同居していた兄はかなりの金額の援助を受けていたと亡くなった母は言っていました。

姉と私は、このような不平等な取り扱いには到底納得できません。知合いに相談したら、遺留分侵害額請求ができる場合があると聞きました。そもそも遺留分とは何でしょうか。また、姉と私には遺留分はどれくらいでしょうか。

家族が亡くなったら、家族の相続人は、民法に定められた法定相続分に従って遺産を相続できると期待するのが普通です。

しかし、実際には、その期待どおりに相続できるとは限りません。

  • 相続人の一人に大部分の遺産を相続させる遺言が残されていた
  • 相続人の一人が、被相続人の生前、被相続人から多額の贈与を受けていた

他の相続人の知らないところで、相続人の一人を優遇した遺言が作成され、生前贈与が行われることにより、相続できる遺産が、法定相続分と比べて著しく少なくなる場合があります。

確かに財産をどのように処分するかは、基本的には被相続人の自由です。とはいえ、法定相続分に従って遺産を相続できると期待していた相続人が納得できないのも理解できます。

そこで、民法では、被相続人の財産処分の自由と相続人の期待のバランスを図り、相続人に対し、被相続人の財産から取得できる最低限の取り分を保障しています。これを遺留分といいます。

だれに・どれくらい遺留分が保障されるのか(遺留分の割合)は、配偶者・子・直系尊属といったように、相続人が被相続人とどのような関係にあるのかによって変わってきます。

上のケースでは、相談者や相談者の姉には遺留分は認められるのでしょうか。認められるとして、どれくらいの遺留分が認められるのでしょうか。

今回は遺留分の割合について説明します。上のケースに基づいてできるだけ具体的に説明していきます。

この記事でわかること

✓遺留分とはなにか
✓なぜ遺留分が認められるのか
✓遺留分が認められるのはだれか
✓遺留分の割合はどれくらいか
✓遺留分が侵害されたらどうするのか

1 遺留分とは、法定相続人に保障されている遺産の最低の取り分

遺留分とは、被相続人の財産のうち、相続人に取得することが最低限保障されている部分をいいます。

とはいっても、遺留分とは、不動産・現金・預貯金・有価証券などの被相続人の財産のうち、どれとどれを取得できるといった具体的なものではありません。被相続人の財産の総額に対する一定割合の金銭を得ることを保障するものです。

相続人の一人に大部分の遺産を遺贈させる内容の遺言があり、他の相続人の相続できる遺産が遺留分に達していなかったとしても、相続人の一人に対する不動産・現金・預貯金・有価証券などの遺贈の効力が否定されるわけではありません。

他の相続人は、遺贈を受けた相続人に対して、遺留分に達しない分について金銭の支払いを請求することができることになります。

2 遺留分制度の目的

そもそも財産をどのように処分するかは被相続人の自由のはずです。

例えば、相続人以外の第三者に全財産を遺贈する遺言であっても、被相続人の意思を尊重して全面的に認めるべきとも考えられます。それなのに、なぜ遺留分が認められているのでしょうか。

遺留分制度の目的は、だれに・どれくらい遺留分が保障されるのかを理解するための前提となりますので、簡単に説明しておきましょう。

遺留分制度の目的は,被相続人が亡くなった後の家族の生活保障,遺産の維持・形成に貢献したことに対する考慮,夫婦の共有財産の清算,共同相続人間の公平確保にあります。
遺留分制度の目的

2-1 被相続人が亡くなった後の家族の生活保障

被相続人の家族(配偶者・子・親)が、被相続人の扶養を受けて生活していた場合、被相続人の死後、被相続人の財産が第三者に承継されることとなると、家族は生活を維持することができなくなってしまいます。

家族で住んでいた家や生活資金となる預貯金が第三者のものとなってしまったら、生活が立ちいかなくなることは容易に理解できるでしょう。そこで、一定範囲の家族には、被相続人が亡くなった後の生活保障として遺留分を認める必要があると考えられます。

2-2 遺産の維持・形成に貢献したことに対する考慮

被相続人名義となっている財産のなかには、被相続人の才覚のみではなく、家族(配偶者・子・親)の貢献によって維持・形成された財産も含まれると考えられます。家族経営の事業を営んでいる場合などは、財産の維持・形成には家族の貢献は欠かせないでしょう。

そこで、財産の維持・形成に対する家族の貢献を考慮して遺留分を認める必要があると考えられます。

2-3 夫婦の共有財産の清算

夫婦の婚姻期間中に形成された財産は、名義が夫婦のどちらであるかにかかわらず、夫婦の協力により形成されたもの(夫婦の共有財産)とするのが基本的な考え方です。

夫婦のどちらかが亡くなった場合、通常は相続の手続を通じて夫婦の共有財産の清算が行われることになりますが、遺言の存在によりそれができなくなる場合のために、配偶者の貢献を考慮して遺留分を認める必要があると考えられます。

2-4 共同相続人間の公平確保

相続人となる子が複数いる場合、被相続人の遺言がなければ、子1人当たりの相続分は平等となるのが原則です(民法900条4号)。しかし、近年、子の一人に遺産を集中させる遺言が増えていたり、多額の生前贈与がされている場合が増えていると言われます。こういった場合の共同相続人間の公平を確保するために遺留分を認める必要があると考えられます。

3 遺留分の侵害が問題となる場合

被相続人の遺言や生前贈与により、相続人の相続できる遺産が遺留分に満たない状態である場合、遺留分の侵害といいます。

すべての相続で、遺留分の侵害が問題となるわけではありません。

次のいずれかがある場合、遺留分の侵害の可能性がありますので検討が必要となります。主として遺言がある場合と贈与がある場合に分けられます。

遺留分の侵害が問題となるのは、主として遺言がある場合と贈与がある場合に分けられます。
遺留分侵害が問題となる場合

3-1 遺言

遺贈

被相続人は、遺言により、他人に自分の遺産を与える処分行為をすることができます。これを遺贈といいます(民法964条)。

被相続人が、遺言により、第三者または相続人の一部に遺贈した場合には遺留分の侵害の可能性があります。

私の場合は、正に遺言によって相続人の遺留分が侵害されたケースなんですね。

相続分の指定

被相続人は、遺言により、法定相続分とは異なる相続分を指定することができます(民法902条)。

遺言により、他の相続人について法定相続分を上回る相続分が指定されている場合、自分について法定相続分を下回る相続分が指定されている場合には、遺留分の侵害の可能性があります。

特定財産承継遺言

被相続人は、遺言により、遺産分割方法の指定として、被相続人の特定の遺産を特定の相続人に相続させることを定めることができます(民法908条)。これを特定財産承継遺言といいます。

遺産総額に対し、特定財産承継遺言された遺産が多額である場合には遺留分の侵害の可能性があります。

信託

遺言により信託が設定された場合にも遺留分の侵害を検討する必要があります。

3-3 贈与

生前贈与

すべての生前贈与ではありませんが、一定の範囲の生前贈与は遺留分を算定するにあたって基礎とされる財産(基礎財産)に含まれます。したがって、生前贈与がある場合には遺留分の侵害の可能性があります。

なお、遺留分の算定に含まれる生前贈与とは次のようなものです。生前贈与が相続人にされる場合と相続人以外の第三者にされる場合とで、遺留分の算定に含まれる贈与の範囲が異なりますので注意が必要です。

相続人に対する贈与相続人外の第三者に対する贈与
・相続開始前1年間の贈与
・相続開始前10年間の特別受益
・遺留分の侵害を知ってした贈与
・相続開始前1年間の贈与
・遺留分の侵害を知ってした贈与
相続人に対する贈与の場合の遺留分計算の基礎財産に含まれる贈与
相続人に贈与した場合に
遺留分計算の基礎財産に含まれる贈与
相続人以外の第三者に対する贈与で遺留分計算の基礎財産に含まれる範囲
相続人以外の第三者に贈与した場合に
遺留分計算の基礎財産に含まれる贈与

死因贈与

死因贈与は贈与契約の一種ですが、贈与者の死亡によって効力が発生するものであり、遺贈と性質が類似していることから、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定が準用されます(民法554条)。

したがって、被相続人が、第三者または相続人の一部に死因贈与した場合には遺留分の侵害の可能性があります。

生命保険

被相続人が、生前保険料を支払っていた生命保険金の受取人に、相続人の1人が指定されている場合があります。

相続人の1人が被相続人の死亡によって取得する保険金請求権は、その相続人の固有の権利であり、被相続人から承継した財産とはいえないので、原則としては特別受益とはならないのが原則です。

しかし、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が到底是認することができないほどに著しいものである場合には、例外的に特別受益となる場合があります。

遺産分割とは異なり、遺留分の算定にあたっては、寄与分は考慮されませんので注意が必要です。

3 遺留分権利者は兄弟姉妹以外の相続人

3-1 兄弟姉妹以外の相続人

遺留分は、相続人に対し、被相続人の財産から取得できる最低限の取り分を保障するものです。したがって、遺留分は、相続人に対してのみ認められます。

この遺留分を認められる相続人を遺留分権利者といいます。しかし、すべての相続人が遺留分権利者となるわけではありません。

相続人になり得るのは、

  • 配偶者
  • 直系尊属
  • 兄弟姉妹

ですが(民法887~890条)、このうち兄弟姉妹は遺留分権利者ではありません(民法1042条1項)。
遺留分権利者は、兄弟姉妹以外の配偶者・子・直系尊属ということになります。

兄弟姉妹は、被相続人とは別に生計を維持しているのが通常ですので、生活保障のために遺留分を認める必要はないことが理由と考えられます。

ですので、兄弟姉妹が相続人である場合、被相続人の遺言や贈与により、兄弟姉妹が遺産を相続できないとしても、遺留分権利者ではないので、遺留分侵害額請求をすることはできません。

兄弟姉妹は遺留分権利者に含まれません。

私と姉は、被相続人の子だから、遺留分は認められるんですね。

3-2 相続欠格者、被廃除者、相続放棄者には認められない

遺留分は相続人であることを前提として認められるものですので(民法1042条1項)、被相続人の配偶者・子・直系尊属であったとしても、相続欠格(民法891条)、相続人廃除(民法892条)、相続放棄(民法938条)によって相続人の資格を失った場合には、遺留分は認められません。

3-3 代襲相続人には認められる

被相続人の子がすでに亡くなっていて、孫が子を代襲相続した場合、代襲相続人(孫)には、被代襲者(子)と同じ遺留分が認められます(民法1042条1項、901条、887条2項、3項)。

被相続人の子の相続欠格・相続人廃除により、孫が代襲相続した場合、上に述べたとおり、被代襲者(子)には遺留分は認められませんが、代襲相続人(孫)には遺留分が認められます。

一方、被相続人の子が相続放棄した場合、孫は代襲相続人にはなれませんから、遺留分も認められません。

4 遺留分の割合は2段階で決まる

4-1 総体的遺留分と個別的遺留分

遺留分が認められる相続人(遺留分権利者)が確定したとして、各遺留分権利者にはどれくらいの遺留分(遺留分の割合)が認められるのでしょうか。

遺留分権利者の遺留分の割合は、次の2段階で求められます。

  1. 被相続人の財産全体に対する遺留分の割合(総体的遺留分)を求める
  2. 総体的遺留分を各遺留分権利者に按分し、各遺留分権利者の遺留分の割合(個別的遺留分)を求める
①被相続人の財産全体に対する遺留分の割合(総体的遺留分)を求める ②総体的遺留分を各遺留分権利者に分配し、各遺留分権利者の遺留分の割合(個別的遺留分)を求める

まず、1段階目の総体的遺留分については次のとおりとなります。

  • 直系尊属のみが相続人の場合 被相続人の財産全体の1/3(民法1042条1項1号)
  • それ以外 被相続人の財産全体の1/2(民法1042条1項2号)

非常にシンプルです。相続人の構成は、

  • 配偶者がいるかいないか
  • 配偶者以外の相続人が子・直系尊属・兄弟姉妹のいずれか

によって、6パターンありますが(2×3=6)、このうち直系尊属のみが相続人の場合は、総体的遺留分が1/3となり、それ以外の5パターンの場合は1/2になるということです。
以上を表にまとめると次のとおりとなるでしょう。

直系尊属のみが相続人の場合の総体的遺留分は1/3です。
直系尊属のみが相続人かそれ以外かよる総体的遺留分の違い

私の場合は、母は亡くなっていて、子である兄・姉・私が相続人になる場合なので、総体的遺留分は、1/2ですね。

次に、2段階目の個別的遺留分については次のとおりとなります。

遺留分権利者が1人である場合 総体的遺留分のとおりとなる(民法1042条1項)
遺留分権利者が複数いる場合 各遺留分権利者の法定相続分に従い、総体的遺留分を各遺留分権利者に按分することにより算出する(民法1042条2項、900条、901条)

つまり、遺留分権利者が1人である場合は、個別的遺留分は1/2(直系尊属のみが相続人の場合は1/3)、遺留分権利者が複数いる場合は、個別的遺留分は法定相続分に従って公平に分けることになります。

遺留分権利者は兄・姉・私の3人ですから、法定相続分で総体的遺留分を分けるんですね。法定相続分は、1人1/3ですから、1人あたりの個別的遺留分は、1/2×1/3=1/6ですね。

具体的ケース(冒頭のケース)

冒頭のケースでは、「直系尊属のみが相続人の場合」に該当しませんから、父の財産全体に対する遺留分の割合(総体的遺留分)は1/2となります。

そして、兄・姉・妹(相談者)と「遺留分権利者が複数いる場合」ですから、各遺留分権利者の遺留分の割合(個別的遺留分)は、法定相続分に従い、総体的遺留分を按分することにより算出されます。

兄・姉・妹(相談者) の個別的遺留分は、1/6(1/2×1/3=1/6)となります。

冒頭のケースの具体的な解説です。

冒頭のケースでは、遺留分権利者は 兄・姉・妹(相談者) です。父の財産の大半(8/10)相続した兄も遺留分権利者であることに注意が必要です。兄は遺留分権利者ではありますが、自分の遺留分を侵害されていないというだけのことです。つまり、「だれが遺留分権利者か」という問題と、「だれの遺留分が侵害されているか」は別問題だということです。

4-2 遺留分の指定はできない

被相続人は、遺言では、相続分の指定はできますが(民法902条)、遺留分の指定は認められていません。

民法では遺言できる事項は規定されていますが(遺言事項)、遺留分の指定についての規定はありません。遺言に遺留分を指定する旨を定めても、その範囲で遺言は効力を発生しません。

実質的にも、遺留分は、被相続人の遺言や贈与によっても奪われない相続人の最低限の取り分ですから、被相続人の遺言によって左右されるべきではありません。

4-3 寄与分は考慮されない

遺留分権利者は、個別的遺留分を定めるにあたり、被相続人の財産の維持・増加に特別の貢献をしたこと(寄与分)を主張することができません。

遺産分割では、寄与分が認められれば取得する財産を増加させることができますが、遺留分ではそのようなことは認められていません。

5 相続人・遺留分権利者・遺留分の割合のパターン

これまでの説明を踏まえて、相続人・遺留分権利者・遺留分の割合のパターンを整理しておきましょう。

5-1 相続人:配偶者のみ

相続人が妻のみの場合、総体的遺留分は1/2になります。配偶者(妻)は遺留分権利者です。遺留分権利者は配偶者1人ですから、個別的遺留分も1/2となります。

相続人が直系尊属のみの場合の遺留分です。

5-2 相続人:子のみ

相続人が子のみの場合、総体的遺留分は1/2になります。子は遺留分権利者です。

下のケースでは、遺留分権利者は3人いますので、法定相続分に従い按分することになります。子は3人いますから、1/2の総体的遺留分を3人で分けて、1人あたり1/6(1/2×1/3=1/6)になります。

相続人が子のみの場合の遺留分

私のパターンはこれですね。

5-3 相続人:子と配偶者

相続人が子と配偶者(妻)の場合、総体的遺留分は1/2になります。子も配偶者(妻)も遺留分権利者です。

遺留分権利者が複数いますから、法定相続分に従い総体的遺留分を按分して個別的遺留分を求めます。具体的には、配偶者(妻)については、総体的遺留分1/2に法定相続分1/2を掛けて、具体的遺留分は1/4になります。子は3人いますから、法定相続分は1/2を3人で分けて1/6になります。総体的遺留分1/2に1/6を掛けて、子1人あたりの個別的遺留分は1/12になります。

相続人が子と配偶者の場合の遺留分

5-4 相続人:直系尊属のみ

相続人が直系尊属のみの場合、総体的遺留分は1/3になります。ここがほかの場合との決定的な違いです。直系尊属は遺留分権利者です。

下のケースでは、遺留分権利者は両親2人ですから、個別的遺留分は、総体的遺留分1/3を2人で分けて1/6となります。

相続人が直系尊属のみの場合の遺留分

5-5 相続人:直系尊属と配偶者

相続人が直系尊属と配偶者(妻)の場合、総体的遺留分は1/2になります。 直系尊属と配偶者(妻) は遺留分権利者です。

遺留分権利者が複数いますから、法定相続分に従い総体的遺留分を按分して個別的遺留分を求めます。具体的には、配偶者(妻)については、総体的遺留分1/2に法定相続分2/3を掛けて、具体的遺留分は1/3になります。直系尊属は両親2人がいますから、法定相続分は1/3を2人で分けて1/6になります。総体的遺留分1/2に1/6を掛けて、直系尊属1人あたりの個別的遺留分は1/12になります。

相続人が直系尊属と配偶者の場合の遺留分

5-6 相続人:兄弟姉妹のみ

相続人が兄弟姉妹のみの場合、そもそも兄弟姉妹には遺留分が認められていませんから、総体的遺留分は0になります。したがって、兄弟姉妹の個別的遺留分も0となります。

相続人が兄弟姉妹のみの場合の遺留分

5-7 相続人:兄弟姉妹と配偶者

相続人が兄弟姉妹と配偶者(妻)の場合、総体的遺留分は1/2になります。遺留分権利者は、配偶者(妻)のみです。 遺留分権利者は配偶者(妻)1人ですから、個別的遺留分も1/2となります。

相続人が兄弟姉妹のみの場合の遺留分

6 遺留分侵害額請求

6-1 遺留分侵害額請求権

被相続人の遺言や贈与により、取得できる遺産が遺留分に達しておらず、遺留分が侵害されている場合は、その差額分(遺留分侵害額)について、遺留分侵害額請求をすることができます。

遺留分侵害額請求をする相手方は、被相続人の遺言や贈与により遺産を取得した相続人や相続人以外の第三者(受贈者・受遺者)です。

遺留分侵害額請求の意思表示をすると、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求する権利が発生します。

平成30年民法改正前は、遺留分減殺請求と言われており、遺留分減殺の意思表示をすることにより、減殺の対象となる範囲で贈与・遺贈は効力がなくなり、遺留分権利者がその分の権利を取得することとされていました。
民法改正後は考え方が大きく改められ、遺留分の侵害があっても贈与・遺贈の効力は維持され、遺留分の侵害額相当の金銭の支払いを請求することができることになりました。用語もこれに合わせ、遺留分侵害額請求と改められました。

私の遺留分侵害額は、個別的遺留分から遺言で指定された相続分を差し引けばよいのですね。計算式はこうなりますね。
1/6-1/10=1/15

6-2 遺留分侵害額請求権の行使方法

遺留分侵害額請求権を行使をするにあたり、具体的な金額を示す必要はありません。遺留分を侵害されたため、その侵害額を請求することが意思表示されていれば足ります。

具体的な遺留分侵害額については、金額が確定してから改めて請求すればよいので、まずは遺留分侵害額請求の意思表示をする必要があります。

遺留分侵害額請求権の行使は、訴訟提起など裁判所の手続による必要はありません。口頭でも書面でもどのような方法でも、相手方に遺留分侵害額を請求することが伝わっていれば構いません。

ただし、相手方が「知らない」「聞いていない」などと言い張ることないように、内容証明郵便で通知して、確実に相手に送付しておくことが無難でしょう。

遺留分侵害額請求権の行使によって、初めて具体的な金額の遺留分侵害額の支払いを請求できる権利が発生すると考えられます。
この具体的な金額の遺留分侵害額の支払いを請求する権利は、通常の金銭債権と同じですから、民法の消滅時効に関する一般の規定に従います(民法166条1項)。

民法166条(債権等の消滅時効)
1 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
① 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
② 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

6-3 遺留分侵害額請求の時効

遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が、

  1. 相続の開始
  2. 遺留分を侵害する贈与又は遺贈

があったことをいずれも知った時から1年間行使しないと時効によって消滅しますから注意が必要です(民法1048条)。①相続の開始とは、相続人が死亡した時です(民法882条)。

遺留分侵害額請求権の時効については、次の記事に詳しく説明しています。

7 まとめ

今回は、遺留分の割合について説明しました。説明が長くなりましたが、主なポイントを説明すると次のとおりになります。

  • 遺留分とは、被相続人の財産のうち、相続人に取得することが最低限保障されている部分をいう。
  • 民法では、被相続人の財産処分の自由と相続人の期待のバランスを図るため遺留分制度を設けている。
  • 遺留分は、兄弟姉妹以外の配偶者・子・直系尊属に認められている。
  • 遺留分権利者の遺留分の割合は、次の2段階で求められる。まず、被相続人の財産全体に対する遺留分の割合(総体的遺留分)を求め、次に、総体的遺留分を各遺留分権利者に按分し、各遺留分権利者の遺留分の割合(個別的遺留分)を求める。
  • 総体的遺留分は、直系尊属のみが相続人の場合、被相続人の財産全体の1/3となる。それ以外の場合、被相続人の財産全体の1/2となる。
  • 個別的遺留分は、遺留分権利者が1人である場合、総体的遺留分のとおりとなる。遺留分権利者が複数いる場合、各遺留分権利者の法定相続分に従い、総体的遺留分を各遺留分権利者に按分することにより算出する。
  • 被相続人の遺言や贈与により、取得できる遺産が遺留分に達しておらず、遺留分が侵害されている場合は、その差額分(遺留分侵害額)について、遺留分侵害額請求をすることがでる。

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弁護士 佐々木康友
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