相続させる遺言の意味は~遺贈との違い

今回は「相続させる遺言」についてお話ししようと思います。

1 「相続させる遺言」とは

遺言書にこのように書いてあることがあります。

「本件土地はAに相続させる」

これを「相続させる遺言」と言っています。

普通に遺言書には出てきそうな文言ですね。

でも、実は、これが民法上どのような意味を持つかということについては争いがあります。特に、これが遺贈(民法964条)なのか、遺産分割方法の指定(民法908条)なのか。

遺贈であっても、遺産分割方法の指定であっても、遺言者が亡くなることによって、遺言の効力が発生することは同じです。つまり、遺言者が亡くなったら、本件土地はAの所有となります。その点では違いはありません。

でも、遺贈というのは、遺言者の意思表示による財産の処分です。つまり、遺言者が亡くなることを条件として、財産をだれかに譲渡するという意思表示なのです。

これに対して、相続というのは、被相続人、この場合は遺言者ですが、遺言者が亡くなることによって当然に始まるものなのです。遺言者がだれかに財産を処分するという意思表示は必要ありません。

ですので、遺言書で遺産分割方法を指定するというのは、遺言者の財産の処分というのとは意味が違っていて、遺言者が亡くなることによって、当然に相続は発生するんだけど、どの財産をだれに相続させるかについては、遺言者が決められるというものなのです。

この違いによって、不動産の登記ですとか、相続に派生する問題のところで違いが出てきます。ですので、「相続させる遺言」の意味をはっきりとさせておく必要があるのです。

2 最高裁判所の判断

最高裁判所では、「相続させる遺言」について次のように判断しました。

最判平成3年4月19日民集45巻4号477頁、判時1384号24頁

「特定の遺産を特定の相続人に「相続させる遺言」は、遺言書の記載からその趣旨が遺贈であることが明らかであるかまたは遺贈と解するべき特段の事情がない限り、当該遺産を当該相続人をして単独で相続させる遺産分割の方法が指定されたのと解すべきである」

「特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言があった場合には、当該遺言において相続による承継を当該相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、当該遺産は被相続人の死亡の時に直ちに相続により承継される」

つまり、「相続させる遺言」とは、遺産分割方法の指定になるということです。

そして、遺言者が亡くなると同時に、指定された遺産分割方法のとおりに、遺産が被相続人に相続されるということになります。

遺贈となるのは、遺言書、その時に遺言者の置かれていた状況などから、何か特別な事情がある場合に限られることになります。

これは、遺言書に、例えば「本件土地はAに相続させる」と書いてあったとすれば、当然に、遺言者は、Aに本件土地を単独で相続させたいという意思であったはずだという考え方があると思います。

3 具体的な違い

ところで、「相続させる遺言」であるか、遺贈であるかによってどのような違いが出てくるのでしょうか。ポイントは、「相続させる遺言」とは相続であること、遺贈は遺言者による財産処分であることです。

3-1 不動産登記申請手続

遺贈の場合は遺言者の意思による財産処分ですから、受遺者(遺贈される人)と相続人との共同申請となります。これに対し、「相続させる遺言」の場合は相続ですから、単独申請が可能です。

3-2 農地法上の許可

遺贈の場合は農地法上の許可が必要ですが、「相続させる遺言」の場合は不要です。

3-3 賃貸人の承諾

借地権・借家権の承継については、遺贈の場合は賃貸人の承諾が必要ですが、「相続させる遺言」の場合は不要です。

3-4 対抗要件の要否

不動産を取得した場合には、遺贈の場合は、登記をするなどの対抗要件の具備が必要ですが、「相続させる遺言」の場合は不要です。