退職金は財産分与の対象となるの?

設例

私は専業主婦ですが、夫と離婚しようと思っています。夫は3年後に定年退職します。今離婚したら、夫の退職金は財産分与の対象とはならないのですか。

今回は、退職金が財産分与の対象となるかについて説明します。

財産分与についての一般的なことについては、次の記事を参考にして下さい。

離婚時の財産分与とは~相続財産や車は共有財産となるか

また、退職金を含めて清算的財産分与については、次の記事で説明しています。

清算的財産分与の割合・対象は?

1 退職金は分与の対象となるのか

上の設例の場合、夫の退職金は離婚後に給付されます。将来発生する財産といえますね。そうすると、退職金は将来発生する財産だからということで、財産分与の対象にはならないものとも思えます。

しかし、例えば、もっと極端な場合で、夫の定年退職の一週間前に離婚したら、退職金は財産分与の対象とならないというのでは、どう考えても不公平な気がしますよね。

そもそも退職金って何かですが、退職金は、一般に給与の後払いの性格があるとされています。

就労期間中、毎月の給与の一部を将来の退職金のために会社に積み立てるイメージです。実際に、退職金制度のある会社では、退職給付引当金という勘定科目で、会計処理上の積み立てが行われています。

つまり、婚姻期間中の夫の給与の一部が退職金という名目で会社に積み立てられていると考えることができます。退職金も夫婦が婚姻中に協力して形成した財産(夫婦の共有財産)であるとして、財産分与の対象となり得ます。

ただし、退職金については、色々問題があります。

まず、退職金は将来給付されるものですから、会社の経営不振による減額、倒産、懲戒解雇などの様々な理由により、確実に給付を受けられるとは限りません。ですので、将来給付されるか不確実である退職金を離婚時にどのように算定すべきかという問題があります。

また、清算的財産分与の対象となるのは、あくまでも、夫婦が婚姻中に協力して形成した財産です。婚姻前に形成した財産、離婚後はもちろん、別居後に形成した財産も協力して形成したとは言えませんから、財産分与の対象とはなりません。

財産分与の対象とならない退職金
  • 婚姻前の就労に対する退職金
  • 別居後の就労に対する退職金

ですので、退職金のうち、財産分与の対象となるのは、夫婦が協力して婚姻生活を営んでいた期間に対応する退職金ということになりますが、離婚時にそれをどのように算定すべきかという問題もあります。

簡単に説明すれば、次の計算式で財産分与の対象となる退職金額が算定されます。

財産分与額=退職金額×夫婦の同居期間÷就労期間

2 過去の退職金

財産分与において問題となるのは、主に将来の退職金なのですが、離婚時(別居している場合は別居時)にすでに退職金が支払われている場合の取り扱いについても一応説明しておきましょう。

離婚時(別居している場合は別居時)にすでに退職金が支払われている場合は、支払われた退職金は、現金預金、不動産など様々な財産になっています。

ですので、財産分与時には、現在の財産を清算の対象とすることになります。

ただし、上に述べたとおり、婚姻前の就労に対応する退職金、別居後の就労に対応する退職金は夫婦の共有財産とは言えませんから、財産分与の対象とはなりません。

3 将来の退職金

上に述べたとおり、退職金は、一般に給与の後払いの性格がありますから、夫婦が協力して婚姻生活を営んでいた期間に対応する退職金については、将来に給付されるものであっても財産分与の対象となり得ます。

しかし、将来の退職金は、会社の経営不振による減額、倒産、懲戒解雇などの様々な理由により、確実に給付を受けられるとは限りません。また、事故や病気などにより、定年まで就業することができず、退職金が満額給付されないこともあり得ます。

将来、退職金が給付される確実性が高い場合は良いのですが、そうでない場合まで将来の退職金を財産分与の対象としてしまうと、現実に退職金が給付されなかった場合、不公平な結果となってしまいます。

そこで、実務では、退職金を財産分与の対象とするか、対象とするとしてどの程度の金額とするのかについて様々な要素を考慮して判断しています。

3-1 一切の事情を考慮する場合

将来いくら退職金が給付されるか確実でない場合もあります。こういった場合は、将来の退職金を財産分与の対象とすることは困難と思われます。

しかし、相手方配偶者の老後の生活保障を考えると、一定の財産分与を確保することが必要な場合があります。

そういった場合は、相手方配偶者の老後の生活保障を含めた一切の事情を考慮の上、将来の退職金給付が確実でなかったとしても、扶養的財産分与として、金銭その他の財産上の利益の付与が命じられる場合があります。

例えば、夫の定年まで15年以上ある場合に、退職金の給付の確実性はないとしながらも、妻の監護する長女が高校を卒業するまでの期間、夫名義のマンションを賃貸するように命じた事例があります。

3-2 離婚時に清算する場合

将来退職金が給付される確実性が高い場合は、夫婦が協力して婚姻生活を営んでいた期間に対応する退職金を算定することができます。

まず、仮に別居時に退職した場合、会社の退職金規程に基づいて、いくら退職金が給付されるかを算定します(これをAとします。)。次に、婚姻前から就労していた場合は、仮に婚姻時に退職したとすると、いくら退職金が給付されるかを算定します(これをBとします。)。

そうすると、A-Bによって、夫婦が協力して婚姻生活を営んでいた期間(婚姻後、別居するまでの期間)に対応する退職金を算定することができます。

A 仮に別居時に退職した場合、会社の退職金規程に基づいて給付される退職金

B 仮に婚姻時に退職した場合、会社の退職金規程に基づいて給付される退職金

そうだとしても、将来の退職時に支払われる退職金を離婚時にまとめて支払うこととなると、かなり高額になる場合があります。離婚時にまとめて支払うことが困難なこともあります。

ですので、離婚時にまとめて支払う合意をする場合は、将来の退職金の給付額を現在の価値に引き直すといくらになるかを算定するなどして、金額を低く抑える傾向にあります。

3-3 将来の退職金の給付時を支払時期とする場合

離婚時に退職金をまとめて支払うことが困難な場合もあります。その場合、将来、現実に退職金が支払われた時に、夫婦が協力して婚姻生活を営んでいた期間に対応する退職金を支払うとい命じられる場合があります。

実務では、将来、現実に退職金が支払われた際に、離婚時に退職したと仮定した場合の退職金を相手方配偶者に支払うことを命じることが多いです。