退職(辞職)の自由はあるのか~いつまでに会社に意思を伝えるか

前回の記事のなかで、内定辞退について触れました。最近、会社を辞めたいのに辞められないということで、退職代行を行う会社が注目を集めています。

そこで、今回は、退職(辞職)の自由についてお話をします。

1 会社を辞めるということ

まず、会社を辞めるのにはどのような場合があるのでしょうか。

1-1 合意解約

会社と労働者の合意により労働契約を終了せることです。

そもそも、労働契約は、会社と労働者との自由な意思に基づく合意により成立するものですので、合意により労働契約を終了させることも自由と言えます。

1-2 解雇

会社が一方的に労働契約を解約する場合、これを「解雇」といいます。

会社が解雇する場合は、客観的に合理的で社会通念上相当と認められる理由がなければ、無効とされます(労働契約法16条)。

1-3 辞職

反対に、労働者が一方的に労働契約を解約する場合、これを「辞職」といいます。

「退職」という言葉も使いますが、定年「退職」という用語もあるように、会社との労働契約が終了するという広い意味で用いられることが多いです。ここでは、労働者が一方的に労働契約を解約する場合として、「辞職」という言葉を用います。

2 合意解約の申込みか辞職か

労働者が会社を辞めようと思う際、会社に対し、「退職届」、「退職願」、「辞表」、「辞職届」、「辞職願」など様々なタイトルで書面を提出すると思います。

この場合、合意解約の申込みなのか、辞職の意思表示なのかが問題となります。

なぜなら、合意解約の申込みであれば、会社の承諾があるまで、撤回できますが(最判昭和62年9月18日)、辞職の意思表示の場合は、会社に書面が到達した時点で撤回することができなくなるからです。

「退職届」、「辞表」は辞任の意思表示、「退職願」は合意解約の申込みと言われることもありますが、労働者がそれらの言葉の違いを認識していたとは限らず、最終的には、書面提出の前後の会社と労働者のやり取りなどを踏まえて判断するしかありません。

ただ、合意解約に比べ、辞職の方が撤回できなくなる時点が早くなり、そういう意味では労働者に不利となりますので、裁判では、辞職の意思表示であることが明らかでない限りは、合意解約の申込みと考えているようです。

3 辞職は自由であること

「会社から退職しないように強要された。」「今やめると損害賠償請求すると言われた。」会社からこのように言われてしまい、「会社は簡単には辞められない」と考えてしまう方もいるようです。では、本当に会社は簡単には辞められないのでしょうか。

2-1 期間の定めのない労働契約の場合

期間の定めのない労働契約の場合は、2週間前に申入れをすればいつでも辞職することができます。

民法627条1項

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申し入れの日から2週間を経過することによって終了する。

なお、現行法上は、期間によって報酬が定められている場合、辞職の申入れは時期以降についてすることができ、その申入れは、期間の前半に行わなければなりません(民法627条2項)。月給制の場合は、7月1日に辞職したければ、6月15日までに申入れをする必要があります。

しかし、民法改正により、2020年4月1日からは、労働者は、、期間によって報酬が定められている場合であっても、2週間前に申入れをすればいつでも辞職することができるようになります。

なお、会社の就業規則で、辞職の予告期間が2週間を超えて設定されている場合もありますが、民法627条1項は、労働者の不当に長期間の拘束を防ぐために設けられた規定ですから、2週間を超える予告期間の規定は無効と考えるべきでしょう。

2-2 期間の定めのある労働契約の場合

期間の定めのない場合と異なり、期間の定めのある労働契約の場合、その期間に拘束されるため、労働者であっても、やむを得ない事由がない限りは辞職することができません。

民法628条

当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

しかし、このようにすると、極端な話として、例えば30年間の期間の定めのある労働契約を締結して、実質的には期間の定めのない労働契約なのに、やむを得ない場合しか辞職できないということにもなりかねません。そうすると、2週間前に申込みをすれば、いつでも辞職することができるとした民法627条1項の意味がなくなってしまいます。

そこで、期間の定めのある労働契約は、原則として上限は3年とされています。

労働基準法14条1項

労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、三年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつては、五年)を超える期間について締結してはならない。
一 専門的な知識、技術又は経験(以下この号及び第四十一条の二第一項第一号において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約
二 満六十歳以上の労働者との間に締結される労働契約(前号に掲げる労働契約を除く。)

3 会社が辞めさせてくれない場合

以上の規定にもかかわらず、「辞めたら損害賠償するぞ」などと言って、会社が辞めさせてくれない場合がありますが、引き継ぎを拒否したなどの特段の事情でもない限り、法律の規定に従って辞職したのであれば、損害賠償請求が認められることはありません。

4 まとめ

以上、退職(辞職)は自由にできるのかについてお話しました。

ポイントをまとめると、

  • 会社を辞める場合は、合意解約、解雇、辞職がある。
  • 期間の定めのない労働契約の場合、2週間前に申込みをすれば、いつでも辞職できる。
  • 期間の定めのある労働契約の場合、やむを得ない事情がないと辞職できないが、労働契約期間は原則3年以内に制限される。
  • 会社を辞めようとすると、会社が損害賠償すると脅してくることがあるが、法律の規定に従って辞職すれば損害賠償請求が認められることはない。