相続放棄は3カ月以内に

前回の記事の終わりの方で少し相続放棄についてお話しました。

相続放棄は、実務上はよく行われています。年々、件数は増えていて、平成28年は約20万件だそうです。

相続放棄を知らないまま、被相続人のすべての遺産を相続してしまうと、後々取り返しのつかないことになる可能性もあります。

そこで、今までとは少し話は逸れるかもしれませんが、ここで簡単に説明しておこうと思います。

相続放棄の目的

以前の記事でも説明しましたが、相続人は、被相続人が亡くなった時に、被相続人のすべての財産を承継するのが原則です。

でも、相続するのは、亡くなった方のプラスの財産だけではなく、マイナスの財産も含まれるんでしたよね。

仮に、被相続人にプラスの財産がほとんどなく、マイナスの財産ばかりで、トータルでは大きくマイナスになってしまう場合、どうでしょうか。相続人は、当然に相続を拒否したいと考えるはずです。

相続人というだけで、被相続人が、相続人の知らないところで増やした債務を強制的に承継させられるのは理不尽ですよね。ですから、拒否したいと考えるのは、ごく当たり前のことだと思います。

そこで、民法でも、相続人が相続を拒否したい場合は、相続人の地位から離脱する自由を認めています。

これを相続放棄といっています。

相続放棄の方法

それでは相続放棄の方法について説明します。

3カ月の熟慮期間

相続放棄は、相続が開始されたことを知った時から、3カ月以内に行うこととされています。この3カ月間は一般に熟慮期間と言われています。

相続が開始されるのは、原則的に被相続人が亡くなった時です。ですので、相続放棄は、被相続人が亡くなったことを知った時から、3カ月以内に行う必要があります。

なぜ、3カ月という比較的短い期間が設定されているかというと、長期間、相続人が確定しない状態が継続すると、例えば、被相続人にお金を貸していた人が、被相続人の死後、誰に返済を求めればわからないなど、社会的にも不都合が生じるからです。

相続放棄の方法

相続放棄は、家庭裁判所に相続放棄申述申立書を提出して受理されれば成立します。

申立書の提出後、正式の受理の前に、熟慮期間内に申立てが行われているかなどの形式的審査と、相続放棄をする旨の申述が真意に基づいて行われているかの確認を受けます。

したがって、申立書の提出後、直ちに受理とはならないことが多いのですが、3カ月以内に申立書を提出しさえすれば、期間の条件を満たしたことになります。つまり、相続放棄を3カ月以内に行うとは、3カ月以内に申立書を提出するということです。

相続放棄の理由は不要

相続放棄に理由は問われません。

一応、申立書の書式には、放棄の理由について記載する欄が設けられていますが、これは相続放棄の審査の項目ではなく、相続放棄をする旨の申述が真意に基づいて行われているかの確認の際に参考にされるものと考えて下さい。

なお、なぜ相続放棄をする旨の申述が真意に基づいて行われているか確認するのかというと、家の跡取りが、他の相続人に対して相続放棄を強要するなど、自由な意思に基づいて相続放棄をしたとは言えない場合が考えられるからです。

熟慮期間を過ぎてしまった場合

3カ月の熟慮期間を過ぎてしまった場合、もう一切相続放棄をすることはできないのでしょうか。例外は認められないのでしょうか。

相続放棄できないのにやむを得ない事情があったにもかかわらず、一切例外を認めないというのはあまりに酷というものです。

そこで、相続人が、遺産が全くないと信じていて、なおかつ相続人が遺産があるかどうかを調査することを期待するのが著しく困難な事情があって、相続人が遺産がないと信じるのに相当の理由がある場合は、相続人が遺産の存在を知ったときから3カ月を熟慮期間とするとの最高裁判所の裁判例があります。

ただ、「著しく困難」とあるように、上記の裁判例に当てはまるのは、かなりまれなケースに限られると思います。

被相続人が亡くなると、お葬式、初七日、四十九日など法要が続き、あっという間に時間が経過してしまいます。気づいた時には、熟慮期間経過が目の前ということも多いようです。

やはり、被相続人の亡くなった後、速やかに遺産の調査を行い、3カ月の熟慮機関内に相続放棄をすることをお勧めします。

なお、どうしても3カ月以内に調査が終わらない場合は、家庭裁判所に期間の伸長を求めることもできます。

相続放棄の効果

相続放棄が家庭裁判所に受理されると、相続放棄をした相続人は、はじめから相続人ではなかったことになります。

そうすると、他の相続人の相続する遺産が増えたり、それまで相続人ではなかった人が新たに相続人になったりします。

では、誰が相続人になるのか、相続人はそれぞれどれくらいの遺産を相続するのかについては、次回以降説明していきます。