「遺言は、いつかは書いた方がいいのかもしれないな。」
そう思いながらも、
今日すぐに必要な気がしなくて、先に延ばしている方は多いです。
急いで書くものではない気もする。
でも、何もしないままでよいのかとも思える。
その揺れは、自然なものです。
「まだ大丈夫」と感じるのには理由があります
遺言は、
病気や事故があってから考えるものだと思っている。
家族は仲が悪いわけではない。
大きな財産もない。
そう感じると、
「今はまだ早い」と思いやすくなります。
一方で、
ふとしたときに引っかかることもあります。
たとえば、
家族の顔ぶれや、財産の形を思い浮かべたときです。
迷いが消えないときは、「心配の正体」を一度だけ言葉にしてみてください
遺言を考えるとき、
気持ちが落ち着かない原因は、だいたい次のどれかです。
「誰が困りそうか」
「何でもめそうか」
「誰が話をまとめることになりそうか」
この3つです。
ここでは、
この3つを順番に考えてみます。
① 亡くなったあと、手続きをする人は誰になりそうですか
遺言がない場合、
相続の手続きは、相続人みんなの話し合いで進みます。
そのとき、
中心になって動く人が必要になります。
たとえば、
次のような人が中心になりがちです。
- 亡くなった方と同居していた人
- 近くに住んでいて動きやすい人
- ふだんから連絡役になっている人
この「中心になる人」に偏りがあると、
手続きの進め方や情報の出し方で、行き違いが起きることがあります。
「自分が中心になるのは難しい」
「中心になりそうな人と、あまり話せていない」
こう感じるなら、
遺言を考え始めてもよいサインです。
② 財産の中に「分け方が難しいもの」はありますか
預金だけなら、
金額を分ける話になりやすいです。
しかし、財産の形によっては、
話が止まりやすくなります。
たとえば不動産です。
自宅や土地が財産の中心だと、
「誰が住み続けるのか」
「売るのか」
「名義をどうするのか」
といった話が出ます。
不動産があると、
分け方の選択肢が少なくなりがちです。
「住む人」と「住まない人」で、見方が分かれることもあります。
ほかにも、
事業をしていて道具や取引先がある場合などは、
「誰が引き継ぐか」で話が難しくなりやすいです。
③ 家族の中に「受け取り方が変わりやすい事情」はありますか
同じ内容でも、
受け取り方が大きく分かれやすい事情があります。
たとえば、再婚や前婚の子がいる場合です。
本人にとっては自然な家族の形でも、
相続の場面では、感じ方がずれることがあります。
また、
生前に特定の人が長く介護していたり、
援助を受けていたりする場合もそうです。
「そこをどう見るか」で、話が止まりやすくなります。
ここで大切なのは、
誰が正しいかを決めることではありません。
亡くなったあとに、
その話を相続人同士で初めてすることが負担になる、という点です。
この段階で遺言を考え始めてよい「境目」
遺言を書くかどうかは、
早いか遅いかで決まるものではありません。
次のどれかに当てはまるなら、
遺言について一度考え始めてもよいと思います。
- 亡くなったあと、中心になって動く人がはっきりしない
- 不動産など、分け方が難しい財産がある
- 家族の中に、受け取り方が分かれやすい事情がある
- 「何となく不安」が、具体的な場面として想像できる
「今すぐ書く」と決める必要はありません。
ただ、
ここから先の情報を読んでよい段階には入っています。
次に読むページ
遺言を考えるときは、
いきなり細かい制度から入るより、
まず「どの場面で困りやすいか」を知る方がスムーズです。
▶︎ 遺言書を作成すべきか迷っている段階で考えるべきこと
―「まだ早いのでは」と感じている方へ―
また、遺言を書いたあとでも、
内容によっては相続が揉めることがあります。
その分かれ目を知りたい方は、次の記事も参考になります。
▶︎ 「遺言があるのに揉める相続」は、どこで分かれ目が生じるのか
―実務で見えてくる判断のポイント―