「長男にすべて相続させる内容の遺言が見つかった。」
「生前に特定の相続人だけが多額の援助を受けていた。」
このような不公平を目の当たりにし、
話合いをしたが相手が応じない……。
こうした絶対的な不利な状況から、
法律が認める最低限の取り分を取り戻すための手続きが
「遺留分侵害額請求」
です。
もっとも、
調停は単に申し立てれば解決するものではありません。
さいたま市・浦和エリアで業務を行う弁護士が、
「実務の肌感覚」に基づき、
損をしないための戦略を徹底解説します。
- 遺留分は「お金」で解決するのが大原則です。
不動産そのものを取り戻す手続きではありません。 - 遺留分侵害額請求の「1年」の時効は絶対的です。
相続を知ってから1年以内に請求しなければ権利は消滅します。 - 調停の勝敗は客観的な資料で決まります。
感情的な訴えよりも、通帳や不動産評価資料が重要です。 - 実務上の3つの壁(範囲・評価・贈与)を先回りして準備することが、
有利な解決への近道です。
遺留分侵害額請求調停の本質:なぜ「お金」の話になるのか
遺留分とは、
配偶者、子、直系尊属などの近親相続人に
法律上保障されている最低限の取り分です。
兄弟姉妹には遺留分は認められません。

改正前の民法では、
遺留分を侵害された場合に
不動産の持分そのものを返すよう求めることができましたが、
現在は金銭(侵害額)の支払いを求める制度に
一本化されました。
これは実務上、
非常に大きな意味を持ちます。
例えば、
相手方が被相続人と同居していた自宅を相続した場合、
「家の名義を分けてくれ」
と主張しても認められず、
「その家の価値を計算し、不足分を現金で支払え」
という話し合いになるのです。
このため、
調停では「不動産をいくらと評価するか」
が最大の争点となります。
【時効にさせない】調停申立て前に絶対にやるべき「2つの鉄則」
遺留分には
「相続開始及び侵害を知った時から1年」
以内に請求しないといけない
という極めて短い期限があります。
「親族間だからまずは話し合いたい」
「資料が揃ってから」
という迷いは、致命的なミスに繋がりかねません。
① 内容証明郵便による「意思表示」
調停を申し立てる前に、
まずは内容証明郵便で遺留分を請求する旨を通知し、
時効の制限にかからないようにすることが実務上の絶対条件です。
この段階で正確な金額を算出する必要はありません。
「遺留分を請求する」
という意思を明確に示すことが最優先です。
②「漏れのない資料収集」
さいたま市内の物件であれば、
さいたま市役所の市税事務所で
「名寄帳」
を取得し、被相続人名義の不動産を漏れなく洗い出します。
また、埼玉りそな銀行、武蔵野銀行、埼玉縣信用金庫
といった地元金融機関での取引履歴調査においては、
亡くなる直前の「不自然な引き出し(使途不明金)」
がないかを徹底的に調査します。
こうした地道な調査こそが、
調停委員を納得させるための強力な武器となります。
調停で必ず直面する「3つの壁」とその突破口
遺留分侵害額請求調停が長引く原因のほとんどは、
以下の3つのポイントに集約されます。
第1の壁:遺産の範囲(名義預金と使途不明金)
「亡くなった父名義ではないが、実質的には父の資金だった預金(名義預金)」や、
同居していた相続人が無断で引き出した疑いのある「使途不明金」の扱いです。
これらは単に「怪しい」と言うだけでは認められません。
過去数年分の通帳履歴、引き出し伝票の筆跡、当時の生活状況などを突き合わせ、
客観的な矛盾点を突く必要があります。
第2の壁:不動産の評価額
不動産を
「固定資産評価額」
「路線価」
「実勢価格(査定額)」
のいずれで評価するのか。
評価額が変われば、
支払われる金額も数百万円、
時には数千万円単位で変わります。
単なる数字の羅列ではなく、
不動産鑑定士などとも連携しながら、
「なぜこの土地はこの評価になるべきなのか」
を、調停委員にも分かりやすく論理的に提示する必要があります。
第3の壁:生前贈与(特別受益)の認定
遺留分の計算では、
相続人に対する「相続開始前10年以内」の贈与が対象となるのが原則です。
通常の遺産分割とは異なり期限があるので注意しましょう。
住宅購入資金の援助、結婚費用、事業資金の立て替えなど、
相手方が生前に受け取っていた財産をどこまで算入できるかが鍵です。
「遺産分割」と「遺留分」では、
特別受益の計算方法や期間制限が異なるため、
実務上の深い知識が求められます。
ここで計算を間違えると、
最終的な回収額に大きな差が出てしまいます。
【実務の肌感覚】調停委員に適切に理解してもらうためのポイント
調停委員は裁判所の職員ではなく、
民間から任命された一般の方です。
遺産分割関係では、弁護士や税理士が調停委員になることが多いです。
調停委員は、
裁判官とともに調停委員会を構成し、
当事者双話を聞き、
中立的な立場で問題の解決をサポートする役割を担います。
調停に毎回出席するのは調停委員で、
裁判官は協議が必要な場合などに出席するだけです。
ポイントは調停委員との関係です。
彼らにこちらの主張の正当性を客観的な事実に基づいて適切に理解してもらうことが、
手続きをスムーズに進め、
納得のいく解決へ導くための重要なポイントです。
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 感情と法律を切り分ける | 悔しい気持ちは尊重しつつも、書面では「証拠に基づく法的整理」を整然と提示する。 |
| 調停委員の「腑に落ちる」説明 | なぜこの生前贈与があったと言えるのか、なぜこの不動産評価が正当なのかを、資料と共に丁寧に説明する。 |
| 「落としどころ」を見据える | 相手が即金で払えない場合、分割払いの条件や、不動産売却を前提とした解決案をこちらから提示する。 |
さいたま家庭裁判所(浦和)での手続きの流れ
さいたま市にお住まいの方は、
さいたま家庭裁判所(浦和区高砂)が管轄になることも多いでしょう。
申立書、戸籍類(被相続人の出生から死亡まで全て)、不動産資料、通帳コピー等を提出します。
申立てから約1〜1.5ヶ月後に期日指定されます。
調停委員が双方の言い分を聞き、争点を整理します。
1〜2ヶ月に1回のペースで進みます。
資料の追加提出や評価の擦り合わせを行います。
合意できれば「調停調書」が作成されます(判決と同じ効力)。
不成立の場合は訴訟へ移行します。
よくある質問(FAQ)
- 相手が「一円も払わない」と言っていますが、調停の意味はありますか?
-
あります。
調停は裁判所の公的な手続きです。
相手が話し合いを拒んでも、
法的なテーブルに着かせ、客観的な資料を出させる効果があります。調停前は強硬な態度でも、調停であれば渋々でも話し合いに応じることも多いです。
また、いずれは訴訟を提起するとしても、
まずは調停を申し立てる必要があります(調停前置)。 - 亡くなった父が多額の借金も残していた場合はどうなりますか?
-
遺留分の計算では、
プラスの財産から債務(借金)を差し引きます。債務の種類や金額によって計算が複雑になるため、
慎重な検討が必要です。 - 調停委員が相手の肩を持っている気がして不安です。
-
調停委員は中立ですが、
説明が不十分だと誤解が生じることもあります。証拠に基づいた説得力のある主張を展開することで、
状況を改善できる可能性があります。
浦和駅徒歩8分。地元の弁護士だからできる「伴走型」の解決
遺留分の問題は、
単なる数字の計算ではなく、
長年の家族関係や「不公平感」といった感情が複雑に絡み合っています。
相手方にどのように請求を切り出すべきか、
時効まで時間がない中どう動くべきか。
一人で悩まずに、
まずは状況を整理するところから始めませんか。
建築と行政の実務を知る弁護士として、
「話が早い」「現場がわかる」という安心感を持って、あなたの権利を守ります。
初回のご相談から、丁寧にお話を伺います。
- 法律相談料:遺⾔・相続については初回60分無料、以降30分 5,500円(税込)
- アクセス:JR浦和駅⻄⼝徒歩8分(さいたま地⽅・家庭裁判所⾄近)
