「遺言書に「長男にすべて相続させる」と書かれていた。」
「親の生前に、兄弟の一人だけが多額の援助を受けていた。」
あるいは、反対に、
「遺言で財産を受け取ったところ、他の相続人から遺留分侵害額請求の内容証明が届いた。」
遺留分については、このように
「請求する側」と「請求された側」
の双方からご相談を受けます。
どちらの立場でも、
すぐに感情的に反論したり、
急いで金額を決めたりしてはいけません。
まず確認すべきことは、
- 自分に遺留分があるのか
- 相手に遺留分があるのか
- 遺産や生前贈与をどこまで含めるのか
- 時効にかかっていないのか
- 不動産をいくらで評価するのか
という点です。
この記事では、
さいたま市・浦和周辺などで遺留分の問題にお悩みの方に向けて、
請求する側・請求された側のそれぞれについて、
最初に確認すべきことと、今後の進め方を弁護士が説明します。
- 遺留分は、一定の相続人に保障されている最低限の取り分です。
- 請求する側は、相続人・遺言・財産・生前贈与・時効を順番に確認する必要があります。
- 請求された側も、請求額どおりにすぐ支払う必要があるとは限りません。
- 不動産がある遺留分では、評価額と支払方法で揉めやすくなります。
- 資料がすべてそろっていない段階でも、早めに相談することで、確認すべき資料と今後の進め方を整理できます。
遺留分の問題で最初に確認すべきこと
遺留分の問題では、最初から「いくら請求できるか」「いくら払えばよいか」だけを考えると、判断を誤りやすくなります。
まずは、自分が請求する側なのか、請求された側なのかを整理し、そのうえで、遺留分の有無、時効、財産の範囲、生前贈与、不動産評価、支払方法を順番に確認する必要があります。
下の図は、遺留分の問題で最初に確認すべきポイントを、
請求する側・請求された側に分けて整理したものです。

遺留分とは|遺言や生前贈与でも奪えない最低限の取り分
遺留分とは、一定の相続人に保障された最低限の取り分です。
亡くなった方は、遺言によって、
自分の財産を誰にどのように残すかを決めることができます。
しかし、
遺言の内容が、特定の相続人にすべての財産を渡すものだった場合、
他の相続人の生活や期待が大きく害されることがあります。
そこで、民法は、
配偶者、子、直系尊属など一定の相続人に対して、
最低限の取り分を保障しています。
これが遺留分です。
たとえば、
父が「長男に全財産を相続させる」という遺言を残して亡くなった場合でも、
他の子どもに遺留分があれば、
長男に対して遺留分侵害額請求権を行使できる場合があります。
ただし、相続人であれば誰でも遺留分を請求できるわけではありません。
兄弟姉妹には遺留分がありません。
また、遺留分の割合は、相続人の組み合わせによって変わります。
そのため、遺留分の相談では、まず
「自分に遺留分があるのか」「相手に遺留分があるのか」
を確認することが出発点になります。
「遺留分を請求する側」が最初に確認すべきこと
遺留分を請求する側は、
いきなり相手に内容証明を送る前に、
請求できる根拠と金額の見通しを検討する必要があります。
相談では、
「兄が全部相続したのは納得できない」
「姉だけが親から多額の援助を受けていた」
「自分だけ相続から外された」
という不満が強く出ることがあります。
その感覚自体は自然なものです。
しかし、遺留分は、単に
「不公平だから請求できる」というものではありません。
請求する側が最初に確認すべきことは、次のとおりです。
- 自分は遺留分がある相続人か
- 遺言書の内容はどうなっているか
- 相続財産の内容は
- 生前贈与があるか
- 遺留分侵害額請求の期限を過ぎていないか
- 不動産をどのように評価するか
- 相手方が支払える財産を持っているか
特に、遺産に不動産がある場合や、生前贈与が疑われる場合には、
金額の見通しがすぐには立たないことがあります。
登記情報、固定資産税の通知書、預貯金の取引履歴、贈与契約書、住宅取得資金の援助資料
などを確認しながら、
請求の根拠を考えていく必要があります。
相手方に対する不信感が強い場合でも、
最初から強い言葉で問い詰めると、
資料の開示や金額交渉がかえって難しくなることがあります。
実務では、まずは
遺言書、登記情報、固定資産税の通知書、預貯金の取引履歴など、
こちら側で取得・確認できる資料を整理しておくことが重要です。
そのうえで、
「どの財産が分かっているのか」
「どの財産が不明なのか」
「どの贈与を問題にしたいのか」を分けて伝える方が、
交渉でも調停でも話が通りやすくなります。
「遺留分を請求された側」が最初に確認すべきこと
反対に遺留分侵害額請求を受けた場合でも、
請求額どおりにすぐ支払う必要があるとは限りません。
内容証明が届くと、多くの方は驚きます。
弁護士名で書面が届いた場合、
「すぐに支払わなければならないのではないか」
「放置すると裁判になるのではないか」
と不安になることもあります。
しかし、請求された側にも確認すべき点があります。
請求された側が最初に確認すべきことは、次のとおりです。
- 請求者に遺留分があるか
- 時効にかかっていないか
- 財産の範囲に誤りがないか
- 生前贈与の扱いが正しいか
- 不動産評価が高すぎないか
- 請求者がすでに受け取った財産が考慮されているか
- 一括払いが難しい場合に分割払いなどを交渉できるか
実務上よくあるのは、次のような不満です。
「親の面倒を見てきたのは自分なのに、なぜ他の兄弟に支払わなければならないのか」
このような事情は、感情的には非常に理解できます。
ただし、遺留分の場面では、
介護や同居の負担が、そのまま当然に支払額を減らす理由になるとは限りません。
法律上反論しやすい事情と、
交渉上考慮してもらうべき事情を分けて考える必要があります。
また、実家や土地を相続したものの、
手元に現金が少ない場合もあります。
この場合は、
不動産評価額を争うだけでなく、
支払時期、分割払い、担保、売却可能性なども含めて、現実的な解決方法を検討します。
遺留分の請求には期限がある|時効を過ぎる前に確認すべきこと
遺留分では、請求できるかどうかだけでなく、
いつまでに請求するかが非常に重要です。
遺留分侵害額請求権には
1年という非常に短い期限(時効)があります。
遺言書の存在や、
自分の遺留分が侵害されていることを知ってから時間が経っている場合には、
時効の問題を必ず確認する必要があります。
相談の現場では、
「遺言があることは前から聞いていたが、詳しい内容は最近知った」
「相続があったことは知っていたが、生前贈与があったことは後から分かった」
「兄が財産を全部取得したことを、登記を見て初めて知った」
というケースがあります。
このような場合、
- いつ知ったのか
- 何を知ったのか
- 遺留分侵害を認識できる状態だったのか
が問題になります。
時効が近い可能性がある場合は、
内容証明郵便で遺留分侵害額請求の意思表示をすることを検討します。
遺留分侵害額請求では、具体的な請求額を提示することまでは必要ありません。
しかし、内容証明を送る前にも、
相手方、遺言の内容、請求の対象、今後の交渉方針を整理しておくことが望ましいです。
時効が気になる場合には、
財産調査が完全に終わっていなくても、
早めに相談して、まず何をすべきかを確認することをお勧めします。
遺留分の金額はどう計算するか|遺産・贈与・既にもらった財産を整理する
遺留分の金額は、
単純に「遺産総額に割合をかければ終わり」というものではありません。
実際には、
- 遺産に何を含めるか
- 生前贈与をどこまで含めるか
- 債務をどう扱うか
- 請求する人がすでにもらった財産をどう差し引くか
- 不動産をいくらで評価するか
が問題になります。
遺留分の計算は、
大きく次の3段階で整理すると分かりやすくなります。
遺産、一定の生前贈与、債務を確認します。
預金だけでなく、
不動産、株式、保険、貸付金、贈与の有無を確認します。
誰が相続人か、個別的遺留分はいくらかを確認します。
兄弟姉妹には遺留分がないため、
相続人の組み合わせを最初に確認します。
請求者が既にもらった分を差し引き、
実際に請求できる金額(遺留分侵害額)を整理します。
請求者が生前贈与や遺贈を受けている場合、
請求額に影響することがあります。

この計算過程で、
- 相手方が開示した財産一覧をそのまま前提にしてよいか
- 固定資産評価額でよいか
- 実勢価格を考慮すべきか
- 生前贈与をどこまで主張できるか
などが問題になります。
そのため、遺留分の金額を検討するときは、
法律上の計算式だけでなく、
手元にある資料からどこまで証明できるかを確認する必要があります。
遺産に不動産があると、遺留分の評価額と支払方法で揉めやすい
遺産に不動産があると、
遺留分の評価額と支払方法が大きな争点になりやすいです。
預貯金だけの相続であれば、金額は比較的確認しやすいです。
しかし、
実家の土地建物、賃貸物件、駐車場、借地権、底地などが含まれると、
遺留分の計算は一気に難しくなります。
さいたま市・浦和周辺でも、
長男が実家の土地建物を一人の相続人が取得し、
他の相続人から遺留分を請求されるケースがあり得ます。
- 浦和駅や大宮駅周辺の土地
- 住宅地の一戸建て
- 区画整理地
- 古い借地関係が残る土地
などでは、固定資産評価額と実際の売却可能額に差が出ることもあります。
不動産がある場合に問題になりやすいのは、次の点です。
- 固定資産評価額、相続税評価額、実勢価格のどれを参考にするか
- 不動産鑑定を行う必要があるか
- 借地権や底地をどう評価するか
- 古い建物や売却しにくい土地をどう見るか
- 不動産を取得した側に現金がない場合、どう支払うか
- 分割払いにする場合、条件をどう定めるか
請求する側から見ると、
不動産の評価が低すぎると、
遺留分額が不当に少なくなってしまいます。
反対に、請求された側から見ると、
実際にはすぐ売れない不動産を高く評価されると、
支払えない金額を請求されることになります。
このため、不動産がある遺留分では対立が表面化しやすいです。
評価額だけでなく、
売却可能性、利用状況、共有にした場合の将来リスク、
支払方法まで含めて解決策を考える必要があります。
遺留分の話し合いがまとまらない場合の進め方
遺留分で問題になっても、
いきなり裁判になることは多くありません。
多くの場合、まずは話し合いによる解決を試みます。
しかし、当事者同士の関係がすでに悪化している場合や、相手方が資料を出さない場合には、
話し合いだけで解決することが難しくなります。
次のような場合には、調停や訴訟を見据えた対応を検討します。
- 財産資料を開示してもらえない
- 生前贈与の有無について大きく対立している
- 不動産評価で金額差が大きい
- 支払方法について折り合いがつかない
- 相手方が感情的で直接の話し合いが難しい
- 相手方に弁護士がついた
- 期限が迫っている
さいたま市・浦和周辺の方であれば、
さいたま家庭裁判所での調停を見据えて、
遺言書、戸籍、登記情報、固定資産税の通知書、預貯金資料、生前贈与に関する資料
などを整理しておくことが重要です。
調停では、単に「納得できない」と主張するだけでは足りません。
- どの財産を遺留分計算の対象にするのか
- どの評価額を採用すべきか(相続税評価額、固定資産税評価額、実勢価格など)
- どの生前贈与を考慮すべきか
- 支払方法として何が現実的か(分割か一括か)
を資料に基づいて説明する必要があります。
「このまま話し合いを続けるべきか」
「ますは内容証明を送るべきか」
「もう調停に進むべきか」
は事案によって異なりますが、
いずれにしても、感情的な対立が深まる前に、
争点と資料を整理しておくことが大切です。
遺留分で弁護士に相談した方がよい場面
遺留分は、法律上の権利の有無だけでなく、
資料収集、金額計算、時効、不動産評価、交渉の進め方が絡む問題です。
次のような場合には、早めに弁護士へ相談することをお勧めします。
- 遺言で自分の取り分がない、または極端に少ない
- 兄弟姉妹の一人が多額の生前贈与を受けている
- 遺産に不動産が含まれている
- 遺留分侵害額請求の期限が気になる
- 内容証明を送りたい
- 内容証明が届いた
- 相手方が弁護士を立てている
- 不動産評価や支払方法で揉めている
- 直接話すと感情的対立が強くなる
資料がすべてそろっていなくても、相談は可能です。
遺言書、固定資産税の通知書、登記情報、預貯金の資料、内容証明、相手方とのメールやLINE
など、手元にある資料から確認できることがあります。
相談では、
請求できる可能性、請求された場合の反論、
今後集めるべき資料、交渉と調停の見通しを整理できます。
特に、不動産がある遺留分では、
評価額と支払方法の見通しを立てることが重要です。
早い段階で整理しておくことで、
感情的な対立を避け、現実的な解決につなげやすくなります。
よくある質問
- 兄弟姉妹にも遺留分はありますか。
-
兄弟姉妹には遺留分はありません。
そのため、遺言によって遺産が相続できなくなっていても、
遺留分侵害額請求はできません。 - 遺言で「長男に全財産を相続させる」と書かれていました。遺留分は請求できますか。
-
配偶者、子、親など、遺留分のある相続人であれば、
遺留分侵害額請求を検討できる場合があります。ただし、請求額は、財産の内容、生前贈与、既にもらった財産、
不動産評価などを確認して計算する必要があります。 - 遺留分侵害額請求の内容証明が届いたら、すぐ払う必要がありますか。
-
請求額どおりにすぐ支払う必要があるとは限りません。
請求者の権利、時効、財産評価、生前贈与、既に渡した財産、
支払方法などを確認したうえで対応を検討します。 - 不動産しか相続していない場合でも、遺留分を払う必要がありますか。
-
不動産を相続した場合でも、遺留分侵害額請求を受けることはあります。
ただし、不動産評価や支払方法が問題になりやすく、
一括払いが難しい場合には、分割払いなどの交渉を検討することがあります。 - 資料が少ない段階でも相談できますか。
-
相談できます。
遺言書、固定資産税の通知書、登記情報、預貯金の資料、内容証明など、
手元にある資料から確認し、不足している資料を整理することができます。
さいたま市・浦和で遺留分の問題にお悩みの方へ
遺留分の問題では、
請求する側も、請求された側も、最初の対応が重要です。
感情的に反論する前に、
また、請求額どおりに支払うと決める前に、
相続人、遺言書、財産資料、生前贈与、時効、不動産評価、支払方法を順番に整理する必要があります。
さいたま市・浦和で、
- 遺留分侵害額請求をしたい方
- 遺留分侵害額請求を受けた方
- 不動産や生前贈与が絡む遺留分問題にお悩みの方
は、早い段階で状況を整理することが大切です。
浦和駅徒歩圏内、さいたま家庭裁判所からも近い当事務所では、
相続・遺留分に関するご相談を承っています。
資料がすべてそろっていない段階でも、
まずは現在の状況と今後確認すべき点を一緒に整理できます。
- 法律相談料:遺言・相続については初回60分無料、以降30分 5,500円(税込)
- アクセス:JR浦和駅西口徒歩8分(さいたま地方・家庭裁判所至近)
