親権喪失・親権停止・管理権喪失について~各制度の違いは?審判の要件は?請求できるのはだれ?

前回は、親権の内容について説明しました。今回は、親権喪失・親権停止・管理権喪失について説明します。

親権は、未成年の子を一人前の社会人に育てるために親に与えられたものですから、子の利益のために適切に行使されなければなりません。そのことは、民法820条にも明確に謳われています。

【民法】(監護及び教育の権利義務)
820条 親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。

したがって、親権者が、児童虐待をしたり、子の財産を浪費したりと、親権を子の利益のために適切に行使していないと認められる場合には、子の利益を保護するために、親権者の親権を制限しなければならないこともあります。そのために民法に定められているのが、親権喪失(民法834条)、親権停止(民法834条の2)、管理権喪失(民法835条)といった制度です。

これらの制度は制限の内容や強さが違いますので、単純に比較はできないのですが、大雑把にいうと、管理権喪失、親権停止、親権喪失の順序で制限が強くなるものと思われます。

以下では、説明の便宜の点から、親権喪失、親権停止、管理権喪失の順序で説明します。

なお、親権、親権者、親権の内容については、次の記事を参考にしてください。

親権・親権者についてよく分かる|離婚するにあたり必ず知っておきたい9つのこと

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親権の内容である身上監護権と財産管理権が分かる|利益相反行為となるのはどんな場合か

1 親権喪失

親権喪失(民法834条)とは、文字通り、親権者から親権を奪うものです。

親権喪失となるのは、親権者による虐待または悪意の遺棄があるときその他親権者による親権の行使が著しく困難または不適当であることにより子の利益を著しく害するときです。

ポイントは、「著しく」です。親権者による親権の行使が「著しく」困難または不適当で、子の利益が「著しく」害されるときに親権喪失となります。

親権者による親権の行使が困難または不適当で、子の利益が害されたとしても、その程度が「著しく」とまではいえない場合は、親権喪失には至らず、あとで説明する親権停止になります(民法834条の2)。

つまり、「著しく」といえるかどうかが、親権喪失か親権停止の判断の分かれ道といえるでしょう。

「著しく」といえる場合とは、例えば、民法834条にもあるように、親権者による虐待または悪意の遺棄がある場合です。虐待とは、子を精神的または肉体的に過酷に扱うこと、悪意の遺棄とは、正当な理由もないのに、子の身上監護を怠ることをいいます。

つまり、親権者としての当たり前の責任を全く果たしておらず、それどころか親権者に危害を加えている場合には、「著しく」と判断されるものと考えられます。なお、虐待や悪意の遺棄は例示ですから、同等の事態であれば、「著しく」と判断されます。

ただし、親権喪失の原因となる「著しく」といえる場合であったとしても、その原因が2年以内に消滅する見込みがあるときは、親権喪失には至らず、親権停止の対応となります。例えば、親権者が子に対して適切な医療を受けさせていない場合であっても、今後、子に適切な医療を受けさせれば、遅くとも2年後までには回復して、医療を受ける必要がなくなる見込みがある場合などです。親権喪失となるのは以下の場合です。

親権喪失の審判がされると、親権喪失が取り消されるまで(民法836条)、親権者は親権を行使することができません。親権は、子の財産管理と身上監護を内容としますが、身上監護ができないということは、子と同居することもできないということになります。父母の一方について親権喪失となった場合、他方は単独で親権を行使することになります。

家庭裁判所は、親権の対象となる子、子の親族、子の未成年後見人、子の未成年後見監督人または検察官の請求により、親権者の親権を喪失させるかどうかを審判します。また、児童相談所長も、家庭裁判所に対し、親権喪失の請求をすることができます(児童福祉法33条の7)。

【民法】(親権喪失の審判)
834条 父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権喪失の審判をすることができる。ただし、二年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、この限りでない。

【児童福祉法】
33条の7 児童等の親権者に係る民法第834条本文、第834条の2第1項、第835条又は第836条の規定による親権喪失、親権停止若しくは管理権喪失の審判の請求又はこれらの審判の取消しの請求は、これらの規定に定める者のほか、児童相談所長も、これを行うことができる。

2 親権停止

親権停止(民法834条の2)とは、親権者による親権の行使を一時的に停止することです。

親権停止の期間は2年以内になります。また、親権停止の効果は、親権喪失と同じです。親権停止が取り消されるまで(民法836条)、親権者は親権を行使することができません。父母の一方について親権停止となった場合、他方は単独で親権を行使することになります。親権喪失との違いは、期間が定められていることです。

平成23年までは、親権喪失だけで、親権停止の制度はありませんでした。親権喪失となっても、親権喪失の原因が消滅すれば、親権喪失を取り消すことはできます(民法836条)。しかし、親権喪失は、親権者から親権を強制的に奪い、親子関係を断絶させるものと考えられ、児童虐待など、本来であれば、親権を制限すべき事態であるにもかかわらず、積極的に利用されていませんでした。そこで、必要な場合に適切に親権を制限できるように、平成23年に民法が改正され、親権停止の制度が設けられました。

親権停止となるのは、親権者による親権の行使が困難または不適当であることにより子の利益を害するときです。

親権喪失の場合とは違って、「著しく」が要件となっていません。親権喪失には至らなくても、親権者による親権の行使が困難または不適当であることにより子の利益を害するときに、一時的に親権を停止して、子の利益を保護しようとするのが親権停止の目的です。

家庭裁判所に親権停止の請求ができるのは、親権喪失の場合と同じく、親権の対象となる子、子の親族、子の未成年後見人、子の未成年後見監督人または検察官です。

【民法】(親権停止の審判)
834条の2第1項 父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権停止の審判をすることができる。
2項 家庭裁判所は、親権停止の審判をするときは、その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、二年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定める。

3 管理権喪失

親権は、子の身上監護権と財産管理権からなりますが、管理権喪失とは、親権者による子の財産管理権を奪うものです。

財産管理権とは、子の財産を管理し、子の財産に関する法律行為について代理する権利と義務をいいます(民法824条)。

管理権喪失となるのは、親権者の管理権の行使が困難または不適当であることにより子の利益を害するときです。例えば、親権者が、子の財産を使い込んだり、子が部屋を借りたり、就職したりしようとする必要があるのに、合理的な理由もないまま法律行為を代理しない場合などがあります。

親権喪失や親権停止は、親権そのもの、つまり、子の身上監護権と財産管理権行使を制限するのに対し、管理権喪失は、親権のうち、財産管理権のみを制限するものです。つまり、親権のうち、身上監護権は引き続き行使することができます。

親権喪失や親権停止の場合と同様、管理権喪失の審判があると、管理権喪失が取り消されるまで(民法836条)、親権者は財産管理権を行使することができません。父母の一方について管理権喪失となった場合、他方は単独で親権を行使することになります。

家庭裁判所に管理権喪失の請求ができるのは、親権喪失の場合と同じく、親権の対象となる子、子の親族、子の未成年後見人、子の未成年後見監督人または検察官です。

(管理権喪失の審判)
835条 父又は母による管理権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、管理権喪失の審判をすることができる。