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【さいたま・浦和】相続放棄は3か月を過ぎてもできる?期限後に確認すべき事情と注意点を弁護士が解説

2026 5/02
遺産分割
2023年7月8日2026年5月2日

相続放棄は、原則として
「自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内」
に家庭裁判所へ申述する必要があります。

もっとも、
3か月を過ぎたからといって、
必ず相続放棄できないとは限りません。

  • 亡くなった方と長年疎遠だった
  • 後から借金の督促状が届いた
  • 先順位の相続人が放棄して突然自分に連絡が来た

という相談は実際にあります。

大切なのは、
「死亡を知った日」だけで機械的に判断しないことです。

借金や財産の存在をいつ知ったのか、
それまで調査できる事情があったのか、
預金の引き出しや遺産分割協議などをしていないかを、
具体的に確認する必要があります。

本記事のポイント
  • 相続放棄は原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に行います。
  • 3か月を過ぎたからといって、必ず相続放棄できないわけではありません。
  • 重要なのは、「なぜ借金や相続財産を知らなかったのか」を具体的に説明できるかです。
  • 債権者から督促が来ても、すぐに支払う前に、相続放棄の可能性を検討する必要があります。
  • 不動産、借地、賃貸物件、滞納賃料、原状回復などが絡む場合は、荷物処分や解約交渉にも注意が必要です。
目次

相続放棄は3か月を過ぎても、直ちに諦める必要はありません

相続放棄は、原則として、
「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」
に家庭裁判所へ申述する必要があります。

そのため、
父母、兄弟姉妹、叔父叔母などが亡くなってから
しばらく経った後に、

突然、
金融機関、カード会社、保証会社、大家、管理会社などから請求書や督促状が届くと、
多くの方が「もう3か月を過ぎているから無理なのではないか」
と不安になります。

しかし、
3か月を過ぎているように見えても、
相続放棄を検討できる場合があります。

ポイントは、
単に死亡日から3か月を数えるのではなく、

  • 相続人が相続財産や借金の存在を知ることができたのか
  • 調査を期待できる状況だったのか

という点です。

特に、

  • 亡くなった方と長年疎遠だった
  • 先順位の相続人が相続放棄したことで後から自分が相続人になった
  • 他の親族が通帳や郵便物を管理していて情報が入らなかった

といった場合などは、
事情を丁寧に整理する必要があります。

問題は「いつ知ったか」だけではなく、「なぜ知らなかったのか」です

3か月経過後の相続放棄で大切なのは、
「借金を知りませんでした」と書けばよい、
ということではありません。

家庭裁判所に説明すべきなのは、

  • なぜ知らなかったのか
  • 知らなかったことに無理がないのか
  • 借金や相続財産の存在を調査できる状況だったのか

という具体的な事情です。

たとえば、
死亡を知っていたとしても、
亡くなった方に借金があるとは考えにくい事情があり、
相続財産の調査を期待するのが難しい状況であれば、
3か月の起算点が後ろにずれる可能性があります。

反対に、
葬儀に出席し、実家にも出入りし、
通帳や督促状を見ていたにもかかわらず、
何か月も放置していた場合には、
「知らなかった」と説明しても通りにくくなります。

つまり、
3か月経過後の相続放棄では、
「死亡日から何日経ったか」だけでなく、
その間に何を知り、何を知ることができ、
何をしてしまったのかを時系列で整理することが重要です。

3か月経過後の相続放棄チェックリスト
  1. 亡くなったことをいつ知ったか
  2. 自分が相続人であることをいつ知ったか
  3. 借金・保証債務・滞納賃料・固定資産税などをいつ知ったか
  4. それまで相続財産や債務を調査できる状況だったか
  5. 預金の引き出し、遺産分割、売却、支払いなどをしていないか
  6. 親族からの説明、督促状、通知書、メール、LINEなどの資料があるか
  7. 家庭裁判所に説明する事情を時系列で整理できるか

「疎遠だった」「知らなかった」が問題になる典型ケース

実務で多いのは、
単に「うっかり3か月を過ぎた」というより、
そもそも相続の全体像が見えていなかったケースです。

たとえば、
前妻の子として生まれたものの、
父とは幼少期以降ほとんど交流がなく、
葬儀にも呼ばれていなかったというケースがあります。

死亡から半年以上経って、
突然、債権者から通知が届き、
そこで初めて父の死亡や借金を知ることもあります。

また、
兄弟姉妹や甥姪の立場では、
先順位の相続人が相続放棄した結果、
後から自分に相続の順番が回ってくることがあります。

この場合、
被相続人の死亡日はかなり前でも、
自分が相続人になったことを知らなかった、
という事情が問題になります。

さらに、
相続人同士の関係が悪く、
長男だけが通帳、印鑑、郵便物、請求書を管理していて、
他の相続人には何も見せていなかったという相談もあります。

後になって、

  • 実は督促状が届いていた
  • 保証債務があった
  • 税金を滞納していた

ということが分かるのです。

このような場合、
「疎遠だった」「知らなかった」
という言葉だけでは足りません。

  • どの程度交流がなかったのか
  • 誰が資料を管理していたのか
  • いつどの通知で借金を知ったのか
  • 死亡後にどのような説明を受けていたのか

について具体的に説明する必要があります。

親族から「借金はない」と言われていた場合

相続の相談では、
親族間の説明が後から問題になることがあります。

たとえば、長男から

「借金はない」
「財産もほとんどない」
「こちらで全部やっておく」

と言われ、
それを信じていたところ、
数か月後にカード会社や保証会社から請求書が届くことがあります。

このような場合、
読者の方は
「親族に嘘をつかれたのだから、自分に責任はない」
と感じるかもしれません。

もちろん、
親族から誤った説明を受けていたことは
重要な事情になり得ます。

ただし、
実務上は、
そこでもう一段詳しく見られます。

  • なぜその親族の説明を信じたのか
  • 自分で郵便物や通帳を確認できる立場だったのか
  • 遺産分割の話に参加していたのか
  • 督促状を見たことはなかったのか

こうした点が問題になります。

そのため、
親族から「借金はない」と言われていた場合には、
口頭の記憶だけでなく、
LINE、メール、手紙、メモ、通話後の記録など、
当時の説明を裏付けるものをできる限り集めておくことが大切です。

不動産・借地・賃貸物件がある場合は、さらに注意が必要です

相続放棄というと、
預貯金や借金だけをイメージしがちです。

しかし、実際には、
不動産、借地、賃貸物件、駐車場、古い建物
が絡む相談も少なくありません。

亡くなった方が借地上の建物を所有していた場合、
地主から
「建物を撤去して土地を返してほしい」
と言われることがあります。

賃貸物件に住んでいた場合には、
大家や管理会社から

「滞納賃料を払ってほしい」
「荷物を片付けてほしい」
「原状回復してほしい」
「鍵を返してほしい」

と連絡が来ることがあります。

このとき、
相続人が善意で動いてしまうことがあります。

近所に迷惑をかけたくない
大家に申し訳ない
地主との関係を悪くしたくない

そう考えて、荷物を処分したり、
建物撤去の話を進めたり、
滞納賃料を一部支払ったりするのです。

しかし、
相続放棄を検討している段階では、
これらの行為が
相続財産の処分や相続債務の承認
と見られる危険があります。

特に、
借地建物の撤去、賃貸借契約の解約交渉、
高価な家財の処分、滞納賃料の支払いは
慎重に判断する必要があります。

もちろん、
腐敗する物の処分、
近隣被害を防ぐための最低限の管理、
郵便物や督促状の保管などは
「保存行為」
として直ちに問題行為とはいえない対応もあります。

大切なのは、
「相続人として財産を処分している」
と受け取られる動きを避けることです。

相続放棄前にやってはいけないこと|単純承認

相続人が、被相続人の財産を相続する場合を承認、被相続人の財産を相続しない場合を相続放棄(民法938条)といいます。 さらに、相続人の財産をすべて相続することを単純承認(民法920条)、相続人の財産をプラスの範囲でのみ相続することを限定承認(民法922条)といいます。

相続放棄で特に怖いのが、法定単純承認です。

単純にいうと、
相続人が相続財産を処分したり、
相続することを前提に行動したりすると、
「相続を承認した」と扱われ、
後から相続放棄できなくなる可能性があります。

3か月を過ぎた相続放棄では、
「期限が過ぎているか」だけでなく、
「その間に何をしてしまったか」
が重要です。

単純承認の危険のある行為、
慎重に行うべき行為をまとめました。
参考にしてください。

区分行為の例注意点
危険度が高い預金を引き出して生活費に使う/車や不動産を売る/遺産分割協議書に署名する相続財産を自分のものとして扱ったと見られる可能性があります。
滞納家賃や借金を一部支払う/「相続人として支払います」と回答する相続債務を承認したと主張されるおそれがあります。
慎重判断遺品整理、家財処分、借地建物の撤去、賃貸借契約の解約交渉内容や範囲によっては処分行為と見られる可能性があります。
直ちに危険とは限らない郵便物・督促状の保管/財産調査/鍵の管理/腐敗物の処分保存行為・調査行為として説明できる場合がありますが、記録を残すべきです。
単純承認の危険のある行為・慎重であるべき行為

債権者から督促が来たときに、すぐ支払ってはいけません

債権者から請求が来ると、
「放置すると大変なことになるのではないか」
「少額だけでも払った方がよいのではないか」
と考えてしまうことがあります。

しかし、
相続放棄を検討している段階では、
すぐに支払うのは危険です。

支払い方や伝え方によっては、
相続債務を承認したと受け取られる可能性があるからです。

まずは、
請求書、督促状、契約書、明細、保証契約
の内容などを確認します。

電話だけで話を終わらせず、
できる限り書面やメールで記録を残してください。

債権者に対しては、
「相続放棄を検討しているため、
債務内容が分かる資料を送付してほしい」
と伝えることが考えられます。

この段階で、
「相続人として支払います」
「少し待ってください。必ず払います」
などと安易に言わないことが大切です。

相続放棄が家庭裁判所で受理された後は、
相続放棄申述受理通知書の写しや、
必要に応じて受理証明書を債権者へ送付します。

これにより、
多くの場合、相続人本人への請求は止まります。

以下に、債権者から督促が来たときの対応順序についてまとめました。

STEP
重要書類の保管

債権者から送られてきた
督促状・請求書・封筒などは捨てずに保管しましょう。

STEP
即答せず、情報収集

債権者から電話があっても、
絶対に電話だけで即答せず、
債務内容の資料を送ってもらうように求めましょう。

STEP
支払いの約束をしない

債務者に対しては、相続放棄を検討中であることを伝えましょう。
支払いの約束は絶対にしてはいけません。
債務を承認したことになってしまいます。

STEP
相続放棄申述の準備

死亡を知った時期、
借金を知った時期、
親族からの説明を整理して、
相続放棄申述の準備をします。

STEP
家庭裁判所に相続放棄の申述

必要書類を提出して、
家庭裁判所へ相続放棄の申述を行います。

STEP
受理通知書又は受理証明書の保管・通知

申述の受理後、
必要に応じて、債権者へ受理通知書の写し又は受理証明書を送付します。

3か月経過後の相続放棄で準備すべき資料

3か月を経過した後の相続放棄では、
申述書に形式的な記載をするだけでは不十分なことがあります。

大切なのは、
事情を時系列で整理し、
それを裏付ける資料を添えることです。

準備したい資料としては、

  • 債権者から届いた督促状
  • 請求書
  • 通知書
  • 封筒・消印
  • 契約書
  • 明細書

などがあります。

借金をいつ知ったのかを示す資料は特に重要です。

また、
被相続人と疎遠だった事情を説明するために、

  • 住所の変遷
  • 交流状況
  • 葬儀に呼ばれていなかった事情
  • 親族からの説明内容
  • LINEやメールの履歴

などを整理することもあります。

親族から「借金はない」と言われていた場合には、
その説明を裏付ける記録があるか確認します。

記録がない場合でも、

  • いつ
  • 誰から
  • どのように説明されたのか

を具体的にメモにしておくことが有用です。

さらに、

  • 預金を引き出していないか
  • 遺産分割協議に参加していないか
  • 家財を処分していないか
  • 不動産や借地建物について何か交渉していないか

も確認します。

問題になりそうな行為がある場合には、
その目的や範囲を説明できるようにしておく必要があります。

ケーススタディで見る注意点

ケース1 前妻の子で、死亡も借金も後から知った場合

父と幼少期以降交流がなく、父方親族からも連絡がなかった。
葬儀にも呼ばれていない。
死亡から半年後、カード会社から通知が届き、
初めて父の死亡と借金を知った。

このような場合、
死亡日から3か月を過ぎていても、
直ちに相続放棄を諦める必要はありません。

死亡をいつ知ったのか、
相続人であることをいつ知ったのか、
借金を知る機会があったのかを整理します。

ケース2 親族から「借金はない」と言われていた場合

長男が遺品や郵便物を管理しており、
他の相続人には「借金はない」と説明していた。
ところが数か月後、保証会社から督促状が届き、
被相続人が連帯保証人になっていたことが判明した。

この場合、
親族から誤った説明を受けていた事情は重要です。

ただし、
自分で調査できる状況だったのか、
通帳や郵便物を見る機会があったのか、
遺産の話し合いに参加していたのかも問題になります。

ケース3 借地上の建物・賃貸物件が絡む場合

亡くなった親が借地上の古い建物を所有していた。
地主から「建物を撤去して土地を返してほしい」と言われ、
相続人が相続放棄を考える前に、片付け業者へ依頼しようとしている。

このような場合、
建物撤去や家財処分は、
相続財産の処分と見られるリスクがあります。

地主や管理会社への対応は必要ですが、
相続放棄を検討していることを前提に、
どこまでが保存行為で、
どこからが処分行為と評価されるのかを慎重に見極める必要があります。

家庭裁判所で受理されても、将来争われる可能性はあります

相続放棄の申述が家庭裁判所で受理されると、
多くの方は「これで完全に終わった」と考えます。

しかし、
相続放棄の受理は、
相続放棄が最終的に有効であることを
すべての関係者に対して確定するものではありません。

後に債権者から、
「その相続放棄は無効だ」
「すでに単純承認していた」
と争われる可能性はあります。

だからこそ、
3か月経過後の相続放棄では、
申述書にどのような事情を書くか、
どの資料を添えるか、
単純承認と疑われる行為をどのように説明するかが重要になります。

相続放棄が受理された後の出口戦略

相続放棄が受理された後は、
家庭裁判所から届く相続放棄申述受理通知書を大切に保管してください。

債権者、金融機関、
保証会社、大家、管理会社
などに提示する必要があることがあります。

必要に応じて、
家庭裁判所で相続放棄申述受理証明書を取得し、
債権者に送付します。

督促が続く場合でも、
感情的に反論するのではなく、
受理通知書や受理証明書を示して、
相続放棄済みであることを伝えるのが基本です。

また、
自分が相続放棄をすると、
次順位の相続人に相続の問題が移ることがあります。

兄弟姉妹、甥姪などに
突然請求が行く場合もあります。

家族関係によっては難しいこともありますが、
必要に応じて次順位の相続人にも注意喚起しておくことが
望ましい場面があります。

不動産、借地、賃貸物件がある場合には、
受理後であっても管理や明渡しをめぐって連絡が続くことがあります。

相続放棄した人がどこまで対応すべきかは、
事案によって異なります。

安易に「片付けます」「撤去します」と約束せず、
相続放棄後の立場を前提に慎重に対応する必要があります。

よくある質問

3か月を1日でも過ぎたら、相続放棄は無理ですか?

必ず無理というわけではありません。

  • 死亡を知った時期、
  • 相続人であることを知った時期、
  • 借金や相続財産を知った時期、
  • 調査できた事情

を確認する必要があります。

督促状が届いたら、すぐ支払うべきですか?

相続放棄を検討している場合、
すぐに支払うのは危険です。

まずは債務内容を確認し、
相続放棄を検討していることを前提に対応するべきです。

遺品整理をしてしまったら、相続放棄できませんか?

遺品整理の内容によります。

高価な財産を持ち帰ったり売却したりした場合は問題になりやすい一方、
腐敗物の処分や最低限の管理にとどまる場合は説明できる余地があります。

親族に「借金はない」と言われていました。意味はありますか?

重要な事情になり得ます。

ただし、

  • なぜその説明を信じたのか
  • 自分で調査できる状況だったのか
  • いつ借金を知ったのか

を具体的に整理する必要があります。

借地や賃貸物件の荷物を片付けてもよいですか?

相続放棄を検討している段階では慎重に判断すべきです。

荷物処分、建物撤去、解約交渉、滞納賃料の支払いは、
単純承認の問題が生じることがあります。

まとめ|3か月経過後の相続放棄は、事情説明と初動が重要です

相続放棄は、
原則として3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。

しかし、
3か月を過ぎているように見えても、

  • 借金を後から知った場合
  • 親族から情報を知らされていなかった場合
  • 先順位の相続人の放棄によって相続人になった場合

などには、
相続放棄を検討できることがあります。

一方で、

  • 預金を使う
  • 遺産分割協議書に署名する
  • 滞納債務を支払う
  • 借地建物や賃貸物件の処分を進める

などの行為は、単純承認と見られる危険があります。

3か月経過後の相続放棄では、
「知らなかった」と言うだけでは足りません。

  • なぜ知らなかったのか
  • いつ何を知ったのか
  • 何をしていないのか
  • 債権者や親族とどのようなやり取りをしたのか

を資料とともに整理することが重要です。

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この記事を書いた人

弁護士 佐々木康友のアバター 弁護士 佐々木康友

さいたま未来法律事務所の代表弁護士です。
建築学科・行政機関出身。
建築・不動産分野を中心に、関連分野として遺産相続・離婚・行政事件などにも力を入れています。
ひきこもり・フリーター経験者。趣味はメダカの飼育。

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