遺産の中に実家や土地が含まれていると、
遺産分割の話し合いは一気に難しくなることがあります。
預金であれば金額を分ければよい場面でも、不動産は
「誰が取得するのか」「いくらと見るのか」「売却できるのか」「代償金を払えるのか」「共有にしてよいのか」
という問題が同時に出てきます。
特に、さいたま市・浦和周辺では、
実家の土地、古くからの住宅地、区画整理地、農地、借地権などが相続に含まれることがあります。
単純に法定相続分どおりに分ければよいとは限りません。
この記事では、不動産がある遺産分割で揉めたときに、
最初に何を確認し、どのような順番で話を進めればよいのかを、弁護士の視点から解説します。
不動産の含まれる遺産分割で揉めた場合は、
最初から「誰が実家を取るか」だけを話し合うのではなく、
①不動産の内容
②評価額
③売却できるか
④取得を希望する人の代償金支払能力
⑤共有にした場合の将来リスク
を確認することが重要です。
この確認をしないまま話し合いを続けると、
評価額への不満、売却への反対、代償金の不払いへの不安、共有後の管理トラブルが重なり、
遺産分割協議や調停が長引きやすくなります。
不動産だけでなく、遺産分割全体の進め方を確認したい方は、次の記事も参考にしてください。
不動産がある遺産分割は、なぜ揉めやすいのか
不動産は、預金のように簡単に分けられず、
評価額、利用状況、売却のしやすさ、家族の感情が重なりやすいため、
遺産分割で揉めやすい財産です。
たとえば、実家に長男が住み続けている場合、
長男は「自分がこの家を守ってきた」と考えるかもしれません。
一方で、別居している兄弟姉妹は
「自分が住まないのであれば売却して現金で分けたい」と考えることがあります。
どちらが一方的に間違っているという話ではありません。
問題は、
不動産が生活の場であり、
家族の記憶でもあり、
同時に金銭的な価値を持つ財産でもあるという点です。
さらに、
- 建物が古い
- 土地の境界がはっきりしない
- 私道がある
- 借地権が含まれる
- 農地として扱われている
などの事情があると、話し合いはより難しくなります。
さいたま市内でも、
浦和駅周辺の狭い土地、昔からの住宅地、見沼区・岩槻区方面の農地や区画整理地など、
不動産の内容によって考えるべきことは変わります。
最初に確認すべき不動産資料
不動産がある遺産分割では、
意見をぶつけ合う前に、まず不動産の内容を資料で確認する必要があります。
「実家がある」「土地がある」といっても、
- 登記上の所有者、面積、地目
- 建物の有無
- 道路との関係
- 賃貸の有無
などによって、分け方は変わります。
最初に確認したい資料は、主に次のようなものです。
| 資料名 | 備考 |
|---|---|
| 登記事項証明書 | 土地・建物の名義、面積、抵当権などを確認する |
| 固定資産評価証明書・ 固定資産税納税通知書 | 評価額や課税状況を確認する |
| 名寄帳 | 被相続人が同じ市区町村内に持っていた不動産を一覧で確認する |
| 公図、地積測量図、建物図面 | 土地建物の位置関係や形を確認する |
| 賃貸借契約書 | アパート、駐車場、貸地、借地権などがある場合 |
| 固定資産税、修繕費、 管理費などの支払資料 | 各支払いの証拠となる資料 |
これらの資料がないまま話し合うと、
「そもそもどの土地の話をしているのか」
「建物は誰の名義なのか」
「他にも土地があるのではないか」
というところで食い違いが生じてしまいます。
不動産相続では、登記上の面積だけではなく、
接道、建物の状態、利用しやすさ、売却の見込みも解決方針に影響します。
図面や役所の資料を確認しながら、話し合いの土台を作ることが大切です。
登記・名寄帳・固定資産資料などにより、不動産の内容を確認します。
固定資産税評価証明書、路線価、不動産会社の査定書など
比較的簡単に入手できる資料から不動産のおおよその評価額を確認します。
相続人のうち誰が不動産の取得を希望しているかを確認します。
不動産の取得により他の相続人に代償金を支払う必要がある場合、
取得希望者が代償金を払えるかを確認します。
不動産を相続人共同で売却する場合、
実際に売却できるのか、売却するなら誰が中心となって進めるかを確認します。
共有にした場合の将来リスクを確認します。
話し合いが進まない場合は遺産分割調停の申立てを検討します。
不動産の評価額で揉める場合の考え方
不動産の評価額は一つではありません。
どの評価を使うかによって、代償金や分け方が大きく変わります。
不動産の価値を考えるときには、
- 固定資産評価額
- 相続税評価額(路線価)
- 不動産会社の査定価格
- 実勢価格
- 不動産鑑定評価
など、複数の見方があります。
固定資産評価額は資料として取りやすく、話し合いの入口にはなります。
しかし、それだけで遺産分割上の価値を決めてよいとは限りません。
実際にはもっと高く売れる土地であれば、
取得しない相続人が不満を持つことがあります。
反対に、不動産会社の査定額が高く出ていても、
すぐにその価格で売れるとは限りません。
古い建物の解体費、境界確認、私道、接道、農地の扱いなどによって、
実際の売却価格や売却までの時間は変わります。
評価額で揉めている場合は、
「どちらの金額が正しいか」だけで争うのではなく、
その金額を前提にした場合に、誰が取得できるのか、代償金を払えるのか、
それとも売却した方がよいのかをあわせて考える必要があります。
解決方法は主に4つある
不動産がある遺産分割の解決方法は、主に、
誰かが取得する方法、売却して分ける方法、共有にする方法、土地を分ける方法に分かれます。
どの方法がよいかは、
- 不動産の内容
- 相続人の希望
- 代償金の支払能力売却の見込み
- 将来の管理負担
によって変わります。
| 方法 | 内容 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 現物取得+代償金 | 相続人の一人が不動産を取得し、他の相続人に代償金を払う | 実家に住み続けたい人がいる場合 | 代償金を本当に払えるかが問題になる |
| 売却して分ける | 不動産を売却し、売却代金を分ける | 誰も住まない、管理できない場合 | 売却価格、売却時期、業者選びで揉めることがある |
| 共有にする | 相続人で共有名義にする | すぐに結論を出せない場合 | 将来の売却・管理・次の相続で問題が残りやすい |
| 分筆・一部分割 | 土地を分けて各相続人が取得する | 広い土地などで分けられる場合 | 接道、測量費用、土地の利用価値に注意が必要 |
代償金を払えるかを確認しないと話し合いは止まりやすい
不動産を取得したい相続人がいても、
他の相続人に支払う代償金を用意できなければ、現実的な解決にならないことがあります。
たとえば、長男が実家を取得したいと考えている場合、
他の相続人は「それなら自分の取り分に見合うお金を払ってほしい」
と考えるのが通常です。
このとき問題になるのが代償金です。
代償金は、いつ、いくら、どのように払うのか。
分割払いにするなら、支払いが止まった場合にどうするのか。
こうした点を決めないまま合意すると、後で別の争いになることがあります。
実務上も、
「実家を取得すること自体には反対しないが、代償金を本当に払ってもらえるのか不安」
という相談は少なくありません。
預貯金が少ない相続では、
取得を希望する人が金融機関から借入れをできるか、
他の財産で支払えるかも確認する必要があります。
代償金の支払いが難しい場合には、
売却して分ける方法や、取得する不動産を変える方法など、
別の道を検討する必要があります。
売却して分ける場合に揉めやすいポイント
不動産を売却してお金を分ける場合でも、
売却価格、売却時期、不動産会社の選び方、居住者の退去、残置物の処分などで揉めることがあります。
「売ってお金で分ければ公平」と考えられることはあります。
たしかに、誰も住まない不動産や、相続人全員が管理できない不動産では、
売却が現実的な選択肢になることがあります。
しかし、売却する場合でも、次の点で意見が分かれやすいです。
- どの不動産会社に依頼するか
- いくら以上で売却するか
- 売却活動を誰が進めるか
- 実家に住んでいる相続人がいつ退去するか
- 家財道具、仏壇、庭木などを誰が片付けるか
- 解体費、測量費、境界確認費用を誰が負担するか
古い建物がある場合、買主が解体を前提にすることもあります。
境界がはっきりしない土地では、
売却前に測量や隣地との確認が必要になることもあります。
売却を選ぶ場合は、「売れば終わり」と考えるのではなく、
売却までに誰が何を担当するのか、
費用をどのように負担するのかまで決めておくことが大切です。
共有にする前に必ず考えるべきこと
遺産分割で不動産を共有にすると、
その場では話し合いがまとまったように見えても、
将来の売却、管理、次の相続で問題が大きくなることがあります。
「とりあえず共有にしておけば公平ではないか」と考えることがあります。
たしかに、すぐに売れない場合や、取得者を決められない場合に、
共有という方法が選ばれることはあります。
しかし、共有にすると、
不動産を売却する、建物を大きく修繕する、賃貸する、担保に入れるといった場面で、
共有者の同意が必要になることがあります。
また、共有者の一人が亡くなると、
その持分がさらに相続され、関係者が増えることがあります。
最初は兄弟2人の共有だったものが、
次の相続で甥や姪まで関係する状態になることもあります。
共有は、一時的には便利に見えることがあります。
しかし、将来の売却、固定資産税、修繕費、管理、次の相続まで考えると、
解決の先延ばしであり、問題を後に残しやすい方法ともいえます。
共有にする場合は、少なくとも、
- 誰が管理するのか
- 固定資産税や修繕費をどう負担するのか
- 将来売却したい人が出た場合にどうするのか
を、できるだけ具体的に考えておく必要があります。
実家に住んでいる相続人がいる場合
相続人の一人が実家に住んでいる場合は、
居住の経緯、固定資産税や修繕費の負担、今後も住み続ける希望、
代償金の支払い可能性を確認する必要があります。
不動産がある遺産分割で特に多いのが、相続人の一人が実家に住んでいるケースです。
同居して親の面倒を見ていた人からすれば、
「自分が住み続けるのは当然だ」と感じることがあります。
一方で、別居していた相続人からすれば、
「実家に住み続けるなら、その分はお金で調整してほしい」
と感じることがあります。
ここで大切なのは、居住している人を感情的に責めることではありません。
- いつから住んでいるのか
- 親との合意があったのか
- 固定資産税や修繕費を誰が負担してきたのか
- 今後も住み続ける必要があるのか
を確認することです。
そのうえで、実家を取得するのであれば代償金をどう払うのか、
売却するのであれば退去や残置物をどうするのか、
共有にするのであれば管理をどうするのかを検討します。
借地権・農地・賃貸物件がある場合は、さらに注意が必要
借地権、農地、アパート、駐車場などが遺産に含まれる場合は、
通常の自宅不動産とは異なる確認事項が出てきます。
借地権がある場合、
土地は地主の所有で、相続人が持っているのは建物や借地権ということがあります。
建替え、売却、名義変更、地主との関係によって、
進め方が変わってきます。
農地が含まれる場合には、
利用状況、農地法上の制約、売却しやすさ、地元との関係などを確認する必要があります。
さいたま市内でも、見沼区や岩槻区などでは、
住宅地とは違う視点が必要になることがあります。
アパートや駐車場などの収益物件がある場合には、
賃料収入、管理費、修繕費、賃貸借契約、空室、将来の大規模修繕なども問題になります。
単に評価額だけを見ても、
相続人間で納得できる結論にたどり着かないことがあります。
話し合いでまとまらない場合は遺産分割調停を検討する
不動産の評価額、取得者、売却方針、代償金で話し合いが止まった場合は、
遺産分割調停を見据えて、資料と主張を準備する必要があります。
相続人同士の話し合いで合意できれば、それが最も柔軟な解決になります。
しかし、不動産がある遺産分割では、
感情的な対立だけでなく、
金額や売却方針の違いによって話し合いが止まることがあります。
そのような場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を検討します。
さいたま市・浦和周辺の相続であれば、
さいたま家庭裁判所に調停を申し立てることが多いと思います。
調停では、「不満がある」というだけでは話が進みにくいです。
- 不動産の資料
- 評価に関する資料
- 居住状況
- 固定資産税や修繕費の負担
- 売却の見込み
などを示しながら、どのような分け方が現実的かを説明する必要があります。
弁護士に相談する意味は、単に相手方と交渉することだけではありません。
どの資料が必要か、何を主張すべきか、
反対にどこは譲った方がよいかを見極め、
調停で説明しやすい形にしていくことにもあります。
さいたま市・浦和周辺で不動産相続が問題になりやすいケース
さいたま市・浦和周辺の相続では、
実家の土地、古くからの住宅地、区画整理地、農地、借地権などが絡み、
不動産の評価や分け方が遺産分割の中心問題になることがあります。
浦和駅周辺には、
昔からの住宅地や、代々受け継がれてきた土地があります。
土地の面積が小さい場合、建物が古い場合、道路との関係に制約がある場合には、
売却や建替えの見通しを確認する必要があります。
見沼区や岩槻区方面では、
農地、広い土地、区画整理地、複数の土地が相続財産に含まれることもあります。
こうした不動産では、
単純に「この土地はいくら」と決めるだけでは足りず、
利用できる土地なのか、売却しやすい土地なのか、維持費がどの程度かかるのかも重要です。
大切なのは、その地域の不動産事情を踏まえて、
相続人にとって現実的な選択肢を考えることです。
弁護士に相談するタイミング
不動産がある遺産分割では、
話し合いが完全にこじれてからではなく、
評価額や分け方で意見が分かれ始めた段階で相談する方が、選択肢を検討しやすくなります。
次のような場合は、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
- 実家を誰が取得するかで意見が分かれている
- 不動産の評価額に納得できない
- 実家を売却したい人と残したい人がいる
- 代償金を払えるか、払ってもらえるか不安がある
- 共有を提案されているが、将来が心配である
- 相続人の一人が実家に住み続けている
- 借地権、農地、アパート、駐車場などが含まれている
- 遺産分割調停を申し立てるべきか迷っている
資料がすべてそろっていなくても、相談は可能です。
むしろ、どの資料を集めればよいか分からない段階で相談した方が、
無駄な手間を減らせることがあります。
よくある質問
- 固定資産評価額で不動産の価値を決めてもよいですか?
-
固定資産評価額は参考資料の一つですが、
遺産分割で必ず固定資産評価額を使わなければならないわけではありません。実勢価格、不動産会社の査定、不動産鑑定などを踏まえて、
相続人間で納得できる金額を検討する必要があります。 - 兄が実家を取得したいと言っていますが、私は売却して分けたいです。どうすればよいですか?
-
まずは、実家の評価額、兄が代償金を払えるか、
売却した場合の見込額を確認します。取得希望があること自体は否定されるものではありませんが、
他の相続人に公平な代償金を支払えない場合、話し合いがまとまらないことがあります。 - とりあえず共有にしておくのは問題ですか?
-
共有は一時的な解決に見えますが、
将来の売却、管理、修繕、次の相続で問題が大きくなることがあります。共有にする場合は、
誰が管理するのか、費用をどう負担するのか、将来売却したい人が出たときにどうするのか
まで考えておく必要があります。 - 相続人の一人が実家に住んでいる場合、退去してもらえますか?
-
単純に退去を求められるとは限りません。
その人がいつから住んでいるのか、
被相続人との合意があったのか、
固定資産税や修繕費を誰が負担してきたのか、
遺産分割で誰が取得するのかを確認する必要があります。 - 話し合いが進まない場合、すぐ調停にした方がよいですか?
-
不動産の評価、売却方針、代償金で話し合いが止まっている場合は、
調停を検討する段階です。ただし、調停前に資料を確認しておくことで、
争点が見えやすくなり、無用な長期化を避けやすくなります。
まとめ|不動産がある遺産分割は、早い段階で道筋を立てることが大切です
不動産がある遺産分割では、
「誰が取得するか」だけを先に決めようとすると、
話し合いが進まなくなることがあります。
まず、不動産の内容を資料で確認し、
評価額、売却できるか、代償金を払えるか、共有にした場合の将来リスク
を順番に見ていく必要があります。
実家、土地、借地権、農地、アパート、駐車場など、
不動産の内容によって、適切な進め方は変わります。
相続人同士の感情も関わるため、
法的な正しさだけでなく、現実に合意できる着地点を考えることが大切です。
