賃貸建物のオーナーです。入居者が退去する際、物件の確認をしたところ、入居者の過失で破損している箇所があったので、修繕費用を敷金から差し引きますねと伝えたところ、とりあえず敷金は全額返してほしいと言われてしまいました。敷金から差し引くことはできないのでしょうか。
賃貸建物の経営において、借主との敷金返還トラブルは絶対に避けたいものの一つです。
残念ながら借主とトラブルになってしまい、問題が適切に対処されなかった場合、訴訟に発展してしまうこともよくあります。
この記事では、賃貸建物の貸主や管理会社の方々が賃借人との間で円滑な関係を築き、トラブルを未然に防ぐためにはどうすればよいか、また、トラブルになってしまった場合にどのように対処すればよいかについて、具体的な方策についてご紹介します。
- 敷金の意味や機能がわかる
- 敷金返還を巡るトラブルを避けるためにどうすればよいか分かる
- 賃借人と話合いによる解決ができない場合にどのように対処すればよいかが分かる
敷金返還トラブルの概要
敷金返還トラブルは賃貸建物の貸主が直面することの多い問題の一つです。
賃貸借契約の終了時、敷金の返還を巡って貸主と借主が対立するケースは多いです。
こういったトラブルは、敷金が法的にどのような意味を持っているのかや、敷金が返還されるための条件について、賃借人が誤解をしていたり、賃貸借契約の内容が不明確である場合に発生することが多いように思われます。
例えば、ある借主が建物退去の際に、敷金全額の返還を求めたものの、設備の修理費用が発生していることを理由に、貸主が返還を拒否したケースを考えてみましょう。
このような状況において、設備の修理費用について借主に納得してもらうには、次のことが必要といえます。
- 賃貸借契約書にどのような場合に敷金が充当されるかについて明確に定められていること
- 借主が敷金の法的性質や賃貸借契約書の内容について十分に理解していること
- 賃貸借契約書によれば建物の修理費用に敷金が充当されるべきであること
借主において、このいずれかについて疑問があるとの間でトラブルとなるおそれがあります。
敷金返還を巡るトラブルは、賃貸経営において大きなリスクとなり得ます。
たとえ貸主の主張が正当なものであったとしても、借主とトラブルになれば、他の借主に不信感を与えることとなりかねませんし、法的紛争に発展することで、時間とコストが掛かることになります。
そのため、賃貸建物の貸主や管理会社の方々は、敷金返還に関する問題を理解し、適切な対応策を講じることが重要です。
敷金とは
建物を賃貸する際、借主に敷金を支払ってもらうことが当然となっていますが、そもそも敷金とは一体何でしょうか。
あまりに当たり前すぎて、意外と敷金の意味を深く考えてみることはないかもしれません。
そこで、敷金について一般的な内容を説明しましょう。
敷金とは、賃貸借契約において借主が貸主に預ける金銭の一種であり、賃貸借契約に基づいて借主が貸主に対して負担する一切の債務を担保するものです。
「一切の債務を担保する」とすると何やら難しそうですが、要するに賃貸借契約に関して借主が貸主に対して何らかのお金を支払わなければならないのに、それを支払わない場合、敷金から充当できるというものです。
- 未払い家賃に充当する
- 借主の負担するべきクリーニング費用や修繕費用に充当する
といったことはよく行われています。
賃貸借契約が終了し、建物の返還が完了した後、賃借人の負担するべき未払家賃や修繕費用等があればそれを差し引いた残額が、賃借人に返還されることになりますが、敷金の返還条件や金額を巡ってしばしばトラブルが発生します。
敷金 - 未払家賃・修繕費用等 = 借主への返還額
民法622条の2の規定
民法622条の2には、敷金の意味と返還義務について規定されています。
これまで、敷金については法律上明確な位置付けがなく、裁判例の蓄積によってその意味が理解されてきましたが、2017年の民法改正により新たに規定が追加され、敷金の意味と返還義務について明確に定められることとなりました。
条文は結構長いのですが、そのポイントを示すと以下の通りとなります。
- 敷金とは、その名目を問わず、賃貸借において賃借人(借主)が賃貸人(貸主)に交付した金銭であって、その賃貸借に基づく賃借人の債務を担保する目的を有するものをいう。
- 敷金は、賃貸借が終了し、かつ賃借物の返還があったときに、残額があれば、賃借人に返還しなければならない。
ポイントは2つです。
- 敷金は、賃借人(借主)の債務を担保するもの
- 敷金は、賃貸借契約が終了し、賃借物の返還があったときに残額が返還される
民法622条の2(敷金)
1 賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
① 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
② 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
2 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。
敷金の機能
敷金とは、賃貸借契約に基づいて借主が貸主に対して負担する一切の債務を担保するものです。
「一切の債務を担保する」とは、要するに賃貸借契約に関して借主が貸主に対して何らかのお金を支払わなければならないのに、それを支払わない場合、敷金から充当できるというものです。
主な機能としては、具体的な機能としては以下のようなものが挙げられます。
- 家賃の不払いに対する担保
-
借主が家賃を支払わない場合、貸主は敷金をその未払い分に充当することができます。
これにより、貸主は家賃の回収リスクを軽減することができます。 - 建物の修繕費用等の担保
-
貸主が退去する際に、建物に通常の使用を超える損耗等があった場合、その原状回復費用(修繕費用、クリーニング費用など)を敷金から差し引くことができます。
このようにして、建物の修繕費用等を担保します。 - 契約履行の確保
-
敷金は貸主が契約の義務を果たすことを保証する手段としても機能します。
例えば、建物を大切に使わずに通常の使用を超える損耗等を与えてしまうと、預けている敷金から自動的に修繕費用等が差し引かれてしまいます。
借主は敷金が返還されるために、契約期間中の適切な建物使用を心がけることが期待されます。
敷金の返還手続き
民法622条の2にもあるように、敷金は、賃貸借契約が終了し、建物の返還が完了した後、借主の負担するべき未払家賃や修繕費用等があればそれを差し引いた残額が、借主に返還されることになります。
ポイントは、建物の返還が完了した後、敷金を返還すればよいということです。
つまり、建物の返還と敷金の返還は同時に行われる必要はありません。
一般的な敷金返還手続きは以下のような流れになります。
貸主と借主の信頼関係を維持するためには、明確な手続きのもとこのプロセスが行われることが重要となるでしょう。
借主は賃貸借契約終了後、賃貸建物を貸主に返還します。
この際、建物の状態が契約締結時の状態に近いほど、通常は、借主が負担するべき原状回復費用は小さくなります。
貸主は建物の状態を確認し、通常の使用を超える損耗等がないかを評価します。
通常の使用を超える損耗等の修繕やクリーニングが必要であれば、その費用を敷金から差し引きます。
原状回復費用や未払い家賃がある場合は敷金から差し引き、残額を借主に返還する敷金残額を決定します。
この際、当然のことながら、明細を提示し、返還額の根拠を説明することが必要となります。
借主に説明の上、了解を得られたら敷金残額を返還します。
トラブルを未然に防ぐ契約書のポイント
これまでも説明してきましたが、敷金返還トラブルを未然に防ぐためには、賃貸借契約書の作成が非常に重要です。
多くのトラブルは、契約書の内容が不十分であることや、具体的な条項が欠けていることが原因となっているからです。
あるケースでは、賃貸借契約書に敷金の返還条件を記載していなかったために、退去時に借主と大きな対立が生じました。
この事例からも分かるように、契約書に不備があると、法的リスクを増大させるだけでなく、賃借人との信頼関係を損なうことに繋がりかねません。
賃貸借契約書において、敷金の取り扱いについて、具体的かつ明確に条項を定めておくことが、トラブルを未然に防ぐ鍵となります。
以下では、敷金について賃貸借契約書に盛り込むべき重要なポイントを詳しく解説します。
賃貸借契約書作成のポイント
- 敷金の目的と用途
-
敷金がどのような目的で使用されるのかについて賃貸借契約書に明記します。
敷金とは、賃貸借契約に基づいて借主が貸主に対して負担する一切の債務を担保するものですが、一般的な目的としては、「家賃未払いの補填」や「建物の修繕費用等」などがあります。
借主が貸主に対して負担する一切の債務を担保するとだけ記載するよりも、敷金の用途を具体的に記載しておいた方が退去時における賃借人との誤解や対立を防ぐことができるでしょう。項目 内容 家賃未払いの補填 借主が家賃を滞納した場合、貸主はその未払分を敷金から差し引くことができます。 建物の損傷等の修理費用 借主が退去時に、物件に通常の使用を超える損傷があった場合、その修理費用を敷金から差し引くことができます。 - 敷金の返還条件
-
借主が、賃貸借契約終了時に建物をどのような状態で返還するべきかを明らかにします。
例えば、「建物は通常の使用による損耗を除き、契約時と同等の状態で返還すること」といった評価基準を設定したとしましょう。
このようにしておけば、借主は、原状回復をするべき範囲や原状回復しない場合に必要となる費用負担についても理解することができます。
なお、借主が修繕費用等を負担するべき範囲、つまり原状回復義務の範囲については、次の記事でくわしく説明していますので、参考にしてください。【弁護士が解説】原状回復義務で損しないために~賃貸トラブル事例と対策ガイド | さいたま未来法律事務所 本記事では、具体的なトラブル事例をもとに、解決策や予防策を詳しく解説し、トラブルを未然に防ぐ方法についてご紹介します。 - 修繕費用等の負担
-
敷金から修繕費用等を差し引く基準を賃貸借契約書に設定します。
例えば、「通常の損耗を超える損傷等に対する費用」などと具体的に記載することで、どのような損傷が対象となるのかを明確にします。
借主の負担する修繕費用等について透明性を確保することにより、借主にとって不当な敷金差引きを避けることができるでしょう。
トラブルを防ぐための賃貸借契約書サンプル
以下は、敷金返還に関する条項の例です。
実際の賃貸借契約書作成時には、弁護士などの専門家に相談し、各状況に応じてカスタマイズすることをお勧めします。
第○条(敷金)
1 本契約に基づき、賃借人は賃貸人に対し、賃料の未払い、建物損傷の修繕その他賃借人が賃貸人に対して負担する一切の債務を担保するために敷金〇円を預けるものとする。
2 敷金は、賃借人が建物を賃貸人に返還し、前項の債務がすべて精算された後に残額を返還するものとする。
3 賃貸人は賃借人に対し、本建物の通常の使用による損耗等の修繕費用等については負担しない。
賃借人への説明
賃貸借契約書に敷金の返還についての規定を明確に定めたとしても、借主がその内容を十分に理解した上で契約締結をしなければ、借主とのトラブルを完全に予防することはできません。
そのため、敷金の返還について賃貸借契約締結時に借主へ契約書の内容を丁寧に説明することが重要です。
敷金の目的と用途、返還条件、修繕費用の取り扱いについて具体的に説明して、借主の理解を得るようにしましょう。
説明の際には、賃貸借契約書の条項に基づく具体例を説明することによって、より借主にとって理解しやすいものとなるでしょう。
敷金返還請求への対応
賃貸借契約が終了する際、借主の敷金の返還請求にはどのように対応するべきでしょうか。
対応の仕方によっては、借主との間でトラブルが発生することもあります。
敷金の返還に関する借主の誤解を避け、円滑に手続を進めるためには、事前の準備と適切な対応が求められます。
以下に、敷金返還請求への対応の具体的なステップを示します。
まず、賃貸借契約書を再確認し、敷金の返還条件や借主が負担する修繕費用についての条項を確認します。
賃貸借契約書に明記された内容に従って、敷金の返還を判断します。
借主から明渡しを受けた時の建物の状態を詳細に確認し、損傷箇所や修繕が必要な部分を写真に収めて記録を残します。
この記録は、後に借主に修繕費用を請求する際の重要な証拠となります。
建物の修繕が必要な場合、専門業者に依頼して修繕費用の見積書を作成します。
この見積もりに基づいて、敷金から差し引くべき金額を明確にします。
修繕費用とこれを差し引いた後の敷金の返還額について説明して、借主から同意を得ます。
この際、建物の損傷箇所の写真や修繕費用の見積書を提示して説明した方がよいでしょう。
敷金の返還額について借主と合意が得られたのであれば、合意内容を文書化し、双方が署名することにより、後日のトラブルを防ぐことができます。
この文書は、返還に関する最終的な合意としての証拠となります。
話合いによる解決ができない場合
敷金返還を巡るトラブルは、まずは当事者同士の直接の話合いにより解決を目指すことが望ましいですが、話合いを重ねてもいつまでも合意に至らない膠着状態となることがあります。
そのような状態に陥った場合には、法的手続きに移行することも考える必要があります
民事調停
当事者同士の直接の話合いにより解決ができない場合、法的手続きに移行することになりますが、それでも借主と全く話合いのできない状態でなければ、いきなり訴訟を提起するのではなく、まずは簡易裁判所の民事調停を試みることも有効です。
民事調停とは、裁判所により選任された調停委員の仲介のもと、非公開の話合いにより双方の合意による解決を目指す手続きです。
訴訟は自分の主張が正しいことを裁判所に認めさせるための手続きであり、訴訟を提起すると、借主との関係では一旦は完全な対決モードに入ってしまいます。
これに対し、民事調停は裁判所の手続きとはいっても、あくまでも話合いによる解決を目指すものなので、できるだけ穏便に解決したいのであれば、まずは民事調停という選択肢も十分にあり得るところです。
民事調停を申し立てるのは、原則として、相手方の住所のある地区の裁判を受け持つ簡易裁判所です。
ただし、事件の種類によっては例外もありますので、詳しくは、次の裁判所のホームページを参照してください。
民事訴訟
民事調停で話合いをしても合意に至らない場合、裁判所に民事訴訟を提起してトラブルについて判断をしてもらうよりほかないことになります。
訴訟には時間も費用も多くかかりますが、最終的には裁判所の判断に基づく法的解決を得ることができるというメリットがあります。
訴訟を進めるにあたっては、賃貸借契約書、建物の状態を示す写真、交渉の経過を記録した書類など、必要な証拠を提出して、裁判所に対して客観的な証拠を基にした説得力のある主張をしていくことが求められます。
次に、敷金返還を巡る典型的な裁判のパターンをいくつかご紹介します。
典型的な裁判例1(否定)
- ①事案の概要
-
借主が退去する際、通常の使用によって生じた損耗(壁紙の汚れや床のすり減りなど)を理由に賃貸人が敷金を全額返還せず、修繕費として敷金の一部を差し引いたため、借主が敷金の返還を求めて訴訟を提起しました。
- ②裁判所の判断
-
裁判所は、通常の使用による損耗については、借主に修繕義務がないという判断を下しました。つまり、通常の生活で発生する範囲の損耗については、借主の負担とすることはできないとしたのです。貸主は、敷金から修繕費を差し引くには、通常の使用を超える損耗があることを証明しなければならないとしました。
- ③判決のポイント
-
この裁判例からわかることは、敷金から修繕費用を差し引く場合には、貸主はその根拠を明確にしておく必要があるということです。
通常の使用による損耗については、借主に費用を負担させることは不適切であり、貸主が費用を請求するには、損耗が通常の使用を超えていることを示す証拠が必要です。賃貸借契約書では損耗の基準を明確にし、借主にも説明しておくことが重要です。
なお、通常の使用による損耗について、借主の負担とする合意をあらかじめしておくことが一切否定されるわけではありません。
しかし、最高裁は、賃借人が通常の使用による損耗に対して補修費用を負担するためには、賃貸借契約書に具体的に明記されているか、賃貸人がその旨を口頭で説明して賃借人が合意したという特約が必要であるとかなり厳しい判断をしています(平成17年12月16日最高裁判所判決(平成16年(受)第1573号))。
典型的な裁判例2(否定)
- ①事案の概要
-
この事案では、貸主が借主の退去後に敷金の返還を拒否し、借主が敷金の全額返還を求めて訴訟を提起しました。
貸主は、物件に対する修繕が必要であったとして、敷金の一部または全額を差し引くべきだと主張しました。しかし、貸主側は修繕の内容や費用について明確な証拠を提示していませんでした。 - ②裁判所の判断
-
裁判所は、貸主の主張を退け、借主が請求した敷金の全額を返還するよう命じました。
裁判所は、貸主が敷金から差し引くべき修繕費用について適切な証拠を提示することができなかったことから、修繕とその費用を借主が負担する必要性について否定しました。修繕の必要性とその費用に関する具体的な証拠が欠如していたため、貸主の主張は認められませんでした。 - ③判決のポイント
-
この裁判例は、貸主が敷金を差し引くためには、その理由となる事実をしっかりと証明しなければならないことを示しています。
貸主は、建物の修繕が必要である場合、その具体的な内容や費用を証拠として示す必要があります。
賃貸借契約書に修繕に関する条項を明記するだけでなく、実際に敷金から差し引く場合には、必要に応じて修繕の必要となる箇所の写真や修繕費用の見積もりなどを用意することが必要となります。
典型的な裁判例3(認容)
- ①事案の概要
-
この事案は、貸主が敷金の一部を差し引くことに関して借主が異議を唱え、返還を求めたケースです。
賃貸借契約書には、借主が退去時に修繕費用を負担することが明記されており、貸主はこの条項に基づいて敷金から修繕費を差し引いていました。
しかし、借主は、この賃貸借契約書に定められた修繕費用の範囲が広すぎるとして訴訟を起こしました。 - ②裁判所の判断
-
裁判所は、貸主の主張を支持し、賃貸借契約書に基づいて借主が貸主に対して修繕費用を負担する義務があると認定しました。
賃貸借契約書では、通常の使用による損耗等の一部についても借主の負担とされていましたが、修繕に関する具体的な範囲や基準が明確に定められており、借主も合意の上で契約締結をしたものと認められることから、その内容に基づいて貸主が敷金を差し引くことが合法であると判断されました。 - ③判決のポイント
-
この裁判例からわかることは、賃貸借契約書の内容が法的に有効である限り、その内容に基づいて貸主が敷金を差し引くことが可能であるということです。
最高裁の判例では、賃借人が通常の使用による損耗に対して補修費用を負担するためには、契約書に具体的に明記されているか、賃貸人がその旨を口頭で説明して賃借人が合意したという特約が必要であると判断しています(平成17年12月16日最高裁判所判決(平成16年(受)第1573号))。
契約書に具体的かつ明確な条項を記載することが、後のトラブルを未然に防ぐ手段となりますので、貸主は契約時に借主に対して契約内容をしっかりと説明し、貸主の理解を得ることが重要です。
まとめ~弁護士に相談するメリット
賃貸建物の経営において、敷金返還トラブルは避けられない課題の一つですが、適切な対応と専門的なサポートを受けることで、トラブルを迅速かつ円滑に解決することが可能です。
さいたま未来法律事務所では、不動産に関する法律問題に特化したサービスを提供しており、皆様が抱える問題の解決に全力で取り組んでおります。
借主との敷金返還トラブルについて弁護士に対応を依頼すると次のメリットがあります。
敷金返還トラブルやその他の不動産に関する法的問題でお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
当事務所の専門知識と経験を活かし、最適な解決策をご提案するとともに、皆様の信頼できるパートナーとして、共に課題に対応して参ります。
- 法律の専門知識
-
弁護士は、敷金返還に関する法律や裁判例を熟知しており、最適な対応策を提案できます。法的根拠に基づくアドバイスを受けることで、トラブルを適切に解決することが可能です。
- 客観的な視点からのアドバイス
-
弁護士は、客観的な視点から問題を分析し、冷静に判断することができます。オーナーや管理会社が感情的になりがちな場面でも、論理的で公正な解決策を提供することができます。
- 交渉力の向上
-
弁護士は交渉のプロフェッショナルとして、借主との間で生じたトラブルにおいて、効果的な交渉を行い、双方が納得できる合意を得るためのサポートを提供します。
- 法的文書の作成とチェック
-
敷金返還トラブルの解決には、契約書や合意書などの法的文書が重要です。弁護士は、これらの文書の作成やチェックを通じて、トラブルを未然に防ぎ、法的リスクを最小限に抑える手助けをします。
- 訴訟対応
-
トラブルが訴訟に発展した場合でも、弁護士は法廷での対応を全面的にサポートします。適切な証拠の準備や法的主張の構築を行い、依頼者の利益を守るために尽力します。