事業用定期借地権とは(借地借家法23条)|公正証書の必要性・存続期間などについて

今回は事業用定期借地権について説明します。

広い意味での定期借地権としては、一般定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付借地権がありますが、事業用定期借地権は、その名のとおり事業用に限られた定期借地権です。

事業用定期借地権は、存続期間により2種類に分けられています。

  • 存続期間が30年以上50年未満のもの(1項事業用定期借地権)
  • 10年以上30年未満のもの(2項事業用定期借地権)

どちらの事業用定期借地権についても実質的には同じ効果が発生しますが、要件は大きく異なっています。

事業用定期借地権の要件を満たさず、普通借地権になると、借地権設定者の権利は大幅に制限されることになりますので、事業用定期借地権の要件は正確に理解しておく必要があります。

今回は、この1項と2項の違いを意識しながら、事業用定期借地権について説明します。

この記事でわかること

✓事業用定期借地権とは
✓事業用定期借地権の要件は
✓ 事業用定期借地権の中途解約はできるのか
✓事業用定期借地権の登記は

借地借家法23条(事業用定期借地権等)
1 専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を三十年以上五十年未満として借地権を設定する場合においては、第九条及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。
2 専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を十年以上三十年未満として借地権を設定する場合には、第三条から第八条まで、第十三条及び第十八条の規定は、適用しない。
3 前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。

1 事業用定期借地権とは

事業用定期借地権とは、借地借家法23条に規定する定期借地権です。

広い意味での定期借地権には、

  • 一般定期借地権(借地借家法22条)
  • 事業用定期借地権(借地借家法23条)
  • 建物譲渡特約付借地権(借地借家法24条)

がありますが、事業用定期借地権はその一類型です。

一般定期借地権(借地借家法22条)との違いは、

  • 用途制限
  • 借地権の存続期間
  • 公正証書による契約が必要か

にあります。

一般定期借地権は

・用途制限がない
・借地権の存続期間は50年以上
・契約は書面であればよく、公正証書でなくていもよい

ですが、事業用定期借地権

・専ら事業の用に供する建物の所有を目的とすること
・借地権の存続期間を10年以上50年未満
・公正証書で契約しなければならない

となります。
比較のため表に示すと次のとおりとなります。
要件の違いについては、後ほど詳しく説明します。

一般定期借地権
(借地借家法22条)
事業用定期借地権
(借地借家法23条)
用途の要件なし専ら事業用途
存続期間50年以上30年以上50年未満(1項)
10年以上30年未満(2項)
契約書面であればよい
(公正証書でなくてよい)
公正証書でなければならない
定期借地権の存続期間です。

2 通常の借地権との違い

事業用定期借地権を含めた定期借地権は、通常の借地権(普通借地権)とは効果が大きく異なります。
それは、定期借地権については、

  • 借地権設定契約の更新
  • 建物の築造による存続期間の延長
  • 建物買取請求権

がないことです。
借地借家法は、借地権者の保護を目的としています。上記の3つは、借地権者の保護のために認められているものです。これが定期借地権では適用されないのです。

通常の借地権と一般定期借地権の主な違いは、こちらの記事を参考にしてください。

3 1項事業用定期借地権と2項事業用定期借地権

冒頭にも述べましたが、事業用定期借地権には、借地権の存続期間の違いにより、1項事業用定期借地権と2項事業用定期借地権の2種類に分かれています。
それぞれに要件が定められています。
以下、1項事業用定期借地権と2項事業用定期借地権の共通点と相違点に分けて説明していきます。

1項事業用定期借地権2項事業用定期借地権
条文借地借家法23条1項借地借家法23条2項
用途目的専ら事業の用に供する建物を所有する目的専ら事業の用に供する建物を所有する目的
存続期間30年以上50年未満10年以上30年未満
特約・更新をしないこと
・建物の築造による期間の延長がないこと
・建物買取請求をしないこと
なし
要式公正証書による契約公正証書による契約

3-1 共通点

  • 専ら事業の用に供する建物の所有を目的とすること
  • 公正証書によって契約しなければならないこと

については、1項事業用定期借地権と2項事業用定期借地権で成立要件は共通です。

3-2 相違点

1項事業用定期借地権と2項事業用定期借地権の要件の違いは、借地権の存続期間のほかには、

  • 更新をしない
  • 建物の築造による期間の延長がない
  • 建物買取請求をしない

ことの特約について、事業用定期借地権設定契約で定める必要があるかどうかです。

1項事業用定期借地権では、これらの特約を定めないと、そもそもにおいて定期借地権としての効果が発生しません。

これに対し、2項事業用定期借地権では、これらの特約を定める必要はありません。特約を定めなくても、実質的には1項事業用定期借地権と同じ効果が発生します。

これは、借地借家法23条2項の条文自体が

専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を10年以上30未満として借地権を設定する場合には、第3条から第8条まで、第13条及び第18条の規定は、適用しない。

とされていることにより、特約と定めた場合と同じ効果が発生する構成となっているからです。
つまり、

借地借家法3条~6条、8条、18条 借地権の更新
借地借家法7条 建物の築造による借地権の期間の延長
借地借家法13条 建物買取請求権

と考えられますが、これらの規定が適用されないことにより、1項事業用定期借地権設定契約で特約を定めたのと同じ効果が発生するのです。

以下、1項事業用定期借地権と2項事業用定期借地権のそれぞれについて、要件を確認していきます。

4 1項事業用定期借地権の要件

1項事業用定期借地権の要件は、

  1. 専ら事業の用に供する建物の所有を目的とすること
  2. 存続期間が30年以上50年未満
  3. 更新をしない特約があること
  4. 建物の築造による期間の延長がない特約があること
  5. 建物買取請求をしない特約があること
  6. 公正証書によって契約されていること

です。
一つずつ説明していきます。

4-1 専ら事業の用に供する建物の所有を目的とすること

事業用定期借地権は、専ら事業の用に供する建物の所有を目的とすることが必要となります。
それでは、専ら事業の用に供する建物とはどのような建物でしょうか。
ここが事業用定期借地権で一番問題となるところです。

事業には、営利目的から非営利目的まで、民間から公共まで、幅広く含まれます。
専ら事業の用に供する建物といっても、

  • オフィス
  • 工場
  • 店舗
  • 劇場
  • 競技場

といったものだけでなく

  • 病院
  • 学校
  • 幼稚園
  • 保育園
  • 宗教施設

といったものまで含まれます。

専ら事業の用に供する建物の意味は非常に漠然としているので、むしろ専ら事業の用に供する建物に含まれないものを考えた方がイメージがしやすいと思います。
そこで、専ら事業の用に供する建物に含まれない場合について、以下に説明します。

居住の用に供するもの

まず、居住の用に供する建物は、専ら事業の用に供する建物に含まれません。

借地借家法23条1項には、

専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ。)

と規定されています。
つまり、条文から、専ら事業の用に供する建物には、居住の用に供する建物は含まないことになります。

居住の用に供する建物とは、ある特定の人が継続的に起臥寝食(寝起き、食事など日常生活を送ること)する建物をいいます。

ですから、

  • 一戸建て
  • マンション

はもちろんのこと、

  • 老人ホーム
  • 社員寮

なども含まれます。

他方、

  • ホテル
  • 旅館

などは、人が寝起き、食事をしたりする建物ですが、特定の人が継続的にするものではないので、居住の用に供する建物には含まれません。

専らの意味

専ら」事業の用に供する建物とは、建物のすべてが事業の用に供されているものをいいます。
一部でも居住の用に供されている建物は、専ら事業の用に供されている建物にはなりません。

例えば、会社の敷地内に社員寮があったり、会社ビルの上階が社員寮になっている場合などは、専ら事業の用に供する建物とはいえず、事業用定期借地権とはならないので注意が必要です。

4-2 存続期間が30年以上50年未満

1項定期借地権の存続期間は、30年以上50年未満の範囲で確定期限で定める必要があります。
つまり、

・●年●月●日まで
・契約日から●年

といった形で30年以上50年未満の範囲で期限を確定させる必要があります。

・存続期間を定めない
・30年未満、50年超の存続期間を定めている
・存続期間の満期について幅を持たせて定めている

といった場合、1項事業用定期借地権としての効果は発生しません。

ただし、その場合でも1項事業用定期借地権設定契約が無効となるとは限りません。
契約内容によって、1項事業用定期借地権ではなくても、

  • 2項事業用定期借地権
  • 一般的借地権
  • 普通借地権

の設定契約としては有効と扱われることはあり得ます。

4-3 更新をしない特約があること

1項事業用定期借地権設定契約において、更新(借地借家法5条)をしない旨の特約を具体的に明記する必要があります。
1項事業用定期借地権設定契約書の表題に「事業用定期借地権契約」などと記載されていても、1項事業用定期借地権としての効力は発生しませんので注意が必要です。
これについては他の特約も同様です。

普通借地権の場合は、借地借家法9条により、更新しない特約をしても無効とされますが、1項事業用定期借地権については、借地借家法23条1項において「第9条の…規定にかかわらず」とされていることにより、更新しない特約をしても無効とならないのです。

4-4 建物の築造による期間の延長がない特約があること

1項事業用定期借地権設定契約 において、建物の築造による期間の延長(借地借家法7条)がない旨の特約を具体的に明記する必要があります。

普通借地権の場合は、借地借家法9条により、建物の築造による期間の延長がない特約をしても無効とされますが、1項事業用定期借地権については、借地借家法23条1項において「第9条の…規定にかかわらず」とされていることにより、更新しない特約をしても無効とならないのです。

4-5 建物買取請求をしない特約があること

1項事業用定期借地権設定契約 において、建物買取請求(借地借家法13条)をしない旨の特約を具体的に明記する必要があります。

普通借地権の場合は、借地借家法16条により、建物買取請求をしない特約をしても無効とされますが、1項事業用定期借地権については、借地借家法23条1項において「第16条の規定にかかわらず」とされていることにより、更新しない特約をしても無効とならないのです。

上記3つの特約を同時に定める必要があるかどうかについては考え方が分かれますが、登記実務上は、3つの特約は不可分であると考えられています。
そのため、少なくとも事業用定期借地権の登記する場合には、3つの特約をすべて定めることになるでしょう。

4-6 契約が公正証書によってされていること

一般定期借地権(借地借家法22条)については、書面であれば公正証書によることまでは要求されませんでしたが、事業用定期借地権設定契約は、公正証書によらなければなりません(借地借家法23条3項)。

5 2項事業用定期借地権の要件

2項事業用定期借地権の要件は、

  1. 専ら事業の用に供する建物の所有を目的とすること
  2. 存続期間が10年以上30年未満
  3. 公正証書によって契約されていること

です。
上記3つの要件の考え方は1項事業用定期借地権と同じです。
存続期間が1項事業用定期借地権とは異なる(10年以上30年未満)ことに注意しましょう。

2項事業用定期借地権では、

  • 更新をしないこと
  • 建物の築造による期間の延長がないこと
  • 建物買取請求をしないこと

については、特約を定めなくても、2項事業用定期借地権について定めた借地借家法23条2項の条文自体に「第3条から第8条まで、第13条及び第18条の規定は、適用しない」と定められていることから、1項事業用定期借地権と同じ効果が生じることはすでに説明しました。

6 事業用定期借地権の効果

1項事業用定期借地権と2項事業用定期借地権の効果

  • 更新をしない
  • 建物の築造による期間の延長がない
  • 建物買取請求をしない

という効果が認められます。
これは、1項事業用定期借地権、2項事業用定期借地権とも同じです。

ただし、次のとおり、効果の発生原因は異なりますので、法律的に厳密な意味では効果は同じではありません。

事業用定期借地権の別発生原因
1項事業用定期借地権 ・更新をしない特約
・建物の築造による期間の延長がない特約
・建物買取請求をしない特約
2項事業用定期借地権 【借地借家法23条2項の条項】
「第3条から第8条まで、第13条及び第18条の規定は、適用しない」

事業用的借地権の効果により、存続期間が満了すると借地権は消滅し、借地上に建物がある場合は更地にして返還することになります。
その他の事項については、借地借家法の規定に従います。

5-2  2項事業用定期借地権設定契約での特約

上に述べたとおり、2項事業用定期借地権については、

  • 専ら事業の用に供する建物の所有を目的とすること
  • 存続期間が10年以上30年未満
  • 公正証書によって契約されていること

という要件を満たすと、借地借家法第3条から第8条まで、第13条及び第18条の規定が適用されず、これにより、

  1. 更新をしない
  2. 建物の築造による期間の延長がない
  3. 建物買取請求をしない

という効果が得られます。

しかし、契約当事者としては、例えば、「建物の築造による期間の延長、建物買取請求はしないけど、更新はできるようにしたい」など、①~③の効果を全て発生させることを望まない場合もあるでしょう。

この場合は、例えば、「更新ができる」という特約を設けることによって(具体的には特約内容によります)、①の効果が発生しないようにすることができます。

7 事業用定期借地権の登記

事業用定期借地権の設定登記を申請する場合、借地借家法23条に基づく定期借地権であることが登記事項とされます。
また、添付書類としては、

借地借家法23条3項に基づく事業用定期借地権設定契約の公正証書の謄本

を提出する必要があります(不動産登記令別表の33項・38項)。

上でも述べましたが、登記実務では、1項事業用定期借地権の3つの特約は不可分であると考えられていますから、少なくとも1項事業用定期借地権の登記する場合には、3つの特約をすべて定めることになるでしょう。

8 借地権設定後に特約を定めることができるか

特約は、借地権設定時に成立させなければならないと考えられます。
借地権設定後に特約を追加することを認めると、地代・借賃の増額をしないかわりに定期借地権への転換を要求するなどして、借地権者が不利な状況に置かれる可能性があるからです。

裁判例においても、普通借地権から定期借地権への切り替えができるかについて、「相応の合理的理由があり、その中で、当事者間で真に合意されたといえる場合でなければ、別途契約を締結し直すことにより定期借地権に切り替える旨の合意が有効とはならない」とされています(東京地裁判決平成29年12月12日)。

9 借地権者は、事業用定期借地権設定契約を中途解約できるか

定期建物賃貸借では、やむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃貸借の解約の申入れができます(借地借家法38条5項)。

しかし、定期借地ではこのような規定は設けられていません。
したがって、原則的に借地権者は、定期借地権設定契約を中途解約することはできません。

中途解約する可能性がある場合は、定期借地権設定契約に中途解約権を留保する特約を設けておく必要があります。

借地権設定者の中途解約権を留保する特約を設けることは、借地権者に不利な特約であるため無効となります(借地借家法9条)。

10 まとめ

今回は事業用定期借地権について説明しました。

  • 事業用定期借地権には、借地権の存続期間の違いにより、1項事業用定期借地権(30年以上50年未満)と2項事業用定期借地権(10年以上30年未満)の2種類に分かれている。
  • 専ら事業の用に供する建物の所有を目的とするとは、居住の用に供するものでないこと、建物のすべてが事業の用に供されていることを意味する。
  • 事業用定期借地権設定契約は公正証書によってされていることが必要。
  • 事業用定期借地権の効果は、①更新をしない、②建物の築造による期間の延長がない、③建物買取請求をしないことであるが、1項事業用定期借地権と2項事業用定期借地権では要件が異なる。
  • 2項事業用定期借地権では、効果の一部を発生させない特約をすることも可能。
  • 少なくとも1項事業用定期借地権の登記する場合には、3つの特約をすべて定めることになる。特約は、借地権設定時に成立させなければならない。
  • 原則的に借地権者は、定期借地権設定契約を中途解約することはできない。



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