
借地権について知りたい人「家を建てたいという人に土地を貸すことになったのだけれど、一旦貸したらもうこちらからは返してとは言えなくなるの?」
弁護士の佐々木康友です。
これまでの業務経験を踏まえて、こういった疑問に答えます。
- 借地権とは
- 借地権が成立する要件は
- 借地権者・借地権設定者のメリット・デメリット
- 借地権の効力は
- 借地権にはどのような種類があるか
今回は借地権について説明します。
借地権とは
借地権(借地借家法2条1号)とは、
建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権
です。
借地権というと、一般的には、土地を借りる権利をイメージしますが、法律的には、借地借家法に厳密に定義されていて、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権(借地借家法2条1号)とされています。
つまり、借地権とは、法律的には、単に土地を借りるのではなく、建物の所有を目的として土地を借りる(地上権の設定も含む)権利だということです。
そして、土地を貸す側を借地権設定者、土地を借りる側を借地権者といいます。
土地の利用権が、借地借家法の借地権に該当すると、同法に基づいて、土地の利用者は手厚く保護されます。
借地権に該当するかどうかは、土地を貸す側にとっても、借りる側にとっても権利の強さに大きな影響を与えることとなるため、どのような場合に借地借家法の借地権に該当するのかについて理解しておくことは重要です。


キーワードに分解すると、次のとおりとなります。
- 建物所有目的
- 地上権
- 土地の賃借権
まず、①建物所有目的は絶対的な要件です。建物所有目的でない土地の利用権は、借地権とはなり得ません。
一方、②地上権と③土地の賃借権はどちらでも構いません。地上権は物権で、土地の賃借権は債権という違いがありますが、どちらも土地を利用する権利であることには変わりがありません。
以下、キーワードごとに何を意味するのかを説明します。
①建物所有目的
建物所有目的とは
借地権の最初の要件は、建物所有目的です。
建物所有目的であるとは、建物の所有を主たる目的として土地を借りることを意味します。
これをキーワードに分解すると、
- 借地上に設置される建造物が建物であること
- 土地を借りる主たる目的が建物を所有することにあること
のいずれにも該当することを意味します。
ある土地の利用権が、建物所有目的であるかどうかは、土地の貸主と借主の契約の内容により決まります。
したがって、契約書などで建物所有目的で土地を借りることが明確に定められていれば問題はないのですが、その点が曖昧な場合は、様々な事情を考慮して、土地の利用権が、建物所有目的かどうかを判断することになります。
借地上に設置される建造物が建物であること
建物の判断基準
建物所有目的といえるためには、まず、借地上に設置される建造物が建物であることが必要です。
それでは、建物とはどのようなものを指すのでしょうか。
借地借家法の建物に該当すると、同法により借地権者は手厚い保護を受けることになりますので、建造物であれば何でも建物とされるのでははく、一定の要件を備えたものに限定されています。
借地借家法における建物とは、一般には、
土地に定着し、周壁・屋根を有し、住居・営業・物の貯蔵等の用に供することができる永続性のある建造物
のことをいいます。
建築基準法では、建築物とは、「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨こ線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。」とされています(建築基準法2条1号)。
建築基準法の建築物と借地借家法の建物は同じ意味ではないことに注意が必要です。
やや意味が分かりにくいですが、分解して考えると、
- 土地に定着
- 壁・屋根を有する
- 住居・営業・物の貯蔵等の用に供する
- 永続性がある
がポイントとなります。
壁と屋根がないと、大体は建物とはされません。基礎・柱(壁構造は別)がないのも、土地に定着していないとして建物とは認められない可能性があります。
こういったものは永続性がないとされます。
一方、建物の用途は限定されず、また、登記があるかも問われません。住居・営業・物の貯蔵等の用に供するというのは例を示したものであって、これに限定されるものではありません。
このように、建物に該当するかどうかは物理的構造が主な判断基準となります。
ただし、実務上は、物理的構造のみで判断されているのではなく、
・契約書の内容
・存続期間
・賃料
・土地・建物の利用状況・経緯
なども踏まえ、借地借家法を適用して土地の利用者を保護すべきかを判断しています。
建物に該当する場合
例えば、木造トタン葺のバスの待合所兼切符売場であっても、25年の長きにわたって、大きさ・位置を変えることなく利用されていることから、借地借家法の建物に該当するとさています(東京地方裁判所昭和47年7月25日)。
これは、簡易な構造のものであっても、長年にわたり利用されている状況・経緯も踏まえて、借地借家法の借地権として保護すべきとされたものと考えられます。
建物に該当しない場合
次のようなものが、建物に該当しないと判断されています。
- 国鉄による鉄道高架下の土地の賃貸借契約(神戸地裁令和2年2月20日他多数)
- 露店設備(屋根:トタン・テント、壁:戸板風の板囲、土台・床板・柱:なし)(京都地方裁判所昭和60年10月11日)
- 土地の全面にコンクリートを打ったうえ、軽量鉄骨の柱をたてて縦横に梁を渡し、その上にトタン板を張って片流れ式の屋根とした工作物(大阪高等裁判所昭和54年7月19日)
鉄道高架下の建造物については、一般の土地賃貸借契約とは異なる特殊な契約であり、借地借家法は適用されないとされないと判断されるケースが多いです。
鉄道高架下の建造物について建物であることが否定された事例は多数あります。
以下に、参考に神戸地方裁判所令和2年2月20日の裁判例を抜粋しておきます。
このような本件各土地の物理的ないし客観的状況に鑑みれば、本件各土地は、いずれもその上空及び地中を自由に使用できる状況にはなく、本件各賃貸借契約に基づき利用することのできる空間は極めて限定的であることが認められる。
また、原告は、法令の定めに基づき、定期的に高架橋の点検を行わなければならず、それに伴い高架下である本件各土地内に立ち入ることが当然予定されている。
さらに、本件各土地の上空には鉄道高架橋及び駅施設があり、公共性の高い鉄道が走り、その利用客の用に供されていることから、原告は、その営む鉄道事業に支障が生じないよう賃借人の本件各土地の使用につき、種々の制約を加えている。すなわち、原告は、本件各土地について、高架下土地建物設置基準を定め、本件各賃貸借契約において、施設物の建築及びその増改築等については原告の承諾を要する旨定めており、被告Y1が本件建物①の模様替え及び補修をした際にも、各種の届出書等の提出が求められていたことが認められる。
さらに、本件各賃貸借契約には、原告が本件各土地を事業の用に供する必要が生じたときには、契約期間中であっても、本件各賃貸借契約を解除することができる旨の定めがあるほか、原告による危険予防の観点から必要に応じて立入調査ができ、被告らはこれを拒むことができない旨の定めがあり、現に防火の観点から立入調査が行われたことが認められる。
これらの事実によれば、本件各土地を利用するに当たっては、鉄道高架下土地であるが故の物理的な制約があるほか、本件各賃貸借契約においても原告が営む鉄道事業の公共性に伴い、本件各土地上に設置する建物を含む施設物の建築及び補修並びにその利用に一般的な建物所有目的の土地賃貸借契約には見られない種々の制約が定められ、実際にも原告がこれに則った管理を行っていることが認められる。
そして、本件各賃貸借契約の賃料は、相当賃料に比して半額ないしその5分の1程度という低廉な額であり、これは本件各土地の性質上ないし本件各賃貸借契約上、被告らに課された種々の制約を反映したものであることが認められる。
これらに照らせば、本件各賃貸借契約は、いずれも建物所有目的の土地の賃貸借契約ではなく、一般の土地賃貸借契約とは異なる特殊な契約であり、借地法は適用されないというべきである。
土地を借りる主たる目的が建物を所有することにあること
建物の所有が主たる目的であるとは
建物所有目的といえるためには、まず、建物の所有を主たる目的として土地を借りることが必要です。
借地人が借地上に建物を所有していても、それが土地を借りる主たる目的ではなく、従たる目的に過ぎない場合は、建物所有目的とはされません。
つまり、
- 土地自体の利用が主たる目的か
- 土地上の建物の所有(利用)が主たる目的か
を判断することになります。
ただし、土地の利用目的によっては、土地・建物のどちらか一方ではなく、土地の利用も建物の所有のどちらも不可欠という場合もあり得るでしょう。
この場合、土地・建物が一体となってはじめて、その土地を借りた目的が達成されるといえれば、たとえ建物が建築されているのが土地の一部であったとしても、建物の所有を主たる目的と判断され得ます。
建物の所有が主たる目的かどうか問題となるのは次の二つの場合です。
- 借地の一部に建物を建築する場合
- 借地上には建物がない場合
それぞれについて検討していみます。
借地の一部に建物を建築する場合
自動車教習所、ゴルフ練習場、バッティングセンターなどでは、建物を建築するのは土地の一部になりますので、土地全体を借りている場合、建物の所有を主な目的として土地を借りているといえるのか問題となります。
借地人が建築した建物の面積が、借地全体の面積に比べて著しく小さくても、そのこと自体が建物所有目的を否定することにはなりません。
・契約書の内容
・土地・建物の利用状況・経緯
などから、建物を建築することが不可欠であり、土地・建物が一体となってはじめて土地を借りた目的が達成されるという場合は、建物の所有が主たる目的といえます。
- 自動車教習所の教室・事務室・車庫等の建物(東京地方裁判所平成2年6月27日他)
- バス発着場兼乗降場に設置された待合所兼切符売場(東京地方裁判所昭和47年7月25日)
- 中古車展示販売場の事務所と整備工場等(東京地方裁判所平成7年7月26日他)
- 幼稚園の園舎敷地に隣接する土地をその運動場(最高裁判所平成7年6月29日)
- 園芸用植木の植込場及び陳列販売場に設置された店舗兼事務所(広島高等裁判所平成5年5月28日)
- 釣掘に設置された営業用事務室・居住用の部屋・炊事場(東京高等裁判所昭和57年9月8日)
- 養鱒場に設置された管理人事務所兼宿舎(宇都宮地方裁判所昭和54年6月20日)
- ゴルフ練習場に設置される事務所用等(最高裁判所昭和42年12月5日)
- バッティング練習場に設置された管理人事務所(最高裁判所昭和50年10月2日)
- ゴルフ場に設置されるクラブハウス等(千葉地方裁判所昭和48年3月29)
- セメント瓦等建築材料置場に設置される事務所(最高裁判所昭和38年9月26日)
借地上には建物がない場合
借地上に建物はなくても、隣接地に建物があり、借地も隣接地の建物のために使用されている場合にも、建物の所有を主な目的として土地を借りているといえるのか問題となります。
この場合についても、隣接地の建物を利用するためには、借地の利用が不可欠といえる場合は、建物の所有が主たる目的といえます。
- タクシー営業所の事務所建物に隣接する車庫・駐車場(東京地方裁判所平成3年11月28日)
- デパートの仕入センターから公道に出るための通路、駐車場、物品置場(東京地方裁判所昭和52年12月15日)
- 幼稚園園舎の隣接地の運動場(最高裁判所平成7年6月29日)
- 工場・住居建物に隣接する駐車場(東京地方裁判所平成4年9月28日)
- 住居建物から公道に出るまでの通路(東京高等裁判所昭和57年6月10日)
建物所有目的に必要とされる範囲が土地の一部である場合
土地の利用権について、建物所有目的が認められたとしても、その範囲が土地の一部に制限されてしまう場合があります。
借地借家法が借地権を手厚く保護しているのは、建物を所有するという土地の使用目的を全うさせるためです。
そのため、借地借家法の保護を受けるのは、建物所有目的のために通常必要であると客観的に認められる範囲・建物の所有に現実に必要であると認められる範囲に限られ、これを超える部分については借地借家法の適用はないとされることがあります。
実際にこのように判断された裁判例があります(神戸地方裁判所昭和62年2月27日)。
この裁判例では、次のような事情により、土地のうち、家庭菜園として使用されている部分については建物所有の目的とはいえないとされました。
A部分は、被告所有の建物の敷地及び囲繞地であるB部分とは明確に区別される状況にあり、従来専ら家庭菜園としてのみ使用され、建物の敷地等として使用されたことは一度もないというのであり、被告所有建物の規模、用法等に照らして、4部分がなければその所有目的を全うすることができないとは到底いえないし、また、同部分を家庭菜園として使用しなければ同建物を住居として使用する上で著しい不便があるというような特別の事情も見当らない。
そうすると、結局、A部分は、建物所有目的のために通常必要であると客観的に認められる範囲ないし存在する建物の所有に現実に必要であると認められる範囲には含まれないといわざるを得ず、したがって、この部分については借地法の適用はなく、期間の定めのない賃貸借である
建物が存在しない場合
借地契約では建物所有目的とされているのに、建物がいつまで経っても建築されないという場合もあります。
基本的な考え方として、土地の利用権が建物所有目的とするかどうかは、土地の貸主と借主の借地契約の内容により決まります。
したがって、仮に建物が建築されなかったとしても、そのことだけを理由として、建物所有目的が否定されるわけではありません。
しかし、建物が建てられないまま長期間放置されたり、一旦建築された建物が解体され、その後長期間放置された場合には、建物所有目的の賃貸借契約は終了したと判断される場合はありますので注意が必要です。
②地上権
借地権とは、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいいます。
建物所有目的の要件をクリアしたら、次は、土地の利用権が地上権又は土地の賃借権であるかが問題となります。
まずは、地上権とは何かについて説明します。
地上権とは、他人の土地上に工作物又は竹木を所有するために、土地を使用する権利です(民法265条)。
地上権は物権です。
これに対し、土地の賃借権は債権です。
物権は、債権と異なり、独占的・排他的な権利です。
独占的とは、土地についてある人に地上権が設定された場合、他の者には地上権を設定することができないということです。
排他的とは、誰に対しても地上権を主張できるということです。
地上権は、土地の賃借権とは違い、
特徴 | 説明 |
---|---|
登記請求権がある | 土地所有者に地上権の登記を請求できる |
自由に譲渡できる | 土地所有者の承諾なく地上権を第三者に譲渡できる |
抵当権を設定できる | 土地に設定された地上権に抵当権を設定できる |
無償でもよい | 賃借権は賃料の支払いが必要となる |
という特徴があります。
それだけ強い権利であるといえます。
民法上、地上権には存続期間の制限はありませんが、借地借家法上の借地権とされると、厳格な期間制限(30年ルール)が課されます(借地借家法3、4条)。
③土地の賃借権
次に土地の賃借権です。
土地の賃貸借契約とは、賃貸人が賃借人に対し、土地を使用収益させることを約し、賃借人が賃料を支払うことと引渡しを受けた土地を契約終了時に返還することを約する契約です。
つまり、土地の賃借権とは、賃料を対価として、賃貸人に対し、土地の使用収益を求めることのできる権利です。
土地の賃借権の特徴は、対価の伴う有償契約であることです。
同じく借地権となる地上権は無償でもよいのですが、土地の賃借権は有償であることが前提条件となります。無償の場合は使用借権となり、借地借家法の保護の対象とはなりません。
借地権者・借地権設定者・ 転借地権・転借地権者
借地権が設定された場合の各当事者の名称を確認しておきましょう。


借地権者とは
これまで述べた要件を満たすと、土地の利用権は借地権となり、借地借家法による手厚い保護を受けることになります。
借地権者とは、借地権を有する者をいいます(借地借家法2条2号)。
なお、借地権者には転借地権者(借地借家法2条5号)も含まれます。そのため、転借地権者についても、借地借家法における借地権者についての規定が適用されます。
借地権設定者とは
借地権設定者とは、借地権者に対して借地権を設定している者をいいます。
ややこしい言い方ですが、要するに土地の貸主のことです。
借地権設定者は、多くの場合は土地の所有者となります。
ただし、借地権設定者となるのは土地の所有者だけではありません。
借地権者が第三者に建物所有目的で土地を賃貸(転貸)する場合には、借地権者が借地権設定者となることに注意が必要です。
転借地権・転借地権者
借地権者が、第三者に建物所有目的で土地を賃貸する(転貸)ことがであります。
建物の所有を目的とする土地の賃借権で借地権者が設定するものを転借地権といい(借地借家法2条4号)、転借地権を有する者を転借地権者といいます(借地借家法2条5号)。
借地権者が第三者に対して地上権を設定することはできません。
設定できるのは土地の賃借権のみです。
地上権は、土地の所有者しか設定できないからです。
借地権の効力
土地の利用権が、借地借家法の借地権に該当すると、同法に基づいて、土地の利用者は手厚く保護されます。
主なものを一覧で示すと次のとおりです。
これらの規定に反する特約で借地権者に不利なものは無効とされます(借地借家法9条、16条)
ここでは、各項目について概略を説明します。
- 借地権の存続期間(借地借家法3条)
- 借地権の更新後の期間(4条)
- 借地契約の更新請求等(5条)
- 借地契約の更新拒絶の要件(6条)
- 建物の再築による借地権の期間の延長(7条)
- 借地契約の更新後の建物の滅失による解約等(8条)
- 借地権の対抗力等(10条)
- 建物買取請求権(13条)
- 第三者の建物買取請求権(14条)
借地権の存続期間(借地借家法3条・4条)
借地借家法における借地権の存続期間は30年です。借地契約において存続期間を定めなった場合も30年となります。
ただし、30年以上の期間を定めた場合はその期間が存続期間となります(借地借家法3条)。
反対に30年未満の存続期間を定めると無効となり(借地借家法9条)、原則通りに30年の存続期間となります。
借地契約の更新の場合、最初の更新の場合は更新の日から20年、2回目以降の更新の場合は更新の日から10年が存続期間となります。
ただし、それより長い期間を定めた場合はその期間が存続期間となります(借地借家法4条)。
20年又は10年未満の存続期間を定めると無効となり、原則通りに10年又は20年の存続期間となることは、最初の借地契約の場合と同じです。
借地権の存続期間については、次の記事で詳しく説明していますから参考にしてください。
借地契約の更新請求等(借地借家法5条・6条)
借地権の存続期間が満了する場合、従前の契約と同一の条件で更新することができます(借地借家法5条1項)。
ただし、存続期間については、最初の更新の場合は20年、2回目以降の更新の場合は10年となります(借地借家法4条)。
借地権設定者は遅滞なく異議を述べることはできますが、正当事由がない限り更新を拒絶することはできません(借地借家法6条)。
借地権の存続期間の満了後、借地権者が土地の使用を継続している場合も、従前の契約と同一の条件で更新することができます(借地借家法5条2項)。
建物の再築による借地権の期間の延長(借地借家法7条)
借地権の存続期間が満了する前に建物が取壊し等された場合、借地権設定者から再築の承諾が得られれば、借地権の存続期間は、承諾の日か再築の日から20年延長されます(借地借家法7条1項)。
借地権者から借地権設定者に再築の通知があったのに、2ヶ月以内に異議を述べない場合も承諾があったものとみなされます(借地借家法7条2項)。
借地契約の更新後の建物の滅失による解約等(借地借家法8条)
借地契約の更新後に建物の取壊し等があった場合は、借地権者は、地上権の放棄又は土地の賃借権の解約の申入れができます(借地借家法8条1項)。
借地権者が、借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超える建物を再築したときは、借地権設定者が地上権の消滅又は土地の賃借権の解約の申入れをすることができます(借地借家法8条2項)。
これらの場合、地上権の放棄又は土地の賃借権の解約の申入れの日から3ヶ月が経過することにより、借地権は消滅します(借地借家法8条3項)。
借地権の対抗力等(10条)
土地の賃借権の登記がなくても、土地上に借地権者の所有する建物があって、その建物について登記があれば、借地権を主張できます(借地借家法10条1項)。
つまり、建物の登記により、借地権の登記と同じ効力を得ることができます。
借地借家法10条の規定上、借地権を対抗できるとありますので、借地権が、土地の賃借権だけでなく、地上権の場合であっても、建物の登記を備えることによって、借地権を対抗することができるようになります。
つまり、地上権の場合は、借地権の対抗手段として、地上権を登記する方法と、建物を登記する方法があります。
借地権の対抗力(対抗要件)については、次の記事で詳しく説明していますから参考にしてくだい。
建物買取請求権(借地借家法13条・14条)
借地権の存続期間が満了し、契約の更新がない場合、借地権者は、借地権設定者に対し、借地権者の建物を時価で買い取るように請求できます(借地借家法13条1項)。
第三者が借地権者の建物を取得した場合にも、借地権設定者に対し、借地上の建物を時価で買い取るように請求できます(借地借家法14条)。
借地権の種類
借地権には、借地借家法3条~21条までが適用される普通借地権のほか、同法22条~24条の定期借地権、同法25条の一時使用目的借地権があります。
普通借地権
これまで説明してきたのが普通借地権です。普通借地権は法律用語ではありませんが、以下に述べる定期借地権や一時使用目的借地権のように特別な性質を持つ借地権と区別するために「普通」借地権といっています。
定期借地権
定期借地権とは、一定期間経過後、借地関係が確定的に終了して、土地が返還される借地権です。
定期借地権には、一般定期借地権(借地借家法22条)、事業用定期借地権(借地借家法23条)、建物譲渡特約付借地権(借地借家法24条)があります。
一般定期借地権は、次のような性質があります。
・用途制限がない
・借地権の存続期間は50年以上
・契約は書面であればよく、公正証書でなくていもよい
一般定期借地権については、次の記事で詳しく説明していますから参考にしてくだい。
これに対し、事業用定期借地権は、次のような性質があります。
・専ら事業の用に供する建物の所有が目的
・借地権の存続期間を10年以上50年未満
・公正証書で契約しなければならない
事業用定期借地権については、次の記事で詳しく説明していますから参考にしてくだい。
一時使用目的の借地権
臨時設備の設置その他一時用のために借地権を設定したことが明らかな場合は、一時使用目的の借地権とされます(借地借家法25条)。
元々、土地を一時的に使用する目的しかなく、借地権者にとってもこのように手厚い保護は必要ない場合もあります。
そのような場合にまで、借地借家法上の借地権者の保護規定を適用することとなると、取引の実態にそぐわわない過度の規制ということになるでしょう。
そこで、土地の利用実態などから、一時使用目的の借地権であると認められる場合には、上記の借地権者の保護規定を適用しないこととされています。
一時使用目的の借地権については、次の記事で詳しく説明していますから参考にしてくだい。