一時使用目的の借地権について(借地借家法25条)|借地借家法の規定が適用されない場合

今回は一時使用目的の借地権について説明します。

1 一時使用目的の借地権とは

1-1 借地借家法の借地権

土地の利用権が借地借家法上の借地権建物所有を目的とする地上権又は土地の賃借権。借地借家法2条1号)に該当すると、次のとおり、借地借家法の規定が適用されて、借地権者は手厚い保護を受けることになります。

  • 借地権の存続期間(借地借家法3条)。
  • 借地権の更新後の期間(4条)
  • 借地契約の更新請求等(5条)
  • 借地契約の更新拒絶の要件(6条)
  • 建物の再築による借地権の期間の延長(7条)
  • 借地契約の更新後の建物の滅失による解約等(8条)
  • 建物買取請求権(13条)
  • 借地条件の変更及び増改築の許可(17条)
  • 借地契約の更新後の建物の再築の許可(18条)
  • 定期借地権(22条)
  • 事業用定期借地権等(23条)
  • 建物譲渡特約付者借地権(24条)

これらは強行規定ですから、借地契約で借地権者に不利な規定を定めても、その規定は無効となります(借地借家法9条、16条)。

借地借家法の借地権についてはこちらの記事を参考にして下さい。

1-2 一時使用目的の借地権

しかし、元々、土地を一時的に使用する目的しかなく、借地権者にとってもこのように手厚い保護は必要ない場合もあります。
そのような場合にまで、借地借家法上の借地権者の保護規定を適用することとなると、取引の実態にそぐわわない過度の規制ということになるでしょう。

そこで、土地の利用実態などから、一時使用目的の借地権であると認められる場合には、上記の借地権者の保護規定を適用しないこととされています(借地借家法25条)。
以下では、賃貸借契約を前提に説明をしていきます。

借地借家法25条(一時使用目的の借地権)
第三条から第八条まで、第十三条、第十七条、第十八条及び第二十二条から前条までの規定は、臨時設備の設置その他一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合には、適用しない。

一時使用目的の借地権は、借地権(建物所有を目的とする地上権又は土地の賃借権。借地借家法2条1号)であることが前提です。建物所有を目的としているとはいえない場合には、借地借家法上の借地権とはならず、そもそも上記の規定は適用されません。

2 一時使用目的の要件

借地借家法25条には、一時使用目的について、「臨時設備の設置その他一時用のために借地権を設定したことが明らかな場合」と規定されています。

借地権が一時使用目的とされると、借地権者の保護は大きく後退することになります。
そこで、借地借家法25条では、「明らかな場合」という規定されていることからも分かるように、一時使用目的である場合は狭く解釈される傾向にあります。

そのため、例えば、借地契約書に「一時使用目的」と書いてあるだけで一時使用目的と認められるのでなく、実務上は、次のような様々な観点から、一時使用目的といえるかどうかが総合的に判断されています。

  • 土地の利用目的
  • 地上建物の種類・設備・構造
  • 賃貸借期間
  • 賃貸借終了後の土地の利用目的
  • 権利金の支払い
  • 賃料

2-1 土地の利用目的、地上建物の種類・設備・構造

・イベント用の簡易な建物
・建築工事のための事務所・資材置場
・仮設店舗

といったものの場合、一時使用目的とされやすくなります。

プレハブなど建物が撤去・移動しやすいものは一時使用目的とされやすく、反対に、鉄骨造・鉄筋コンクリート造など建物が堅牢なものは一時使用目的とはされにくくなるといえるでしょう。

また、建物に容易には撤去できない設備が多数設置されている場合にも一時使用目的とはされにくくなります。

プレハブなど建物が撤去・移動しやすいものは一時使用目的とされやすく、反対に、鉄骨造・鉄筋コンクリート造など建物が堅牢なものは一時使用目的とはされにくくなるといえるでしょう。

2-2 賃貸借期間

賃貸借期間が短いほど一時使用目的とされやすく、反対に、賃貸借期間が長いほど一時使用目的とされにくくなります。

年数の基準がある訳ではありませんが、賃貸借期間が10年を超えると一時使用目的とはならないことが多いといえます。
10年以下だと、他の要素との総合評価により、一時使用目的とされる場合もされない場合もあります。

年数の基準がある訳ではありませんが、賃貸借期間が10年を超えると一時使用目的とはならないことが多いといえます。 10年以下だと、他の要素との総合評価により、一時使用目的とされる場合もされない場合もあります。

賃貸借期間は短いけれども、契約の更新が繰り返された結果、全体的には賃貸借契約が長期にわたっている場合もあります。
この場合も一時使用目的が否定されるとは限りません。
一時使用目的の賃貸借契約を維持したまま、更新が繰り返されるということはあり得ます。

・2年ごとに更新されて25年以上継続した場合(東京地判平成3年3月27日)
・2年ごとに更新されて20年以上継続した場合(東京地判平成5年9月24日)
・1年ごとに更新されて20年以上継続した場合(東京地判平成6年7月6日)

にも一時使用目的が肯定されたケースがあります。

2-3 賃貸借期間経過後の土地利用

賃貸借期間が経過した後、他の目的で土地利用することが予定されている場合があります。

賃貸借契約が予定されている土地利用を開始するまでの暫定的なものとされている場合には、一時使用目的とされやすいです。

例えば、土地区画整理事業の区域内で、暫定的に資材置場として使用させておいて、土地区画整理事業の完了後は、その土地を分譲予定としている場合などです。

2-4 賃料・権利金等の条件

賃料が相場よりも安い場合は、一時使用目的とされる可能性があります。
近い将来に土地を明け渡すことが予定されているからこそ、賃料が安いということはよくあることだからです。
例えば、再開発事業の予定地域内などでは、賃料は相場より安くなっていたりします。

賃料が相場よりも安い場合は、一時使用目的とされる可能性があります。

物価上昇にもかかわらず、長年にわたり賃料が増額されていない場合も一時使用目的とされる可能性があります。
反対に賃料が増額された場合は、一時使用目的とされない可能性があります。

権利金については、受けていない場合は一時使用目的とされ、受けていない場合は一時使用目的とされない可能性があります。

3 一時使用目的の効果 

一時使用目的の借地権とされる場合には、借地借地法の次の規定は適用されません。
その他の借地借家法の規定は適用されます。

借地借家法は民法の特別法にあたりますので、借地借家法の規定が適用されない場合は、一般法である民法の賃借権(601条~)・地上権(265条~)の関連する規定が適用されることになります。

  • 借地期間(借地借家法3条)
  • 更新後の借地期間(4条)
  • 契約更新請求(5条)
  • 更新拒絶における正当事由(6条)
  • 建物再築による借地期間の延長(7条)
  • 更新後の建物滅失による解約(8条)
  • 建物買取請求権(13条)
  • 借地条件変更・増改築許可手続(17条)
  • 借地契約更新後の建物再築の許可手続(18条)
  • 一般定期借地権(22条)
  • 事業用定期借地権(23条)
  • 建物譲渡特約付者借地権(24条)

一時使用目的の借地権の場合、借地権の存続期間を30年以上とする規定(借地借家法3条)は適用されないので、借地権の存続期間の定めのない借地契約も可能となります。
反対に、一般法である民法の規定が適用される結果、50年を超える借地権の存続期間を設定することができず、借地契約で50年を超える期間を定めても50年に短縮されます(民法604条)。

また、借地契約の更新拒絶の要件である正当事由の規定(借地借家法6条)も適用されないので、更新拒絶をするにあたり正当事由は求められませんが、賃貸借契約において更新の規定がある場合には借地権者にも更新できるとの期待があるため、恣意的な更新拒絶は許されないとされます(東京地判昭和55年4月4日)。

借地権の存続期間については次の記事を参考にして下さい。