一般定期借地権とは(借地借家法第22条)|公正証書は必要か、普通借地権・事業用定期借地権との違いは

普通の借地権(普通借地権)では、借地権の存続期間が満了しても、賃貸人は正当事由がなければ更新を拒絶できません(借地借家法6条)。
裁判所は容易には正当事由を認めず、仮に認めても多額の立退料の支払いと引換えが命じられることが多いです。

これは借地権者の権利を保護することにはなりますが、いったん土地を賃貸すると借地権が消滅しないことから、土地所有者が土地を賃貸しようとせず、土地活用が阻害されることにもなります。

そこで、借地借家法において、一定期間経過後、借地関係が確定的に終了して、土地が返還される制度が創設されました。
これを定期借地権といいます。

定期借地権の場合、存続期間が満了すると借地権は消滅し、借地上に建物がある場合は更地にして返還することになります。

広い意味の定期借地権としては、一般定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付借地権がありますが、今回は、一般定期借地権について説明します。

1 一般定期借地権とは

一般定期借地権とは、借地借家法22条に規定する定期借地権です。
広い意味での定期借地権には、

  • 一般定期借地権(借地借家法22条)
  • 事業用定期借地権(借地借家法23条)
  • 建物譲渡特約付借地権(借地借家法24条)

がありますが、一般定期借地権はその一類型です。

一般定期借地権と事業用定期借地権の違いは、

・用途制限
・借地権の存続期間
・公正証書による契約が必要か

にあります。
事業用定期借地権は

・専ら事業の用に供する建物の所有が目的
・借地権の存続期間を10年以上50年未満
・公正証書で契約しなければならない

一般定期借地権は

・用途制限がない
・借地権の存続期間は50年以上
・契約は書面であればよく、公正証書でなくていもよい

となります。

一般定期借地権
(借地借家法22条)
事業用定期借地権
(借地借家法23条)
用途の要件なし専ら事業用途
存続期間50年以上30年以上50年未満(1項)
10年以上30年未満(2項)
契約書面であればよい
(公正証書でなくてよい)
公正証書でなければならない
定期借地権の存続期間です。

借地借家法22条の見出しは「定期借地権」となっていますが、以後はこれを「一般定期借地権」として説明します。

事業用定期借地権について知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。

2 普通借地権との違い

一般定期借地権と普通借地権の主な違いは、一般定期借地権については、

  • 借地権設定契約の更新をしない
  • 建物の築造による存続期間の延長がない
  • 借地権者に建物買取請求権がない

ことです。

2-1 借地権設定契約の更新がない

普通借地権では、存続期間が満了しても、借地権者は更新請求ができます(借地借家法5条)。
借地権設定者は、正当事由がなければ更新を拒絶できません(借地借家法6条)。

これに対し、一般定期借地権では、借地権設定契約の更新がありません。

2-2 建物の築造による存続期間の延長がない

普通借地権では、存続期間満了前に建物を再築すると、存続期間が延長する場合があります(借地借家法7条)。

これに対し、一般定期借地権では、存続期間の延長はありません。

2-3 借地権者に建物建物買取請求権がない

普通借地権では、存続期間満了後、更新がない場合、借地権者は、借地権設定者に対し借地上の建物を時価で買い取るように請求ができます(借地借家法13条)。

これに対し、一般定期借地権では、建物買取請求権がありません。

普通借地権についてはこちらの記事を参考にしてください。

3 一般定期借地権の要件

一般定期借地権の要件を示すと次のとおりです。

  1. 存続期間が50年以上
  2. 更新をしない特約があること
  3. 建物の築造による期間の延長がない特約があること
  4. 建物買取請求をしない特約があること
  5. 公正証書等の書面によって特約が定められていること

上記のうち、②~④の特約については、すべて定める必要があるかどうかについては考え方が分かれます。
しかし、登記実務上は、②~④の3つの特約は不可分であると考えられています。
そのため、少なくとも一般定期借地権の登記する場合には②~④の特約をすべて定めるべきでしょう。

以下、ひとつずつ説明していきます。

なお、一般定期借地権設定契約のひな形はこちらの定期借地権推進協議会HPに掲載がありますので参考にしてください(使用については、当該HPの規定に従ってください。)。

一般定期借地権の要件が欠けていて普通借地権が成立した場合、特約の効力はどうなるのですか。

一般定期借地権が成立しない以上、借地借家法9条及び16条により特約は無効となります。

3-1 存続期間が50年以上

存続期間は、50年以上の確定期限で定める必要があります。
つまり、

・●年●月●日まで
・契約日から●年

といった形で50年以上の期限を確定させる必要があります。

・存続期間を定めない
・50年未満の存続期間を定めている
・「永久」と定めている
・「●年以上」と定めている

といった場合、一般定期借地権の特約は無効となり、普通借地権として扱われることになるものと考えられます。

3-2 更新をしない特約があること

借地権設定契約において、更新(借地借家法5条)をしない旨の特約を具体的かつ明瞭に記載する必要があります。
借地権設定契約書の表題に「一般定期借地権契約」などと記載されていても、一般定期借地権としての効力は発生しませんので注意が必要です。
これについては他の特約も同様です。

普通借地権の場合は、借地借家法9条により、更新しない特約をしても無効とされますが、一般定期借地権については、借地借家法22条において「第9条の…規定にかかわらず」とされていることにより、更新しない特約をしても無効とならないのです。

3-3 建物の築造による期間の延長がない特約があること

借地権設定契約において、建物の築造による期間の延長(借地借家法7条)がない旨の特約を具体的かつ明瞭に記載する必要があります。

普通借地権の場合は、借地借家法9条により、建物の築造による期間の延長がない特約をしても無効とされますが、一般定期借地権については、借地借家法22条において「第9条の…規定にかかわらず」とされていることにより、更新しない特約をしても無効とならないのです。

3-4 建物買取請求をしない特約があること

借地権設定契約において、建物買取請求(借地借家法13条)をしない旨の特約を具体的かつ明瞭に記載する必要があります。

普通借地権の場合は、借地借家法16条により、建物買取請求をしない特約をしても無効とされますが、一般定期借地権については、借地借家法22条において「第16条の規定にかかわらず」とされていることにより、更新しない特約をしても無効とならないのです。

3-5 公正証書等の書面によって特約が定められていること

借地借家法22条の条文上は、「公正証書」と記載されていますが、これは例示です。
書面でありさえすれば、公正証書に限られません。

事業用定期借地権(借地借家法23条)については、公正証書による作成が求められます。

書面を作成すべきなのは特約についてです。
特約以外については書面であることは求められませんが、実務上は一体的に契約書が作成されるのが通常でしょう。

4 一般定期借地権の効果

一般定期借地権が成立することにより、

  • 更新をしない
  • 建物の築造による期間の延長がない
  • 建物買取請求をしない

という効果が認められます。
これにより、存続期間が満了すると借地権は消滅し、借地上に建物がある場合は更地にして返還することになります。

その他の事項については、借地借家法の規定に従います。

5 一般定期借地権の登記

一般定期借地権の設定登記を申請する場合、借地借家法22条前段に基づく定期借地権であることが登記事項とされます。
また、添付書類としては、

  • 借地借家法22条に基づく特約を定めた書面
  • その他の登記原因を証する情報

を提出する必要があります(不動産登記令別表の33項・38項)。

上でも述べましたが、登記実務では、一般定期借地権の3つの特約は不可分であると考えられていますから、少なくとも一般定期借地権の登記する場合には、3つの特約をすべて定めることになるでしょう。

6 借地権設定後に特約を定めることができるか

特約は、借地権設定時に成立させなければならないと考えられます。
借地権設定後に特約を追加することを認めると、地代・借賃の増額をしないかわりに定期借地権への転換を要求するなどして、借地権者が不利な状況に置かれる可能性があるからです。

裁判例においても、普通借地権から定期借地権への切り替えができるかについて、「相応の合理的理由があり、その中で、当事者間で真に合意されたといえる場合でなければ、別途契約を締結し直すことにより定期借地権に切り替える旨の合意が有効とはならない」とされています(東京地裁判決平成29年12月12日)。

7 借地権者は、一般定期借地権設定契約を中途解約できるか

定期建物賃貸借では、やむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃貸借の解約の申入れができます(借地借家法38条5項)。

しかし、定期借地ではこのような規定は設けられていません。
したがって、原則的に借地権者は、定期借地権設定契約を中途解約することはできません。

中途解約する可能性がある場合は、定期借地権設定契約に中途解約権を留保する特約を設けておく必要があります。

借地権設定者の中途解約権を留保する特約を設けることは、借地権者に不利な特約であるため無効となります(借地借家法9条)。

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弁護士 佐々木康友
さいたま未来法律事務所 代表弁護士|埼玉弁護士会所属|〒330-0063 埼玉県さいたま市浦和区高砂3-10-4 埼玉建設会館2階|TEL 048-829-9512|FAX 048-829-9513