面会交流の方法について知りたい人「現在、夫と離婚調停中です。子の面会交流について話し合っていますが、私はあまり子と夫を直接会わせたくはありません。面会交流はどのような方法があるのですか。」
弁護士の佐々木康友です。
今回は、面会交流の方法について説明します。
離婚調停や面会交流調停・審判では、親子の面会交流の方法が決められますが、もともと面会交流の方法はこうしなければならないというものが決まっているわけではありません。
親子が直接会うことが面会交流の基本であることはいうまでもないことですが、父母の関係性、子の意向などによっては、まだ直接会うことまではできないという場合もあります。
その場合は、手紙、電話、メール、写真のやり取りなど、面会以外の間接的な交流の方法が柔軟に考えられています。
今回は、面会交流の方法にはどのようなものがあるのかについて説明します。
離婚調停や面会交流調停・審判に臨むにあたって、親子が直接会う段階までは至っていない場合に、どのような面会交流の方法が考えられるのかの参考になれば幸いです。
- 面会交流は実施されなければ意味がないので、離婚調停や面会交流調停・審判では実行可能な方法が採用される。
- 面会交流は親子が直接会うのが基本となるが、それが難しい場合は間接的な交流方法が採用される。
- 間接的な交流方法に決まりはないが、手紙、メール・LINE、電話・ZOOM・スカイプ、監護親からの写真や成績表の送付、行事への参加などが考えられる。
- 間接的な交流方法が、直接会うよりも心理的な負担が小さいとは限らないので、どの方法を選択するかは、父母の関係や、非監護親と子の関係に基づいて慎重に検討する必要がある。
- 離婚調停や面会交流調停・審判の条項では、面会交流の方法はできるだけ具体的に定める必要がある。
そもそも面会交流とは何かについては次の記事で詳しく説明していますので参考にしてください。
面会交流とは
面会交流とは、未成年の子と別居している親が、子と直接会ったり、電話で話したり、手紙や電子メールのやり取りをして、交流することをいいます。
父母が離婚する場合、父母のうち親権者となった親が未成年の子と同居し(監護親)、親権者とならなかった親は子と別居することになるため(非監護親)、離婚後、非監護親と子の関わりの機会(面会交流)を設ける必要があります。
また、父母が離婚していなくても別居しているの場合には、父母のどちらか一方が未成年の子と同居することになるため、別居している親と子の面会交流を設ける必要があります。
別居している親が望めば、いつでも子と面会交流できる状態にあったり、父母間で面会交流について取り決めがされていて、そのとおりに行われているのであれば問題はありません。
しかし、子と同居している親が、子と別居している親との面会交流を拒絶していたり、父母間の取り決めどおりに面会交流が行われない場合、離婚調停や面会交流調停・審判により面会交流について取り決めをする必要があります。
面会交流は実施されなければ意味がない
離婚調停や面会交流調停・審判で、面会交流について取り決めがされたとしても、実際にその取り決めどおりに面会交流が行われなければ意味がありません。
監護親(子と同居している親)と非監護親(子と同居していない親)は、離婚調停や面会交流調停・審判で決められたとおりに面会交流を行う義務があります。
これは、監護親の立場からすれば、面会交流調停・審判で定められたとおりに非監護親に面会交流の機会を与えなければならないということです。
反対に、非監護親の立場からすれば、面会交流調停・審判で定められた日時・場所・方法などのルールに従わなければならないことになります。
また、離婚調停や面会交流調停・審判では、面会交流の方法を詳細に定めることはできませんので、実際に面会交流を行うにあたって何らかの調整が必要となった場合には、お互いが誠実に協議をしなければなりません。
しかし、父母がそもそも対立状態にあり、面会交流の内容に納得していない監護親が、離婚調停や面会交流調停・審判で定められたとおりに面会交流を実施しないことも多いです。
子自身が面会交流の内容に心理的な負担を感じて実施を拒否することもよくあります。
監護親が調停・審判で決められたとおりに面会交流を実施することを拒絶した場合、非監護親は強制執行の申立てをするという方法もあり得ますが、それでも監護親が従わない場合があります。
子自身が面会交流を拒否している場合は、そもそも監護親の自発的な面会交流の実現は困難です。
何より、そのような強制的な手段を用いると、子に心理的な負担を与えることとなり、結果として子の利益を害することとなってしまいます。
ですので、面会交流は、両親の関係、子の意向などから実行可能な内容とすることが重要です。
面会交流の基本は直接会うこと
非監護親と子の面会交流は、子の健全育成、人格形成に有益なものと考えられています。
そして、子の健全育成、人格形成に最も資するのが、非監護親と子が直接会って交流することであるのはだれもが考えるところでしょう。
そのため、家庭裁判所は、面会交流によって子の利益が害されるなどの特段の事情ない限り、原則として直接会うことを認めています。
しかし、監護親は、様々な理由により子を非監護親に会わせたくないと考えます。
よくあるのが次の理由です。
- 非監護親が子を連れ去るかもしれない
- 相手に居場所を知られたくない
- 恐怖心
- 子が非監護親から悪影響を受けないか心配
また、そもそもにおいて子自身が非監護親と直接会うことをかたくなに拒否していることもあります。
父母や非監護親と子との間に上に述べたような問題がなく、父母が協力できる関係にあるのであれば、子と非監護親が直接会うことにすることが多いです。
子と非監護親が直接会うことにするかどうかの判断基準については、次の記事を参照してください。
離婚調停や面会交流調停・審判の条項はどの程度具体的にすべきか
離婚調停や面会交流調停・審判において、面会交流についての条項はどの程度具体的にすべきでしょうか。
本来、いつ、どこで、どのような方法で面会交流すべきかは、その都度、父母で話し合って決めるのが理想的です。
父母それぞれ予定もありますし、子の意向や状態を見ながら、面会交流の内容を変更していくことも必要だからです。
もしそれができるなら、面会交流について具体的なことは定めず、その都度、父母で協議するという調停・審判条項とすることも可能でしょう。
実際にかつては、「夏季休暇中の●日間旅行する方法で面会して、日程・行先については協議する」といった大枠だけを定める調停・審判条項もよくありました。
しかし、夫婦は多くの場合、不仲が原因で離婚するわけですから、完全にお互いのことを信用できるとは限りません。漠然とした内容の調停・審判条項とすると、面会交流の都度、日時・場所・方法について父母で紛争になるのではないかとの不安が残ります。
また、例えば、調停・審判条項どおりに面会交流が実施されなかったとすると、非監護親は、監護親に対して強制執行の申立ても可能となりますが、面会交流の内容が漠然なままでは、何を強制的にさせるべきなのかが特定できず、強制執行ができません。
そのため、面会交流は、具体的に定められている必要があります。
そこで、最近は、離婚調停や面会交流調停・審判は具体的な内容の条項とすることが多いです。
例えばこういった形です。
申立人に対し、申立人が当事者間の子●● ●●(平成●年●月●日生まれ)と面会交流をすることを認め、その時期及び回数を次の通り定める。
(1) 令和●年●月●日午後●時から午後●時まで
(2) 令和●年●月以降、毎月第1土曜日の午後●時から午後●時まで。ただし、第1土曜日に行えない場合は、第1日曜日の午後●時から午後●時まで。
上記の面会交流の場所は、申立人の肩書住所地とする。
上記の面会交流においては、申立人は、相手方肩書住所地に上記子を迎えに行き、面会交流を行った後、上記に定めた時間までに、相手方の肩書住所地に送り届ける。
その他、面会交流に必要な事項は、当事者間で協議する。
面会交流調停・審判の手続の流れについて知りたい方は、こちらの記事が参考になると思います。
第三者の立会いは必要か
面会交流には応じる意向があるものの、監護親が非監護親に対して恐怖心を抱いており、直接会うことや連絡を取り合うことを拒絶していることがあります。
また、父母が面会時に顔を合わせると、紛争になるおそれがあることを懸念していることがあります。
こういった状態のままでは、面会交流が実施できない事態になることもあり得ます。
そこで、家庭裁判所の実務では、親族や弁護士の付き添いを条件としたり、第三者機関の立会いや指示に従うことを条件として、面会交流を認める内容の調停・審判条項とすることもあります。
第三者機関としては、公益社団法人家庭問題情報センター(FPIC)などがあります。
これらの団体は、有料により面会交流支援事業を行っていますが、一定の収入要件を満たす場合は、自治体が補助金を支給しているケースもあるようです。
お住いの自治体に問い合わせてみるのも手でしょう。
直接会うことが困難な場合、手紙、電話、メール、写真のやり取りなどの方法もあり得る
直接会うことが困難な場合
子の健全な発達のためには、父母が離婚することとなっても、子と非監護親との交流を続けることは重要です。
上で説明したとおり、家庭裁判所は、面会交流によって子の利益が害されるなどの特段の事情ない限り、原則として直接会うことを認めています。
しかし、事情によっては、非監護親と子が直接会うことができない場合があります。
非監護親と子が直接会うことができない原因は色々ありますが、例えば、次の①~④ような場合です。
- 非監護親に、子に対する虐待や連れ去りのおそれ、監護親に対する暴力のおそれがある場合
- 監護親が、子と非監護親が直接会うことを拒否しており、面会交流の協力を得られない場合
- 子が監護親と会うことを拒否している場合
- 子と非監護親が遠距離で暮らしている場合
①の場合、子の福祉が害されることは明らかです。
直接会うことはもちろん、間接的な方法により交流することも許されるべきではありません。
これに対し、①の原因はなく、②~④が原因である場合、直接会うことが困難であっても、できることであれば間接的な方法により交流すべきと考えられます。
子の健全な発達のためには、たとえ間接的な方法であっても、子と非監護親との交流を続けることは重要ですし、間接的な方法で交流を続ければ、監護親と非監護親の関係や子と非監護親の関係が、直接会うことができるものへと変化していくことも考えられるからです。
間接的な交流の方法
間接的な交流の方法は様々です。
手紙や電話などは以前より行われている方法ですが、最近は新たな通信手段が次々と登場しており、メール・LINE・スカイプ・ZOOMなど交流の方法は一層多様化しています。
引きこもりがちの子とオンラインゲームを通じて交流するという事例もあるようで、家族の数だけ交流の形があり得るといえるでしょう。
ただし、いずれの方法についてもメリット・デメリットがあります。
子や監護親が直接会うことを拒否している理由を踏まえて、監護親にとって心配が少なく、子にとって心理的な負担とならない方法を採用するべきです。
また、反対に、直接会うことができないからといって安易に間接的な交流の方法を認めることにも慎重であるべきでしょう。
例えば、手紙を送る方法により交流することとする場合、非監護親が子に対して思いや意見を一方的に伝えたり、子が返事を書く決まりにしてしまうと、子にとって大きな心理的な負担を与えることになってしまうこともあり得ます。
また、間接的な方法だからといって、回数や頻度に制限を設けることをしていないと、やはり、子にとって大きな心理的な負担を与えることになってしまうこともあり得ます。
いずれの方法が適しているかはケースバイケースといえますが、一般的に考えられるそれぞれの方法のメリット・デメリットを挙げておきます。
手紙
メリット | デメリット |
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読むか読まないか、返事を書くか書かないかを子の自由に任せておけば、心理的負担は小さい。 メール・LINE・電話・ZOOMなどと比べて、やり取りの頻度も少なくなるので、子の心理的負担は小さい。 手紙が形として残るので、やり取りの蓄積を実感することができる。 手紙が家に届くため、監護親がやり取りの内容を把握しやすい。 | 返事を書くこととしておくと、手紙を書く習慣のない子にとっては心理的負担が大きい。 監護親や子に対する思いや意見を一方的に書いてしまいがちになる。 |
メール・LINEなど
メリット | デメリット |
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手紙に比べて気軽に手間がかからずにやり取りができる。 通常は双方向のやり取りがされるものであるが、監護親が送ったメッセージを子が読むだけでも交流が成立し得る。 | 携帯電話やパソコンでやり取りがされるため、監護親がやり取りの内容を把握しにくい。 思春期の子などは、自分のアドレスやIDを非監護親に知られるのを嫌がる場合がある。 手軽に手間がかからずにやり取りができるため、子のことを考えずに際限なくメッセージを送り続けることがある。 やり取りの頻度が増えると子の心理的負担となるおそれがある。 |
電話・ZOOM・スカイプなど
メリット | デメリット |
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音声で会話をしたり、お互いの顔が見えるなど、直接会うのに近い交流ができる。 自宅で行えば、監護親もやり取りを把握することができる。 | 直接会うことを強く拒否している子にとっては心理的負担が大きい。 |
監護親からの写真や成績表の送付
メリット | デメリット |
---|---|
子が非監護親との交流を拒否している場合でも成長を確認することができる。 通常は子の心理的負担が大きくない。 | 思春期の子で写真を撮られること自体を拒否する場合がある。 |
行事への参加
メリット | デメリット |
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運動会や学芸会など多数の人が集まる行事では、子から気付かれることなく子の様子を確認できる。 | 監護親の姿が見えなくても行事に出席しているだけで心理的負担を感じることがある。 |
面会交流についてのご相談はさいたま未来法律事務所へ
今回は面会交流の方法について説明しました。
面会交流は現実に実施されなければ意味がありませんから、実施可能な内容とするために離婚調停や面会交流調停・審判などでは時間をかけて検討されることも多いです。
離婚調停や面会交流調停・審判などでは、監護親・非監護親どちらの立場であったとしても、家庭裁判所に対し、父母の関係や非監護親と子の関係をわかりやすく説明することが必要です。
家族間の問題であるがゆえ、どうしても感情的なものが前面に出てしまい、ご本人が、家庭裁判所でも納得ができるように冷静に説明することが困難な場合も多いです。
そういった場合は、少し立ち止まって、弁護士などの専門家に相談して、客観的な視点から状況を整理してみることも有効かと思われます。
当事務所は、面会交流をはじめとして、離婚に関わる問題に多く取り組んできた経験があります。
面会交流についてお悩みがある場合は、当事務所にぜひご相談ください。