離婚後も氏(姓・名字)を変えないでそのまま使う方法~婚氏続称について

設問
夫と離婚することになりましたが、長年夫の氏を使ってきましたので、離婚後も氏を変えないでそのまま使いたいと思っています。どのように手続すればよいですか。

離婚すると婚姻前の氏(姓・名字)に戻るのが原則ですが、離婚後も氏を変えないでそのまま使い続けることもできます。これを婚氏続称といいます。

また、離婚後も氏を変えないでそのまま使っていたけれども、やっぱり婚姻前の氏に戻したい場合もあると思います。

今回は、離婚後の氏(姓・名字)はどうなるのかについて説明します。

離婚に伴う子の氏(姓・名字)の変更については次の記事を参考にして下さい。

離婚した場合に子の氏(姓・名字)を変更するにはどうすればよいか

1 離婚したら氏(姓・名字)は結婚前に戻るのが原則

離婚すると、婚姻によって氏(姓・名字)を変えた方の配偶者は、婚姻前の氏に戻るのが原則です(民法767条1項)。これを一般に復氏といいます。

離婚すると、婚姻によって氏を変えた方の配偶者は、夫婦の戸籍からは除籍されて、婚姻前の戸籍に戻ることになります。婚姻前の戸籍に戻らないで、新しい戸籍を作ることもできます(戸籍法19条1項)。離婚届の「新しい戸籍をつくる」欄にチェックをします。

民法767条1項
婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。

2 離婚後3ヶ月以内なら氏(姓・名字)をそのままにできる

離婚したら、婚姻前の氏に戻るのが原則ですが、離婚の日から3ヶ月以内であれば、市区町村の戸籍担当に届け出ることによって、婚姻中の氏(姓・名字)を引き続き使うことができます。離婚した相手方の許可は不要です。これを婚氏続称といいます。

手続きは簡単で、「離婚の際に称していた氏を称する届」という書類を市区町村の戸籍担当に提出します。

「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出すると、あわせて新しい戸籍を作る必要がある場合がありますから注意が必要です。

例えば、離婚届と同時に「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出する場合、離婚後、結婚前の戸籍に戻っていた場合などが考えられます。結婚前の戸籍のままでは、婚姻中の氏にすることができませんから、新しい戸籍を作る必要が生じます。

離婚した場合は戸籍はどうなるのですか?
いずれにせよ、離婚はしているのですから、婚姻中の氏を使うことになっても、夫婦の戸籍からは除籍されることに変わりはありません。

なお、離婚により一旦は婚姻前の氏に戻して、3ヶ月が経過したあと、やはり婚姻中の氏を使いたい場合もあるかと思いますが、この場合は、次に説明するように、「やむを得ない事由」があるとして、家庭裁判所の許可がもらえれば使うことができます。

3 やっぱり婚姻前の氏(姓・名字)に戻したい場合

「離婚の際に称していた氏を称する届」を提出して、離婚後も婚姻中の氏(姓・名字)を使っていたとしても、その後、やっぱり婚姻前の氏に戻したい場合があります。

この場合、家庭裁判所の許可が得られれば、婚姻前の氏に戻すことは可能です(戸籍法107条1項)。ただし、氏を戻す「やむを得ない事由」が必要です。

戸籍法107条1項
やむを得ない事由によつて氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。

「やむを得ない事由」が必要ということとなると、ほとんどの場合、氏を戻すことは認められないのではないかとお考えかもしれませんが、実務上、婚姻前の氏に戻したり、反対に婚姻中の氏を使ったりする場合は、かなり基準が緩和されています。

具体的には次のことを総合的に考慮して「やむを得ない事由」があるかどうかが判断されています。特に重視されているのは、②と③だと思われます。

「やむを得ない事由」の考慮要素
  1. 離婚後、婚姻中の氏を使っている期間の長さ
  2. 氏を変更する理由が自分勝手なものでない
  3. 氏を変更することで、第三者が不足の損害を被ることがない

4 複数回離婚している場合

複数回離婚している場合、最後に離婚した時に戻るのは、生まれた時の氏(姓・名字)なのか、前回離婚した後に使っていた氏なのかが問題となりますが、実務上は、前回離婚した後に使っていた氏に戻ることとなるようです。

しかし、先ほど説明したように、「やむを得ない事由」がある場合は、生まれた時の氏に戻ることは可能と思われます。

5 まとめ

今回は、離婚後の氏(姓・名字)について説明しました。
まとめると次のことが重要です。

  • 離婚すると、婚姻によって氏を変えた方の配偶者は、婚姻前の氏に戻るのが原則
  • 離婚の日から3ヶ月以内であれば、市区町村の戸籍担当に「離婚の際に称していた氏を称する届」をすることによって、婚姻中の氏を引き続き使うことができます。
  • これ以外の場合でも、「やむを得ない事由」がある場合は、家庭裁判所の許可を得て氏を変更することができます。