婚姻費用分担請求調停の申立て~婚姻費用の協議がまとまらない場合

夫婦が直接話し合って婚姻費用の協議をしても、意見が対立して合意に至らない場合があります。別居してしまい、そもそも話し合いすらできない場合もあります。権利者(婚姻費用をもらう側)にとっては、義務者(婚姻費用を支払う側)に婚姻費用を早く支払ってもらわないと生活していけませんから、死活問題と言えます。

こういった場合、権利者は、義務者を相手方として、家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停の申立てをすることが考えられます。今回は、婚姻費用分担請求調停の申立ての手続について説明します。

婚姻費用分担請求については、次の記事も参考にして下さい。

婚姻費用についてよく分かる|婚姻費用を請求するために知っておくべき8つのこと

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算定表で婚姻費用分担額を求める方法

1 婚姻費用分担請求調停の特徴

婚姻費用分担請求調停も、基本的には話し合いにより自主的な解決を目指す手続です。本人同士の話し合いと異なるのは、次の2点でしょう。

  1. 裁判所が間に入って話し合いが進められる。
  2. 調停が成立すると合意事項が裁判所の調書に記載される。

①によって、本人同士の場合よりもお互い冷静に話し合いができます。また、裁判所が夫婦間で意見の対立点など争点を整理をしてくれますから、効率的に話を進めていくこともできます。

②によって、調停成立には裁判と同じ効力が生じますから、相手方が調停で合意された婚姻費用を支払ってくれない場合は強制執行(相手の財産を差し押さえるなどして強制的にお金の支払いをさせること)もできます。

2 調停・審判どちらでも申立てができるが付調停される場合もある

夫婦本人同士の話し合いで婚姻費用の協議がまとまらない場合、利用できる家庭裁判所の手続としては、調停審判の二つがあり得ます。

審判では、当事者の話合いではなく、家庭裁判所が婚姻費用分担額を決定します。

しかし、審判を申し立てても、家庭裁判所は、職権でまずは調停を行わせる決定をすることができます(家事事件手続274条1項)。これを、調停に付するという意味で、付調停といいます。

事案により異なりますが、実際に調停に付されることは多いと思います。ですので、ここでは、まずは婚姻費用分担請求調停について説明します。

(付調停)
家事事件手続法第274条第1項
第244条の規定により調停を行うことができる事件についての訴訟又は家事審判事件が係属している場合には、裁判所は、当事者(本案について被告又は相手方の陳述がされる前にあっては、原告又は申立人に限る。)の意見を聴いて、いつでも、職権で、事件を家事調停に付することができる。

離婚調停の申立てをしている場合でも、婚姻費用分担請求調停の申立てをする必要はあるのですか。
婚姻費用分担請求調停も同時に申し立てた方がよいでしょう。家庭裁判所からも勧められると思います。婚姻費用分担請求調停を申し立てておけば、家庭裁判所は先に婚姻費用分担請求の調停・審判をしてくれますから、生活費を確保することができます。

3 婚姻費用分担請求調停申立ての手順

それでは、いざ婚姻費用分担請求調停を申し立てようとする場合、どこの家庭裁判所に、どのようにして申し立てればよいのでしょうか。申立てをするのに費用はいくらかかるのでしょうか。また、申立てをした後、調停が始まるまでの流れはどうなっているのでしょうか。

3-1 管轄

管轄とは、ある調停をどこの家庭裁判所が担当するのかという話です。婚姻費用分担請求調停については、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てる必要があります。

当事者で合意した家庭裁判所に申し立てることも可能です(家事事件手続法245条1項)。

家庭裁判所は、都道府県庁所在地に本庁が置かれ、都道府県内各地に支部や出張所があります。本庁、支部、出張所ごとに管轄が分けられていますので、まずは相手方の住む都道府県の本庁に電話をして確認するか、次の裁判所ホームページから確認してください。

★裁判所の管轄区域

ただし、管轄についてこの原則を貫くと不都合が生じる場合があります。

例えば、夫婦が別居している場合、権利者(妻)は、義務者(夫)の住所地を管轄する家庭裁判所に調停の申立てをすることが原則です。しかし、妻が小さな子どもと同居しており、夫が遠隔地で別居している場合、妻が、毎回の調停期日、夫の住所地を管轄する遠隔地の家庭裁判所に出頭することは困難でしょう。

そこで、家庭裁判所は、必要がある場合、管轄でなくても調停を行うことができることとされています(家事事件手続法9条1項)。これを自庁処理といいます。

妻が遠隔地で別居する夫に対して調停を申し立てる場合、裁判所に理由を説明した上で、妻の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てることが考えられます。自庁処理をするかどうかは家庭裁判所の判断次第ですが、こういったケースでは自庁処理することが多いです。

3-2 手数料

家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てる際には手数料を納める必要があります。手数料は1,200円です。調停申立書に1,200円分の収入印紙を貼って提出します。収入印紙は郵便局で購入することができます。

また、連絡用として郵便切手を提出する必要があります。各家庭裁判所によって少し違いますが、用意する郵便切手は、概ね1,000円を少し超えるくらいです。次の裁判所ホームページから管轄の家庭裁判所を確認してください。

3-3 申立書

東京家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てる場合、次の書類を用意する必要があります。他の家庭裁判所も概ね同じですが、提出部数や書式が違う場合がありますので、必ず調停を申し立てる家庭裁判所に確認してください。

婚姻費用分担請求調停の必要書類(東京家庭裁判所)
  • 申立書3通(裁判所・本人・相手方用)
  • 事情説明書1通
  • 連絡先等の届出書1通
  • 非開示の希望に関する申出書1通(必要な場合)
  • 進行に関する照会回答書1通
  • 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)1通(3か月以内に発行されたもの)

★東京家庭裁判所「家事調停の申立て」

特に注意しないといけないのが非開示の希望に関する申出書です。自分の連絡先など裁判所に提出する書類等のうち、相手方に知られたくない情報が含まれている場合は、非開示を希望する旨の申し出をしておく必要があります。この希望をしないと無条件に開示されてしまいますので注意が必要です。

非開示の希望に関する申出はあくまでも希望なので、内容によっては、相手方から開示請求に対して裁判所の判断により開示がされることもあり得ますが、通常、住所・電話番号などの連絡先は開示されません。

また、進行に関する照会回答書も重要です。例えば、相手方と同席したり、家庭裁判所で顔を合わせたりしたくない場合は、その旨を記入することをお勧めします。

さらに、次の書類は、第1回の調停期日までに提出が必要ですので、申立て時までには用意しておくことをお勧めします。

第1回の調停期日までに必要な書類
  • 収入に関する書類等(源泉徴収票写し、給与明細写し、確定申告書写し、非課税証明書写し等、申立人の収入が分かるもの)
  • 過去の婚姻費用に関する取決めや支払状況に関する書類等(過去の審判書,判決書、調停調書等)
  • 特別な費用(子の私立学校の授業料等)に関する書類等

4 調停委員会

婚姻費用分担請求調停を運営するのが調停委員会です。調停委員会は、裁判官1名家事調停委員2名の合計3名で構成されます。婚姻費用分担請求調停を含む家事調停では、男女・夫婦の問題が絡むため、通常、男女各1名の調停委員が指定されます。

家事調停委員は、最高裁判所により民間から非常勤公務員として任命されます。家事調停委員は、弁護士、税理士、司法書士などの専門職、教員などの社会生活上の地位を有する方が就任しています。

裁判官は複数の調停を担当しているので、調停期日に参加することはあまりなく、通常は、家事調停委員2名が当事者から話を聞いて調停を進めていきます。

家事調停委員は、非常勤公務員とはいえ、プロパーの家庭裁判所職員ではありません。色々話したことが第三者に漏洩しないか心配かもしれませんが、家事調停委員には守秘義務が課されているので(家事事件手続法293条)、その点は心配ないのではないかと思います。

5 婚姻費用分担請求調停の流れ

5-1 第1回調停期日

家庭裁判所に申立書を提出すると、通常は、3週間から1ヶ月後くらいに、申立人、相手方に対して第1回調停期日(調停を行う日)が指定されます。少なくとも申立人が家庭裁判所に出頭しないと意味がありませんから、当然に、申立人との間では事前に日程調整はされます。

第1回の調停期日において、家庭裁判所より夫婦双方に対して、調停の進め方について事前に説明があります。

特別な理由がなければ、夫婦同席のもと説明が行われますので、相手方を顔を合わせたくない場合は、あらかじめ家庭裁判所にその旨申し出ておく必要があります。そうすれば、事前の説明についても別々にしてくれますし、来庁・帰庁についても時間をずらすなどして配慮してもらえます。

5-2 通常の調停期日の進め方

調停期日では、夫婦が同席して話を聞くことはなく交互に調停室に入って話をします。家事調停委員は夫婦の一方から話を聞いたら、その要点をまとめて他方に伝えます。このようにして話し合いが進められていきます。相手方が調停室で話し合いをしている間、各当事者はそれぞれに割り当てられた待合室で待ちます。

通常、調停は、月1回、2時間程度で行われます。各調停期日の終了時、当事者双方に出席してもらって、当事者双方の言い分の合致点・相違点、次回までに検討すべきこと、用意すべき資料などの確認がされます。

相手方との同席を希望しない場合、家事調停委員に、あらかじめそのことを伝えておくべきでしょう。各調停期日において、書面や資料を提出することがありますが、その書面や資料を相手方に開示したくない場合は、家事調停委員に明確に伝えておく必要があります。

6 婚姻費用分担請求調停の成立

6-1 調停成立

申立人と相手方で婚姻費用分担額について合意ができたら、調停成立になります。調停室で、裁判官が、当事者双方の前で調停の内容を読み上げます。当事者双方に調停の内容に間違いがないことを確認すると、通常は調停が成立し、事件終了となります。

調停成立後、家庭裁判所書記官がすぐに調停調書を作成します。調停調書が作成されると、正式に調停成立となります。

6-2 成立した調停の効力

調停が成立して、家庭裁判所の調書が作成されると、その内容は裁判所による確定した審判と同じ効力があります(家事事件手続法268条1項)。

ですので、仮に相手方が調停内容にしたがって、財産分与や養育費などの金銭の支払いをしない場合、新たに訴訟を提起しなくても、相手方の財産などに対して強制執行の申立てができます(家事事件手続法75条、民事執行法174条1項本文)。

7 調停不成立の場合

調停委員会は、当事者間で合意が成立する見込みがない場合は、離婚調停を終了させることができます(家事事件手続法272条1項)。これを調停不成立といいます。

調停不成立後、自動的に審判に移行ます(家事事件手続法272条4項)。手続的には、調停の申立て時に審判の申立てがあったものとみなされますので、調停に提出された資料などは審判において考慮されます。

審判では、家庭裁判所が婚姻費用分担請求額を決定します(家事事件手続法39条)。

9 まとめ

今回は、家庭裁判所への婚姻費用分担請求調停の申立て、費用、流れなどについて説明しました。次の点がポイントになると思います。

  • 婚姻費用分担請求調停と審判のいずれも申し立てることができますが、調停を申し立てた場合、まずは調停に付されることも多いです。
  • 婚姻費用分担請求調停の申立ては、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所にするのが原則ですが、子育てなどのため出頭が困難など必要がある場合、申立人の住所地を管轄する家庭裁判所で離婚調停が行われることもあります。
  • 婚姻費用分担請求調停において、相手方に住所地を知られたくない、顔を合わせたくないなどの希望がある場合は、家庭裁判所にその旨伝えておく必要があります。
  • 調停不成立の場合、自動的に審判に移行します。