今回は、面会交流調停・審判の申立てと手続の流れについて説明します。
父母は、協議離婚するとき、面会交流について協議して定めることとされていますが、どうしても協議が調わない場合、父母のどちらかが、家庭裁判所に面会交流の調停または審判の申立てをすることになります。
後で述べるとおり、調停は、本人同士の話合いですし、審判についても、最終的には家庭裁判所が決定することにはなるものの、調停の延長線上に置かれるものです。ですので、それほど恐れることはないのですが、初めて調停や審判を経験することとなる方にとっては、不安なものだと思います。
そこで、今回は、面会交流調停・審判の申立てと手続の流れについて説明しようと思います。
なお、そもそも面会交流って何ということについては、次の記事を参考にしてください。
[kanren postid=”816″]
1 面会交流調停・審判の申立て
上にも述べましたが、父母は、協議離婚するとき、面会交流について協議で定めることとされています(民法766条1項)。しかし、父母で協議しても、面会交流についてどうするかについて合意ができないことがあります。この場合は、面会交流を求める親は、家庭裁判所に対して、調停または審判の申立てをすることができます(民法766条2項)。
また、婚姻中の父母が別居した場合、未成年の子を監護していない親が、監護している親に対して、子との面会を求めても、話合いがまとまらない場合も、家庭裁判所に対して、調停または審判の申立てをすることができます(民法766条2項)。
【民法】(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
766条1項 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
2項 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。
3項 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。
4項 前三項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。
調停は、家庭裁判所において、父母の話合いにより合意を目指すものです。あくまでも父母の話合いがベースですから、合意ができなければ、調停は不成立になります。一方、審判とは、家庭裁判所が、面会交流について一方的に決定するものです(家事事件手続法73条)。
調停と審判は、どちらでも申し立てることはできるのですが、調停を経ないで、いきなり審判を申し立てても、多くの場合、まずは調停で話し合ってくださいということで、調停に回されてしまいます。これを付調停といいます(家事事件手続法274条1項)。
面会交流のような家族内のことについては、まずは父母で話し合ってください、どうしても話合いで決められない場合は家庭裁判所が決めますというものですね。
ですので、面会交流について、家庭裁判所の手続を利用する場合、通常、まずは、家庭裁判所に調停を申し立てます。調停で話し合っても、父母で合意ができずに調停が不成立となった場合、次に審判ということになります。
なお、調停が不成立となると、調停の申立て時に、審判の申立てがあったものとみなされます(家事事件手続法272条4項)。つまり、自動的に審判に移行するのですね。資料などは、調停に提出したものがそのまま審判に引き継がれますから、基本的には再提出は必要はありません。
面会交流調停の申立ての手続については、裁判所のホームページに詳しい説明がありますから参照してください。
少し補足しておきますと、調停申立てができるのは、父母のみです。子、子の祖父母、子の兄弟などは実務上は認められていません。なお、子が別居している親と面会交流することを望むときは、子を監護している親が申立人となることが多いようです。
また、調停の申立先は、相手方の住所地ですが(家事事件手続法245条)、審判の申立先は、子の住所地になります(家事事件手続法150条1項4号)。
手数料は、どこの家庭裁判所でも1200円で共通ですが、郵便切手は、家庭裁判所によって違いますから、管轄の家庭裁判所に確認する必要があります。提出書類についても、家庭裁判所によって書式が違うことがありますので、同様に確認する必要があります。
2 面会交流調停の流れ
調停も本人同士が話し合って合意を目指す手続ですから、その点では、本人同士で直接協議するのと同じです。ただし、調停は、次の二つの点で、本人同士の話合いと大きく異なります。
- 調停委員会の介在のもと話合いが行われる
- 調停が成立すると判決と同じ効果がある
2-1 調停委員会
まず一点目の調停委員会についてです。家庭裁判所では、面会交流調停が申し立てられると、申し立てられた事件ごとに調停委員会が設置されます。調停委員会は、裁判官1名、家事調停委員2名からなる合議体です。
家事調停委員は、民間から任命される非常勤公務員でして、通常、夫婦や親子に絡む調停では、男女各1名ずつ任命されているようです。裁判官は複数の調停を担当しているので、調停に参加することはあまりなく、通常は、家事調停委員2名が中心となって調停を進めていきます。
家庭裁判所に調停申立書を提出すると、通常は、3週間から1ヶ月後くらいに、第1回目の調停期日(調停を行う日)が指定されます。
なお、第1回の調停期日では、特別な理由がなければ、父母同席のもと、手続について説明が行われますが、相手方と顔を合わせたくない場合は、あらかじめ家庭裁判所にその旨申し出ておくことができます。また、来庁・帰庁についても時間をずらすなどして配慮してもらうこともできます。
手続の説明については、父母同席のもと行われることがありますが、本題については父母が同席して話を聞くことはなく、交互に調停室に入って話をします。家庭裁判所の調停の場においては、父母本人同士が直接意見のやり取りをすることはありません。この点が、本人同士の話合いと全く違うところです。こうすることによって、父母本人は冷静に話をすることができますし、調停委員が介在することによって、争点を整理しながら話し合うことができます。
家事調停委員は父母の一方から話を聞いたら、その要点をまとめて他方に伝えます。このようにして話し合いが進められていきます。相手方が調停室で話し合いをしている間、各当事者はそれぞれに割り当てられた待合室で待ちます。
通常、調停は、月1回、2時間程度、合意を目指して話合いが重ねられていきます。
2-2 調停成立の効果
父母で面会交流の内容について合意ができたら、調停成立になります。調停室で、裁判官が、父母の前で調停の内容を読み上げます。調停の内容に間違いがないことを確認すると、通常は調停が成立し、事件終了となります。婚調停成立後、家庭裁判所書記官がすぐに調停調書を作成します。この調停調書が作成されると、正式に調停成立となります。
調停が成立して、家庭裁判所の調書が作成されると、その内容は裁判所による確定した審判と同じ効力があります(家事事件手続法268条1項)。
調書の内容は、それこそ事件によって様々なのですが、面会交流の内容について、父母の間でかなり熾烈な争いがあった場合は、面会交流の実施事項を明確にしておくため、次のとおり、かなり具体的な内容を示すこともあります。
[box class=”blue_box” title=”調停条項例”]
1 相手方は、申立人に対し、申立人が当事者間の子●● ●●(平成●年●月●日生まれ)と面会交流をすることを認め、その時期及び回数を次の通り定める。
(1) 令和●年●月●日午後●時から午後●時まで
(2) 令和●年●月以降、毎月第1土曜日の午後●時から午後●時まで。ただし、第1日曜日に行えない場合は、第1日曜日のの午後●時から午後●時まで。
2 上記1の面会交流の場所は、申立人の肩書住所地とする。
3 上記1の面会交流においては、申立人は、相手方肩書住所地に上記子を迎えに行き、面会交流を行った後、上記1に定めた時間までに、相手方の肩書住所地に送り届ける。
4 その他、面会交流に必要な事項は、当事者間で協議する。
[/box]
調停調書にこういった記載がされると、相手方は、申立人に対して、調停調書記載のとおりに面会交流をさせる義務が発生します。それにもかかわらず、相手方がこの内容の面会交流を拒絶すると、申立人は強制執行の申立てをすることができます(家事事件手続法75条、民事執行法174条1項本文)。
調停調書に確定した審判と同じ効力があるとは、こういうことです。この点が父母本人同士の話合いで取り決めをするのと決定的に違うところです。
3 調停不成立の場合
当事者間で合意ができる見込みがない場合、調停委員会は、離婚調停を終了させます(家事事件手続法272条1項)。合意の見込みがないのに調停を続ける意味がないからです。このように調停を成立しないまま終了させる手続を調停不成立といいます。
調停不成立後、自動的に審判に移行ます(家事事件手続法272条4項)。手続上、調停の申立て時に審判の申立てがあったものとされますので、調停に提出された資料などは審判において考慮されます。審判では、家庭裁判所が、調停で提出された資料や話合いの内容を踏まえて審判をします(家事事件手続法39条)。
審判の内容は、上記の調停調書の記載内容と同じです。家庭裁判所の審判に不服がある場合、2週間以内に、高等裁判所に即時抗告ができます(家事事件手続法85条、86条)。さらに、即時抗告の決定に不服がある場合は、最高裁判所に特別抗告・許可抗告ができることもあります(家事事件手続法94条、97条)。
いずれにせよ、こういった手続を経て審判が確定したのに、審判内容どおりの面会交流を拒絶すると、調停成立の場合と同様、強制執行の問題となります。
4 まとめ
以上が、面会交流にかかわる調停・審判の流れです。
民法766条1項には、面会交流は、子の利益を最も優先して考慮しなければならないと規定されています。つまり、面会交流は、子の利益にならなければならないし、子の利益にならない面会交流はするべきではないということになりますね。
家庭裁判所もこの考え方に基づいています。はたして子の利益になるのかという観点から、面会交流をするべきかどうかを考えています。
したがって、面会交流調停・審判に臨むにあたっては、面会交流を求める親は、面会交流が子の利益になることを説得的に主張する必要がありますし、反対に、面会交流を認めたくない親は、面会交流が子の利益にならないことを説得的に主張する必要があります。
そのためには、家庭裁判所が、これまでの面会交流調停・審判の実務のなかで、どのような点を考慮して、面会交流をすべきかどうかを判断してきたかを学ぶことは重要です。
この点については、次回に説明します。
↓よろしければ応援のクリックをお願いします!