離婚調停に臨むにあたって、できるだけ早く調停を終了させたいと思うのが通常だと思います。
調停はあくまでも夫婦の話合いの手続です。夫婦のどちらかに話合いをする意思が全くなければ、調停はすぐに不成立になりますが、成立の可能性がある限り、基本的には家庭裁判所は調停を継続します。
そうなると、離婚調停が成立するまでに、いったいどれくらいの期間を要するのかは大変に気になるポイントだと思います。
離婚調停の成立までの期間は、次によって変わります。
- 離婚調停で話し合われる内容
- 夫婦の意見の隔たりの大きさ
それこそ夫婦によって違うので、離婚調停が成立するまでにどれくらい期間を要するかは、事案によって異なると言わざるを得ないところがあります。
それでも全体的な傾向としては、次のとおりといえます。
- 多くの場合、離婚調停は半年~1年位はかかる
- 1年を超えることもよくある
ただし、離婚調停申立て前に、離婚協議で十分に話合いが行われており、おおむね合意ができている場合などは、早めに調停が成立することもあります。
- 裁判所の司法統計に基づいて、全体な傾向として離婚調停の成立までにどれくらいの期間がかかるのか
- どういった場合に離婚調停の期間が長くなるのか
今回はこのことについて説明します。
※離婚調停全般については、こちらの記事を参考にしてください。
1 離婚調停の期間は半年~1年はかかり、1年を超えることもよくある
裁判所では、定期的に、離婚調停などの家事事件についての統計資料を発表しています。最新の統計資料は、平成30年度の司法統計年報です。
1-1 調停成立までにかかった期間
婚姻関係事件(離婚調停、婚姻費用分担調整調停等)で調停成立したもののうち、調停成立までにかかった期間は次のとおりとなっています。
65%の調停が半年以内に成立しています。
- 1ヶ月以内:3%
- 3ヶ月以内:26%
- 6ヶ月以内:36%
- 1年以内:28%
- 2年以内:7%

1-2 調停成立までに行われた調停期日の回数
また、婚姻関係事件で調停成立したもののうち、調停成立までに行われた調停期日の回数は次のとおりとなっています。
71%の調停が4回以内に成立しています。
通常、調停期日は、1~2ヶ月に1回はありますから、おおむね、上の調停成立までの期間と整合していると思われます。
- 1回:14%
- 2回:22%
- 3回:20%
- 4回:15%
- 5回:10%
- 6~10回:17%

平成30年度司法統計年報家事事件編第16表より作成
1-3 単純に「離婚調停は、半数が半年以内に成立する」と判断できない
しかし、これらの統計から、単純に「離婚調停は、半数が半年以内に成立する」と判断することはできません。
これらの統計の対象は、婚姻関係事件です。婚姻関係事件には、離婚調停だけでなく、婚姻費用分担調停も含まれています。
しかも、離婚調停が婚姻関係事件全体の62%であるのに対して、婚姻費用分担調停は全体の35%ですから、婚姻費用分担調停が相当な割合を占めています。
したがって、婚姻関係事件の統計=離婚調停の統計とは見ることはできません。婚姻費用分担調停の影響を十分考慮して、統計を理解する必要があります。

1-4 早期に調停が成立しているのは、多くが婚姻費用分担調停と考えられる
婚姻費用分担調停は、離婚調停と同時に申し立てられることが多いのですが、まずは生活費の確保が急務となるため、離婚調停に先行して婚姻費用分担調停が行われることが多いです。
つまり、統計のうち早期に調停が成立しているのは、多くが婚姻費用分担調停と考えられます。
1-5 多くの場合、離婚調停成立までの期間は6ヶ月~1年はかかる
したがって、離婚調停申立て前に、十分な離婚協議が行われ、おおむね離婚することに合意できていた場合などを除き、多くの場合、調停成立までの期間は、6ヶ月~1年はかかります。
調停期日についても、調停成立までに4回~10回は行われています。
調停成立までの期間が1年を超えること、調停期日の実施回数が10回を超えることも珍しくありません。
それでも、2年以内にはほとんどの調停が成立しています。
2 離婚調停のうち、半数超は調停が成立している
離婚調停のうち、54%が成立しています。

平成30年度司法統計年報家事事件編第15表より作成
3 調停期間が長期化する要因
離婚調停は、成立までに1年以上かかることもよくあります。なかには2年を超えるものもあります。
夫婦によって話し合うべき内容が異なるので、こういった場合は調停期間が長くなるとははっきりとは言えないのですが、次の場合には長期化する傾向にあると思います。
- 離婚調停で話し合うべきことが多い
- 夫婦間の争いが熾烈である
3-1 離婚調停で話し合うべきことが多い
離婚調停では、離婚についてだけ話し合えばよいわけではありません。例えば、次のことについて話し合う必要があります。
- 婚姻費用分担
- 財産分与
- 年金分割
- 慰謝料
- 親権者
- 面会交流
これらのことを、すべての夫婦が話し合うわけではありませが、話し合うべきことが多ければ、その分、調停成立までには期間を要します。
例えば、財産が多くあれば、どうしても財産分与に時間がかかります。
また、未成年の子どもがいれば、親権者をどちらにするのか、面会交流はどれくらいの頻度にするのかなどを取り決めなければなりません。
不貞行為があったなど、どちらかに離婚原因があれば、相手方が慰謝料を請求することになります。
多くの場合、これらのことは離婚の前提となりますので、合意できないと離婚自体も合意できないことになります。
3-2 夫婦の意見に大きな隔たりがある
離婚調停は、家庭裁判所の家事調停委員の仲介があるとはいえ、あくまでの夫婦の話合いの手続です。
夫婦の意見に相違がある場合、お互いに歩み寄らなければ合意に至ることはありません。
夫婦の意見の隔たりが大きい場合、歩み寄ることが困難となり、調停成立までに期間を要します。
- 財産分与
- 慰謝料
- 親権者
- 面会交流
これらについて夫婦の意見が相違する場合、どれも争いが熾烈になる、調停成立までの期間が長期化する傾向にあります。
4 離婚調停の期間を短縮するために
離婚調停の際、話し合うべきことを減らすことは難しいです。
例えば、時間がかかるからといって、財産分与の話合いを離婚後にすることは、特に財産分与を受ける立場にある場合は得策ではないでしょう。
ですので、離婚調停をできるだけ早く成立させるためには、夫婦の意見の隔たりを狭めて、譲歩するしかありません。
その場合、大切になるのは、自分なりに離婚調停の落としどころを見据えておくことです。自分はどこまで譲歩できるのか。譲歩の限界を考えておくことです。
その上で、できるだけ自分に有利に、離婚調停を進めていくことが重要となります。
5 まとめ
今回は、離婚調停の成立までにかかる期間について説明しました。
- 多くの場合、調停成立までの期間は、6ヶ月~1年はかかる。調停期日についても、調停成立までに4回~10回は行われている。
- 調停成立までの期間が1年を超えること、調停期日の実施回数が10回を超えることも珍しくない。
- それでも、2年以内にはほとんどの調停が成立している。
- 離婚調停成立の期間を短縮するためには、夫婦の意見の隔たりを狭めて、譲歩するしかない。自分なりに離婚調停の落としどころを見据えておくことが大切。
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