[voice icon=”http://saitama-mirai.com/wp-content/uploads/2019/12/max-baskakov-OzAeZPNsLXk-unsplash-scaled-e1577339318536.jpg” type=”l line”]離婚したいけど、何を準備したらよいかわからないし、相手と何を話せばよいかもわからない…。[/voice]
今回は、離婚したいけど何をしたらよいかわからない方に、離婚で公開しないために押さえておくべき15のことを説明します。
離婚したい気持ちが先だって、必要なことを話し合わないまま離婚してしまい、後悔するといったことが後を絶ちません。
離婚で後悔しないためにも、離婚に向けてしっかりと準備をして、相手との話合いは慎重に進める必要があります。
各項目については詳しく説明している記事があるので、そちらも参考にして下さい。
離婚までにすべきことは、大きく三つに分けられます。
段階 | すべきこと |
---|---|
離婚の準備段階ですべきこと | 1 財産分与のための資料収集をする 2 離婚理由の証拠収集をする 3 速やかに婚姻費用分担請求をする |
離婚協議・離婚調停・離婚裁判で決めるべきこと | 4 離婚方法は三つある 5 離婚訴訟では離婚理由が求められる 6 財産分与を請求する 7 慰謝料を請求する 8 年金分割についての取り決めをする 9 夫婦のどちらかを親権者に決める 10 面会交流の方法を決める 11 養育費の支払いについて合意する |
離婚が決まってからすべきこと | 12 取り決めたことを書面に残す 13 市区町村役場に離婚届を提出する 14 氏(姓・名字)を婚姻前に戻すかどうかを決める 15 子の氏(姓・名字)を変更する |
この点を意識して、これからの説明を読んでいただけたらと思います。
1 財産分与のための資料収集をする
1-1 まずは資料収集から
まず、相手に離婚の意思を伝える前に、夫婦が婚姻期間中に協力して形成してきた財産について資料収集する必要があります。
夫婦が離婚すると、それ以降は別々に生活していくことになる以上、婚姻期間中に協力して形成してきた財産(共有財産)を夫婦でどのように分けるか決める必要があります。
これが財産分与です。
財産の名義は、夫婦の共有財産であるかどうかに関係ありません。
夫婦どちらの名義であっても、婚姻期間中に協力して形成したものであれば財産分与の対象となります。
不動産や預貯金は夫婦のどちらかの名義になっているでしょうが、それでも夫婦が婚姻期間中に協力して形成したものであれば、夫婦の共有財産となります。
1-2 財産隠しの可能性がある
財産は、住宅や自動車など目に見えるものだけではありません。
預貯金、株式などの目に見えないものが意外と大きな金額だったりします。また、タンス貯金として、こっそり現金を持っている場合もあります。
だれでも、離婚後の生活を考えれば、できるだけ自分の取り分を多くしたいと思うでしょう。
離婚について話合いをするにあたり、相手に自分の管理している夫婦の共有財産をすべて明らかにする人ばかりとは限りません。気づかれなければそのまま自分だけのものにしてしまおうと思うものです。
そう思う人は、相手が離婚を望んでいることを知ったら、財産を隠してしまうこともあります。
そこで、相手に離婚の意思を伝える前に、できるだけ資料収集をする必要があります。
相手名義である場合などは、簡単には資料を得ることはできませんが、それでも可能な限りは収集しておくべきでしょう。
2 離婚理由の証拠収集をする
2-1 離婚訴訟では離婚理由を証明しないと離婚できない
相手に離婚の意思を伝える前に、離婚理由を裏付ける客観的な証拠を収集しておく必要があります。
原則として離婚するには相手の同意が必要です。一方の意思だけで勝手に離婚はできないのです。
相手が離婚に同意しない場合、どうしても離婚したければ、離婚訴訟を提起して、裁判所に離婚を認める判決を出してもらうことが必要です。
ところが裁判所は、そう簡単には離婚を認める判決を出しません。
訴訟で離婚できる場合(離婚理由)が、民法に厳格に定められているからです(民法770条1項1号~5号)。
裁判所は、どれかの離婚理由に当てはまらないと、離婚を認める判決を出すことができません。
離婚理由に当てはまることを証明する責任があるのは、離婚訴訟を提起した人です。
離婚理由に当てはまることを証明するには、客観的は証拠を示す必要があります。
2-2 相手に離婚の意思を伝えたら証拠の収集は難しくなる
相手と別居してしまったら、証拠を収集することは困難です。
また、あなたが離婚の意思を伝えたら、相手が離婚をしたくない場合、態度や行動を改めてしまうでしょう。さらには、離婚理由の重要な客観的証拠を証拠隠滅してしまうかもしれません。
そこで、相手に離婚の意思を伝える前に、離婚理由の証拠を収集しておく必要があります。
どのような証拠を集めればよいのかは場合によります。
例えば、離婚理由として典型的なのは、不貞行為(民法770条1項1号)ですが、不貞行為を裏付ける証拠としては、
- 写真
- メールやLINEのやりとり
- ホテルの領収書
といったものがあります。
また、最近はDV(ドメスティック・バイオレンス)も離婚理由となりますが、
- 相手とのやり取りの録音
- 暴力を受けてけがをした場合などの診断書
- 日記
などが、証拠となり得ます。
相手は、あなたの離婚の意思を知ったら、これらの証拠は破棄してしまうし、一時的に行動を改めてしまったりします。
ですので、相手に離婚の意思を伝える前に離婚理由の証拠収集をすることが重要となります。
3 速やかに婚姻費用分担請求をする
3-1 何よりも婚姻費用の確保が優先される
離婚が成立するまでには時間がかかることが多いですから、離婚までの生活費を確保しておくことが不可欠です。
夫婦が共同生活を送るための生活費のことを婚姻費用といいます。
婚姻費用は夫婦の収入などに応じて分担して負担する義務があります(婚姻費用分担義務)。
夫が外でフルタイムで働き、妻が専業主婦かパートタイムの場合、夫は妻よりも収入が多いですから、婚姻費用を多く負担する義務があります。
民法752条(同居、協力及び扶助の義務)
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
民法760条(婚姻費用の分担)
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
この婚姻費用は、夫婦である限りは負担する義務です。ですので、別居したとしても、夫婦のうち収入の多い方は、少ない方に婚姻費用を支払う義務があります(厳密には、子のいる場合には、収入の少ない方が、多い方に支払う必要があることもあります。)。
そして、婚姻費用分担義務は、生活保持義務といわれますから、別居した相手や子どもが自分と同程度の生活ができる金額を支払う必要があります。
それにもかかわらず、別居したとたんに、それまでは支払っていた婚姻費用を支払わなくなったり、少額しか支払わなくなるといったことが多くなります。
婚姻費用を絶たれると別居を継続することはできません。
子の養育費も婚姻費用に含まれますから、子を養うこともできなくなります。夫婦で離婚について話合いをしていても、足元を見られて不利な立場に置かれてしまいます。
ですので、離婚について話合いを始めるにあたり、離婚までの婚姻費用を確保することが不可欠となります。
3-2 夫婦間で合意ができない場合は婚姻費用分担請求調停の申立て
夫婦間で別居後の婚姻費用の分担について合意ができればいいですが、実際のところできない場合が多いです。
その場合、すぐに家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停の申立てをするべきです。
家庭裁判所では、簡易迅速な婚姻費用分担額の算定方式が定められています。実務上、通常は、この算定方式に基づいて、子供の人数・年齢、夫婦の収入額に応じ、簡易迅速に婚姻費用分担額を求められています。
調停はあくまでも夫婦の話合いなので、合意ができない場合もありますが、その場合は審判へと移行します。
審判では裁判所が一方的に婚姻費用分担額を決定します。
婚姻費用については次の記事を読んでください
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4 離婚方法は三つある
離婚方法には三つあることを知っておきましょう。
離婚方法 | 内容 | 根拠法令 |
---|---|---|
①離婚協議 | 夫婦が話し合って、離婚の合意ができたら、市町村役場に離婚届を提出し、受理されることによって離婚が成立するもの(協議離婚) | 民法763条 |
②離婚調停 | 離婚調停を申し立てて、離婚する調停が成立することによって離婚が成立するもの(調停離婚) | 家事事件手続法244条 |
③離婚訴訟 | 離婚訴訟を提起し、離婚する判決が確定することによって離婚が成立するもの(裁判離婚) | 民法770条 |
ただし、いきなり③離婚訴訟を提起することはできません。③離婚訴訟を提起する前に、②離婚調停を申し立てなければなりません。
つまり、②離婚調停を申し立てたが、調停が成立しなかった場合にはじめて、③離婚訴訟を提起することができます。
これを調停前置主義といいます(家事事件手続法257条1項)。
通常、離婚しようとする場合、いきなりは家庭裁判所の手続を利用はせず、まずは夫婦で①離婚協議をして、協議離婚を目指すことになると思います。
実際に、8割を超える離婚は協議離婚です。
離婚協議をしても離婚について合意ができなかったら、家庭裁判所に②離婚調停を申し立てることになります。
したがって、通常、離婚の手続は①離婚協議→②離婚調停→③離婚訴訟の順序で進められます。
離婚方法については次の記事を読んでください。
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5 離婚訴訟では離婚理由が求められる
5-1 離婚理由は厳格に定められている
離婚調停でも離婚の合意ができなかったら、残る手段は離婚訴訟となります。
離婚訴訟では、夫婦本人ではなく、家庭裁判所が離婚するかどうかを決めます。
離婚とは、婚姻と同様、本人同士の意思が大切です。それにもかかわらず、家庭裁判所が離婚するかどうかを決めるのですから、離婚理由は厳格でなければなりません。
そこで、民法では、裁判で離婚できる場合が限定されています(民法770条)。
民法770条(裁判上の離婚)
1 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
① 配偶者に不貞な行為があったとき。
② 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
③ 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
④ 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項?から?までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。
①~⑤の要件のうち、①~④は具体的ですが、⑤は抽象的な内容となっています。
⑤が裁判離婚の一般的な要件を示しており、①~④はその具体例と考えられています。
⑤の文言からも分かりますが、家庭裁判所が離婚を認めるのは、婚姻関係が破綻して、回復の見込みがない場合に限定されています。
①~④の要件についても、文言に当てはまるだけでなく、婚姻関係が破綻して、回復の見込みがない状態であることが求められます。
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かなり厳格な要件ですが、離婚訴訟では、①~④の要件に該当する程度とまでは言えない場合でも、婚姻関係が破綻して、回復の見込みがないと判断される場合には、⑤の一般的条項により離婚が認められる場合があります。
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離婚理由について詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。
5-2 離婚理由を証明する責任があるのは離婚訴訟を提起した人
離婚理由に該当することを証明する責任があるのは、離婚訴訟を提起した人です。
離婚理由に該当することを証明するには、客観的は証拠を示す必要があります。
ですから、いずれは離婚訴訟を提起する可能性がある場合は、相手に離婚の意思を伝える前に、いかなる離婚理由があるかをよく考え、その証拠を収集しておくことが重要となります。
6 財産分与を請求する
財産分与は主に次の二つに分けられます。
分類 | 内容 |
---|---|
清算的財産分与 | 夫婦の共有財産を分けるもの |
扶養的財産分与 | 夫婦の一方が離婚後に経済的に自立できるまでの間の生活費として財産を分けるもの |
6-1 清算的財産分与
これらのうち、メインとなるのは清算的財産分与です。
清算的財産分与の対象となるのは夫婦の共有財産です。夫婦の共有財産とは、婚姻期間中に夫婦が協力して形成した財産です。
夫婦どちらの名義であるかは関係ありません。
例えば、不動産が夫名義であっても、婚姻期間中の収入により購入したものであれば、夫婦が協力して形成した財産ですから、夫婦の共有財産となります。預貯金についても同様です。
夫婦どちらかの名義になっているでしょうが、婚姻期間中に貯めたものであれば、夫婦の共有財産となります。
では、反対にどういったものは夫婦の共有財産にならないのでしょうか。夫婦の共有財産でないものを特有財産といいます(民法762条2項)。
- 夫婦の一方が婚姻前に取得した財産
- 別居後に夫婦の一方が取得した財産
- 夫婦の一方が親からの相続や贈与により取得した財産
これらは夫婦が協力して形成した財産とは言えませんから、夫婦の共有財産とはなりません。
財産分与の対象となる夫婦の共有財産が特定されたら、次に共有財産を夫婦でどのような割合で分けるのかといった話になります。
この点については、現在の家庭裁判所の実務では、夫婦の共有財産は、夫婦が協力して形成したものであるから、財産の形成に対する寄与度は平等であるとして、それぞれ1/2の権利を持つとされています。
つまり、通常は、夫婦の共有財産は、夫婦で均等に分割されることになります。
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現金や預貯金はともかく、不動産などの有形資産を分割することは困難な場合もありますから、その場合は、一方が不動産を取得するかわりに、他方は現金や預貯金を多めに取得するなどの調整がされます。
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6-2 扶養的財産分与
離婚後は夫婦でなくなりますから、必然的に夫婦間の婚姻費用分担義務はなくなります。
そうすると、妻が専業主婦やパート勤務で、主として夫の収入により生活していた夫婦の場合、妻は、離婚を機に経済的な自立を強いられることになります。
しかし、妻は家事や育児のため、専業主婦やパート勤務をしていたのに、離婚後、直ちに経済的に自立することを求めるのはあまりに酷とも考えられます。
そこで、離婚後、夫婦の一方が経済的に自立できるまでの間、他方に対し、生活費を財産分与として請求できる場合があります。
これを扶養的財産分与といいます。
財産分与については次の記事を読んでください。
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7 慰謝料を請求する
離婚に伴って、相手に慰謝料請求をすることができる場合があります。
慰謝料請求というと難しく感じますが、要するに、相手が離婚理由を作った場合、離婚によって精神的苦痛を受けたことに対して損害賠償をしてもらうというものです。
典型的には、相手の不倫(不貞行為)を理由に離婚する場合などです。
これを一般的には離婚慰謝料といいます。
民法709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
では、慰謝料はどれくらいの金額を支払えばいいのかということですが、一般には被害者の精神的苦痛が癒される程度の金額と説明されます。
つまり、精神的苦痛が大きい分慰謝料も大きくなります。
とはいえ、精神的苦痛の大きさは受ける人によって異なります。
そのため、慰謝料算定の客観的な基準があるわけではないのですが、50万円から300万円の範囲のどこかで収まる場合が大半です。
慰謝料は不法行為に基づく損賠賠償ですから、財産分与とは性質を異にするものですが、実務上は、慰謝料を考慮した上で財産分与を決める場合が多いです。
つまり、離婚にあたり、財産分与とは別に、慰謝料の支払いを定めるのではなく、慰謝料分だけ財産分与を多くされる場合があります。
8 年金分割についての取り決めをする
日本の公的年金は、次の2階建てになっています。
階数 | 年金 | 内容 |
---|---|---|
1階 | 国民年金(基礎年金) | 日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が加入する |
2階 | 厚生年金 | 会社や役所に勤務している人が加入する |
国民年金は、20歳以上のすべての国民が加入しますので、夫婦それぞれに支給されます。
しかし、厚生年金は、会社や役所に勤務している人にしか支給されません。夫が会社員で、妻が専業主婦の場合、夫の会社の厚生年金は被保険者である夫にしか支給されません。
そのため、離婚すると厚生年金はすべて夫に支給されることとなり、夫婦間で年金支給額に大きな格差が生じます。
そもそも、婚姻期間中、夫が会社員を続けられたのは、妻が専業主婦として家事を賄っていたからです。それにもかかわらず、離婚したからといって、妻が厚生年金を受給できないのは不公平です。
そこで、厚生年金を夫婦で分ける離婚時年金分割制度があります。
同制度には次のふたつがあります。
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合意分割
夫婦間で厚生年金の取り分について合意ができた場合に、厚生労働大臣等が合意どおりに夫婦間の厚生年金の取り分を決定する制度です。
3号分割
夫婦の一方が厚生年金に加入し、他方がその被扶養者(3号被保険者)であった場合、厚生労働大臣等が、婚姻期間に対応する厚生年金の取り分を当然に1/2にする制度です。
この場合、合意分割のような夫婦間の合意は必要ありませんが、3号分割の対象となるのは、平成20年4月1日以降の部分に限られます。
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一見、合意分割も3号分割も同じに思えますが、3号分割の対象となるのは、
- 夫婦の他方が被扶養者(3号被保険者)であること
- 平成20年4月1日以降の部分に限られること
の場合に限られることに注意が必要です。
年金分割については次の記事を参考にして下さい。
9 夫婦のどちらかを親権者に決める
9-1 婚姻期間中は父母ともに親権者となる
婚姻中の父母は、共同して親権を行使します(民法818条3項)。
つまり、婚姻中は父母ともに親権者となります。
これを共同親権の原則といいます。
民法818条(親権者)
3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。
9-2 離婚すると父母のどちらかが親権者となる
しかし、未成年の子供がいる夫婦が協議離婚する場合、父母の一方を親権者と定めなければなりません。
これを単独親権の原則といいます。
父母が離婚すると、別々に生活することとなり、共同で親権を行使するのは困難であると考えられて単独親権とされているようです。
重要なのは、親権者を定めることが離婚の要件だということです。
つまり、親権者を定めない限り離婚ができません。
親権者を定めることは協議離婚の要件ですから、父母のどちらかを親権者と定めないと離婚届が受理されません。
民法819条1項(離婚又は認知の場合の親権者)
父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
9-3 親権者とは別に監護者を定めることもできる
離婚の際、父母のうち親権者とならなかった一方を監護者と定めることもできます。
監護者とは、子供の身体上の監督保護、つまりは監護者とは子供を引き取って育てる者です。
本来、親権にも子供の身体上の監督保護が含まれますが、財産管理を行う親権者と子供の身体上の監督保護をする監護者を分けることができるのです。
民法766条1項
父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
9-4 夫婦間で合意ができない場合は親権者・監護者指定調停の申立て
離婚協議で、父母のどちらかを親権者・監護者と決定したとしても、その後、子にとって不利益であることを理由として、家庭裁判所に親権者・監護者の変更を申し立てることができます(民法819条6項、766条3項)。
その場合、家庭裁判所は、家庭環境、監護能力、子の意思などが総合的に検討して、父母どちらを親権者・監護者とした方が、子にとって幸せかという観点から決定します。
また、子が15歳以上の場合、家庭裁判所は、親権者、監護者の決定にあたり、子の意見を聞きます(人事訴訟法32条4項、家事事件手続法152条2項、169条)。
ですのて、離婚協議においても、夫婦の一方が強引に親権者・監護者を決めるのではなく、子の意見もよく聞いて合意する必要があります。
親権者については次の記事を参考にして下さい。
[kanren postid=”733″ target=”on”]
10 面会交流の方法を決める
10-1 面会交流とは
離婚すると、通常、子は父母のどちらかと同居することになります。
面会交流とは、親権者とならずに未成年の子と別居している親が、子と直接会ったり、電話で話したり、手紙や電子メールのやり取りをして、交流することをいいます。
民法766条1項は、面会交流について、父又は母と子との面会及びその他の交流と定めていますが、親権者とならなかった親と子が直接会うことが面会(直接交流)、電話で話したり、手紙や電子メールのやり取りをすることがその他の交流(間接交流)といえるでしょう。
10-2 面会交流は子の利益のためにある
面会交流は、面会交流権といういわれ方をします。つまり、親のための権利だというのです。
たとえ離婚しても、未成年の子の親であることには変わりがないのだから、子と面会交流する権利があるという考え方です。
たしかに、そのような考え方はあり得ます。
しかし、民法766条1項には、面会交流については、子の利益を最も優先して考慮しなければならないとあります。
親の都合ではなく、子の利益を考えて、面会交流をするかどうか、するとすればどういった方法にするかを決めないといけないのです。
10-3 夫婦間で合意ができない場合は面会交流調停の申立て
離婚協議で、面会交流について合意ができない場合、面会交流を求める親は、家庭裁判所に対して、調停または審判の申立てをすることができます(民法766条2項)。
面会交流について曖昧なまま離婚してしまい、離婚後、親権者でない親が親権者である親に、子に会いたいと頼んだら拒否されたということも多いです。
この場合も、親権者でない親が、家庭裁判所に対いて、面会交流の調停や審判を申し立てることができます。
家庭裁判所が面会交流について決める場合、民法766条1項に基づいて、子供の利益を最優先して判断しています。
通常、子の利益を害する行為をするおそれがない限り、面会交流は認められています。
面会交流については次の記事を参考にして下さい。
[kanren postid=”816″ target=”on”]
11 養育費の支払いについて合意する
11-1 養育費とは
離婚して子を引き取らなかった親(非監護親)は、子を引き取った親(監護親)に対して、未成年の子どもが生活するために必要な費用を支払う義務があります。
これを養育費といいます。
離婚しても、子が直系血族であることに変わりはありませんから、親は未成年の子を扶養する義務があるのです。
この未成年の子に対する扶養義務は生活保持義務といわれます。
非監護親は、子が自分と同程度の生活ができるように扶養する義務があります。
民法877条(扶養義務者)
1 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
親権者となった親は、子を監護教育する義務を負います。
子を監護教育するには当然お金が必要です。
監護親は非監護親に対して、監護に要する費用として、養育費の分担を請求することができます。
協議離婚において、子の監護に要する費用の分担について協議で定めることとされているのは、非監護親にも、子どもの扶養義務があるからです。
民法820条(監護及び教育の権利義務)
親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。
民法766条(離婚後の子の監護に関する事項の定め等)
1 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。
11-2 夫婦間で合意ができない場合は養育費請求調停の申立て
夫婦間で養育費の支払いの合意ができない場合もあります。養育費の支払いについて合意があったのに、相手が支払わないことも多いです。
養育費の支払いの合意ができない場合、家庭裁判所に養育費請求調停の申立てをすることになります。
家庭裁判所では、簡易迅速な養育費支払額の算定方式が定められています。
実務上、多くのケースでは、この算定方式に基づいて、子の人数・年齢、夫婦の収入額に応じ、簡易迅速に養育費支払額が求められています。
調停はあくまでも夫婦の話合いなので、養育費の支払いについて合意ができない場合もありますが、その場合は審判へと移行します。
審判では裁判所が一方的に養育費支払額を決定します。
養育費について詳しくは、次の記事を参考にして下さい。
[kanren postid=”1422″ target=”on”]
12 取り決めたことを書面に残す
離婚にあたり夫婦で取り決めるべきことは沢山ありますが、取り決めたことはきちんと書面に残して置くことが必要です。
離婚後、相手が取り決めたことを履行しない場合、その責任を追及して、履行を確保する必要があるからです。
離婚調停が成立して、家庭裁判所の調書が作成されると、その内容は裁判所による確定判決と同じ効力があります(家事事件手続法268条1項)。
ですので、仮に相手方が調停内容にしたがって、財産分与や養育費などの金銭の支払いをしない場合、新たに訴訟を提起しなくても、相手方の財産などに対して強制執行の申立てができます(家事事件手続法75条、民事執行法174条1項本文)。
もちろん、離婚訴訟が確定した場合にも、相手方の財産などに対して強制執行の申立てができます。
問題は、家庭裁判所の手続を利用せずに、本人同士の話合いで離婚した場合(協議離婚)でしょう。
この場合も、本人同士で取り決めた内容は、できるだけ具体的に書面(離婚協議書)に残して置くべきです。
その書面そのものに基づいて強制執行の申立てができるわけではありませんが、仮に相手が取り決めた内容を履行しないで、訴訟を提起する場合、重要な証拠となり得るからです。
公証人に公正証書として離婚協議書を作成してもらうと、金銭の支払いに関する取り決めについては、支払いを怠った場合、債務者が直ちに強制執行に服することが記載することによって、強制執行することができるようになりますから(執行証書)、ぜひ検討をお勧めします。(民事執行法22条5号)
13 市区町村役場に離婚届を提出する
13-1 協議離婚の場合は離婚届が受理されないと離婚が成立しない
協議離婚の場合は離婚届を市区町村役場に提出して、受理されると離婚が成立します(民法739条、764条)。
つまり、離婚届が受理されることが離婚の要件となります。
離婚届が受理された日が離婚日になります。
離婚届を提出する市区町村役場によって、離婚届と一緒に提出する書類などが異なる場合がありますから確認が必要です。
離婚届の記載内容に不備があると受理されませんから、記載事項はしっかりと確認しておく必要があります。
離婚届の書式は全国共通です。離婚届を提出する予定の市区町村役場が遠隔地の場合でも、近隣の市区町村役場町村役場などで正式な離婚届の書式を入手することができます。
ホームーページで離婚届をダウンロードできる市区町村役場も多いですから、検索してみるとよいでしょう。
[aside type=”boader”]
- 提出先:届出人の本籍地又は所在地の市区町村役場
- 届出人:離婚しようとする夫婦(実際に離婚届を提出するのは、夫婦どちらか、郵送、第三者に頼むこともできる場合が多い)
- 添付書類:戸籍謄本(全部事項証明書)(本籍地に提出する場合は不要)
- 未成年の子がいる場合、夫婦のどちらが親権者となるか離婚届に記載が必要
- 協議離婚の場合、成年の証人2名の離婚届への署名押印が必要
- 離婚届の提出者の本人確認書類(運転免許証、パスポート等)が必要
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13-2 調停離婚、裁判離婚の場合も届出は必要
離婚調停で離婚について合意した場合、調停成立とともに離婚が成立します。
また、離婚訴訟で離婚を認める判決が出た場合、判決が確定すると離婚が成立します。
したがって、市区町村役場に離婚届を提出することは離婚の要件ではありませんが、離婚調停が成立の日から10日以内に、市区町村役場に離婚届の提出が必要です(戸籍法63条1項、77条1項)。
14 氏(姓・名字)を婚姻前に戻すかどうかを決める
離婚すると婚姻前の氏(姓・名字)に戻るのが原則ですが、離婚後も氏を変えないでそのまま使い続けることもできます。
14-1 離婚すると婚姻前の氏(姓・名字)に戻るのが原則
離婚すると、婚姻によって氏(姓・名字)を変えた方の配偶者は、婚姻前の氏に戻るのが原則です(民法767条1項)。
これを一般に復氏といいます。
離婚すると、婚姻によって氏を変えた方の配偶者は、夫婦の戸籍からは除籍されて、婚姻前の戸籍に戻ることになります。
婚姻前の戸籍に戻らないで、新しい戸籍を作ることもできます(戸籍法19条1項)。
離婚届の「新しい戸籍をつくる」欄にチェックをします。
民法767条1項(離婚による復氏等)
婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。
14-2 離婚後3ヶ月以内なら氏(姓・名字)をそのままにできる
離婚したら、婚姻前の氏に戻るのが原則ですが、離婚の日から3ヶ月以内であれば、市区町村の戸籍担当に届け出ることによって、婚姻中の氏(姓・名字)を引き続き使うことができます。
離婚した相手方の許可は不要です。
これを婚氏続称といいます。
手続きは簡単で、「離婚の際に称していた氏を称する届」という書類を市区町村の戸籍担当に提出します(戸籍法77条の2)。
離婚届の提出時、「新しい戸籍をつくる」欄にチェックしていなかった場合、結婚前の戸籍に一時的に戻っている状態ですので、「離婚の際に称していた氏を称する届」の提出にあわせて、新しい戸籍を作る必要がある場合があります。
結婚前の戸籍のままでは、婚姻中の氏にすることができないからです。
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15 子の氏(姓・名字)を変更する
夫婦が離婚して、子の親権者がどちらかに決まれば、子の氏(姓・名字)も、親権者となる一方の親の氏になりそうですが、当然にそうなるわけではありません。
例えば、ある夫婦が離婚したとします。子の親権者は母だとします。
婚姻時に母が氏を変更していた場合、離婚により、母は、夫婦の戸籍からは除籍されて、婚姻前の戸籍に戻るか、新しい戸籍を作ることもできます(戸籍法19条1項)。
これと併せ、子の戸籍も親権者である母の戸籍に移って、子の氏も婚姻前の母の氏に変わることとなりそうですが、自動的にそうなるわけではありません。
家庭裁判所に「子の氏の変更許可の申立て」をする必要があります(民法791条1項)。
民法791条1項(子の氏の変更)
子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。
家庭裁判所の許可が得られたら、市区町村の戸籍担当に届出をして、母の戸籍に入ることができます。
届出先は、子の本籍地か、届出人の住所地です。
母の戸籍に入るということは、母と同じ氏になることですから、これによって、子は母の氏を称することができるようになります(戸籍法98条)。
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